43ページ エリクサー。
今日でこの島も三日目だ。
漂流者のお兄さんは勇者さんの薬をちょっとずつ飲まされて
部位の復活を徐々にしてもらっている。
なんだかほんの一滴でずいぶんな効果があるみたいなんですけど。
怪しい薬だなあと思ったら〔エリクサー〕だそうだ。
「まあ、伝説の薬だからコレが本物かどうかは分からないんだけどね。
オレには結構効いたから偽物だとしても本物に近い代物かもしれないね」
あー、オレ達の世界だったらきっと薬事法とかなんかで
とっ捕まりそうだなあ。
でも、ココはオレ達の世界じゃあないから誰も咎めないよね。
鑑定してみたけどなんだか文字化けみたいになって薬の正体は分からなかった。
う~ん、怪しいね。
魔王さまと魔王さんが興味を持ったらしく二人で試しながら
あぁだこぅだと議論している。
元は同じなはずだけど人格が違うせいかちゃんと議論が成立してるのが
なんだか可笑しい。
結局、魔王さまは勇者さんからレシピと現物をせしめて
嬉しそうに帰っていった。
こんどは魔王城にも寄るように誘ってくれた。
ところでドコであんな薬を手に入れたんですか?
「この前召喚された世界で、ミイラみたいなおばあさんに
アゲルって言われたから有り難くもらってきたんだよ。
でも、魔力を結構込めないといけないから魔王さまとかオレとか奥さんとか
あとは神様かなあ、精製できるのって。
レシピがあっても普通の人じゃあ無理だねえ」
聞いてた漂流者のお兄さんはあわててた。
そりゃあそうだ。
欠損部位の復活なんて高位の神官さんの仕事でお布施も山のように
必要なんだって言ってたんだ。
ソレを請求すらされないうえに伝説級の薬まで飲ませてもらってたんだから。
人の体は不思議で薬だと信じると偽物の薬でも本物と同じ効果が
出ちゃうことが確かにあるそうだ。
勇者さんの薬が偽物でも効果が出てる以上本物じゃあないとは断言できない。
効いちゃってるから本物認定しちゃってもイイと思うけどね。
お兄さんは唯一持ってた魔石をお礼にと差し出したけど
勇者さんは受け取らなかった。
彼の最後の財産なのは分かってたからね。
それでもと言うお兄さんに困ってる勇者さん。
なので「出世払いでどうですか?」と提案した。
奥さんが神殿の孤児院のお手伝いを時々するのでもし商売で儲けが出たら
少しでいいので子供たちのために寄付してもらうということで。
お兄さんは
「寄付できるように頑張ります!」と言ってくれた。
やる気になったようで助けた甲斐もあったね。
部位の復活もできたので魔石に魔術で魔物除けの処理をして
お兄さんが船で行くはずだった獣人国まで転移魔法で送っていった。
獣人国だと魔石が高く売れるんだそうだ。
獣人さんたちの耳にさわってみたかったけど
それは失礼なことだそうなので眺めるだけで諦めた。
鎧武者さんの所と脳筋騎士の所で二日。
魔王さまと島で三日。
お休みはあと二日だね。
どうやら勇者さん達は旧都というところに行きたいらしい。
オマケは大人しく付いて行きましょう。
もう危なくなんかないだろうしね。
遭難者のお兄さんは大商人にはなれなかった。
でも行く先々で寄付をしていったので再訪したときには
微妙な信用が積みあがっていた。
商売は信用が第一だもんね。
嵐で遭難して死にかけたのに勇者に助けてもらったという
ラッキーにあやかりたいという客までいた。
ソコソコとはいえ成功した商人になれたようだ。
ふ~ん、でもそうやって安心してる時が
アブナイってこと忘れてないかい? マモルくん。
まあ、保護者付きだしこの保護者は最強だから
心配ないとは思うんだけどね。
油断大敵! お気をつけてぇ~。




