56ページ 入門志願。
女の子をモノ(タダ券)で釣って遊びまわってる調子のいいヤツ!
だったはずなんだが土下座するほど真剣な顔をするとは思わなかった。
勇者さんの所へ相談に行ったんだけど突然土下座して「お願いします!」
と叫んだきり動かなくなってしまった。
仕方ないのでオレも頭を下げてお願いした。
コイツとそう親しかったわけじゃあないけど真剣なヤツってなんだか
ほっとけないよなあ。
苦笑いした勇者さんは笑顔を引っ込めてから
「アレはスポーツじゃあないんだよ。ソコは分かってるかい?」と言った。
いつもの軽めの声が腹の底に響いてくるような気がした。
チャラ男は
「分かってるつもりです」と答えた。
「特訓させられた時、ココで殺されるはずはないと分かっていたのに
殺されるような恐怖を感じてました」
女の子たち四人は一緒に召喚されたから自分は彼女たちを
守らなければいけなかったはずなのにそれに気づいたのは
全部済んだあとでした」
「スポーツの武道は父親が好きだったせいでいろいろ齧らされましたが
どれもモノにはなりませんでした。
アレは恐怖が付いてはいましたがなにかが掴めるような気がしました」
「アレで多少なりとも自分の心を強化できれば今度は女の子たちを守ることを
忘れたりしないだろうと思います。
たとえソレが人殺しのための技術でもココでは必要ない技術でも
ぜひとも学ばせてほしいです」
正直いってオレのレベルは高くなったと思う。
上には上がいるのは分かってる。
目の前にも一人いるし。
でもレベルが高くなってもオレは人を殺そうと思わないしまだ殺していない。
傷付けることはしたからもしかしたら即死でなく死んだ人はいるかもしれないけど
それはまだ見ていない。
魔獣は人じゃあない。
殺すことに抵抗が無かったとは言わないがアレは人じゃない。
同じようにこちらを殺そうとして来ている相手でもやっぱり人と魔獣は違う。
オレ達の世界は、少なくともコノ国は安全なところだ。
人殺しの技術を学ぶ必要なんかない。
スポーツで充分な国だ。
それでも、たとえ無駄でもチャラ男は学びたいという。
オレは学びたいとは思わなかった。
向こうの都合で叩き込まれたと言うのが正しい。
強くなっていく自分に酔わなかったとは言わないけど。
コイツの後押しをしたくなったのは多分コイツが自分で選んだからだろう。
ほんの少し自分が嫉妬してるのが分かった。
くっそう! チャラ男のくせに!
勇者さんはオレも一緒に稽古するならと言う条件で
面倒をみてくれることになった。
そういえば直接稽古をつけてもらったことはまだ無かった。
気付いたとたん背中がゾクリとした。
あー、チャラ男くんがチャラ男じゃあ無くなってますね。
でも、チャラ男くんって呼んじゃうもんねぇ。
彼は入門を許されたので「勇者の弟子」ですね。
ともかく頑張ってもらいますか。
二人ともね。




