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そこにいたのはごく普通の「人間」だった。
歳は師匠と同じくらい。
魔力が多少多めに感じるくらいでごく普通に見えた。
「はて? 君たちはココの勇者じゃあないよね。
アレラはオーガとサイクロプスと戦ってるのをさっき水鏡で確認したんだが。」
ココの神さまから救援要請が来たので送還されてきました。
アナタは人間ですよね。
なんで魔族の国だけじゃあなくて人の国まで襲ってるんですか?
「へえ・・神さまでも救援要請なんか出すんだ。
前世に居た世界じゃあ神さまはそんなことはしなかったが。
なので勇者を召喚したんだがね。
前世で魔族に恨みがあってね。
ココの連中にナニカされたわけじゃあないんだがちょっと研究と実験の成果を
試してみたんだよ。
あー・・人の国のほうはソノ気はなかったんだが
勇者のパーティがあそこまで弱いとは思わなかったんだ。
適当にやっつけてくれると期待してたんだがどうも私の勇者のイメージは
前世で会った勇者なんだねぇ。」
彼等だってもうそれなりに強くなりましたよ。
今頃はオーガとサイクロプスを片付けているでしょう。
アレは禁忌のオーガなんですね。
人や魔族をオーガに造りかえてなんの得があるんです?
それとも禁忌だってことを知らなかったんですか?
「禁忌だとは知らなかったね。
私は人や魔族と魔物の違いを解明しようと思っただけだよ。」
そうだとしてもアチコチの世界で禁忌のオーガを造らせたのはなぜなんです?
知り合いに言わせると
「できるけどやらない。面倒ごとが増えるだけだし趣味が悪い。」
だそうですが?
「見ただけでアレができると断言するとはタダ者じゃあなさそうだねぇ。
どうせロクなヤツじゃあないだろうがね。
バラまきたかったんじゃあないと言ったら信じるかね?
研究書類が勝手にコピーされて自動でアチコチの世界に送付されてたんだよ。
でも結果が面白かったんで結局放置したんだ。
あ! どこのだったか雹と雷で殲滅してたのは君達かい?
アレはなかなか面白かったよ。
まさかあんな対処法があるとは思わなかったからね。」
自動で書類を送付・・・
あ! 召喚陣の書類を送ったりしたのもあなたなんですか!?
なんだってあんなことをしたんです?
送られた先でひと騒動おきてましたよ!
「あー・・召喚陣の書類が勝手に送られてたんでオーガの研究書類が
勝手に送られてたのにも気が付いたんだ。
世界ごとに届く時間がズレてるんだよ。
まあ、この通り魔力が君たち程でないのは分かるだろう?
だから自動で魔力を集めて作動する陣や魔道具を造ったんだ。
連動するとは思わなかったけどね。」
それで起こった結果の責任を取る気はありますか?
まあ、イヤでも神さまの尋問くらいは受けてもらいますけど。
「私は神も悪魔も人も魔族もその他の人種もキライでね。
責任なんて言葉は前世に置いて来たから取るつもりは無いよ。
君はなかなか面白いけど付き合う気は無いね。
でもココまでたどり着いたんだからココは君たちにあげよう。
何でも好きなモノを持って行きたまえ。」
あなたの身柄が一番欲しいモノなんですけど?
「残念だったね。
ココでしゃべってる私は私であって私ではない。
言うなればカケラで造ったコピーだよ。
まあ、見本になった魔王と違って時間制限があるんだがね。」
そういうと彼は倒れた。そしてバサリと崩れた。
そうして窓からの風が彼の全てを吹き散らしてしまった。
もう好き勝手やってますねえ。
人間のくせに魔王さんの前世並かもしれません。
なんでこんなになってしまったのか・・
ちゃんと普通の人間だったはずなのに・・
まあ、普通の基準がどうなのかは時代、国、地域、などなどで
違ってきます。
お隣とですら違ったりもします。
違うコトをお互いで楽しめるならいいんですけどね。
対立のモトだったりしますからねぇ・・




