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夕刻の響曲 -1-
あと1週間で夏休みだ。期末テストを終え、あとは夏休みを待つのみとなった学生達にとっては、1日1日がとてつもなく長く感じられた。もちろんそれは今部室の机でぐったりしながら本を読む翔も同じであった。
「あと火曜、水曜、木曜、金曜…」
完全に脱力した様子で窓の外を眺める。詩音が言っていた学校の壁の塗装工事の件は本当だったようで、足場とシートで学校が覆われて外の景色は全く見えないのだが。
「翔のやつ、いつにも増してダルそうな顔してやがるな」
そう詩音に話しかけるのは海斗。とはいえ、彼も夏休みが待ち遠しくて仕方ない様子だ。
「でも、夏休みになったら、一旦みんな離れちゃいますからねぇ。ちょっと寂しいかも…」
どうやら、詩音は夏休みが楽しみではないかなり珍しいタイプの人間らしい。
「え、それじゃあ、夏休みみんなで遊んだら良いじゃん」
「おい、まさか俺も巻き込むつもりじゃ無いだろうな…」
「もちろんじゃん。海とか山とか…」
「却下だ。長期休暇でわざわざ体力使うとか何考えてやがる」
いつも通り対立する翔と千野。そして、それを見ながら笑う海斗と詩音。いつも通りの光景の中、勢い良く部室の扉が開かれた。




