182ページ 管理人。
バイトなあの人から説明された。
彼等に生前の記憶はもう無いと。
ただオレの魂呼ばいの影響が強く残ってしまったので
おいそれと成仏という訳にもいかなかったそうだ。
なので影響が消えるまでバイトなあの人の元で
助手のようなことをすることになったと言う。
仕事は体育館の管理。
彼等はココから出ることはできない。
出たら消滅する可能性があるそうだ。
体育館は神殿と同じような空間なので二人はココで保護してるのと
同じになるらしい。
もう、オレの両親であって両親ではなくなってしまった。
同じ顔、同じ魂なのに別人になっている。
なので普通に挨拶してお願いすることにした。
あなた方は両親に似ています。
弟と妹はまだ幼いので親が死んだことが分かりません。
時々でいいですから遊んでやってもらえませんか?
小さくて大人になったら忘れてしまうでしょうけど両親と一緒の時間があったと
感じさせてやりたいんです。
なんだか二人は微妙な表情だったけど引き受けてくれた。
時々体育館に連れてくることにしよう。
チャラ男はオレの両親が体育館に居ることに驚いていたけど
それでオレを責めたりはしなかった。
あの川の向こうのおかあさんにはチャラ男はもう会えないのに
記憶が無くなっていてもオレの両親はココにいる。
自分でも不公平な気がした。
「なんでも平等で公平なことなんて少ないよ。
オレにはまだ父さんが居るし君達だっていてくれる。
君のご両親はあそこに居ても現世の存在じゃあない。
しかも君のことも双子たちのことも忘れてる。
ほら、平等でも公平でもないだろ。
君のほうが幸運なのかもしれないしオレのほうが幸運なのかもしれない。
受け取り方しだいだよ。
ご両親があそこに居てくれるのはラッキーなことだとオレは思うね。」
そう言ってオレの肩をポンとたたいた。
コイツはイタイ台詞が上手いヤツだ。
ホントに・・・
ダチどもも驚いてはいたが彼等の生前のことや記憶のことは
できたら触れないでほしいと頼んだので守ってくれている。
他の体育館利用者たちも。
彼等は体育館の新しい管理人。
そういうことになった。
双子はどう感じているかは分からない。
ふたりを親だと分かっているのかどうかも。
だから体育館に連れて行くのはオレの自己満足だ。
それでも双子と彼らが一緒に居るのを見ていたい。
壊れた夢がもう戻ってこないと分かってはいるけれど。
形あるものは必ず壊れる。
それは当然のこと。
形の無いものが壊れないかといえばやっぱり壊れてしまうのです。
それでも永続・永遠を求めてしまうのです。
壊れるものだからこそ大事に扱わなければいけないのです。
壊れるものだということを忘れたとき・・
マモルくんは大事にしていましたがそれでも壊れてしまいました。
両親を川のほとりに縫いとめてしまうほどの思いでも
彼らのためには能力を封印しなければなりませんでした。
自分が愛されたように双子にも両親の愛を与えたいと
彼が願っても誰も責められないでしょう。
それが形だけのマガイモノであったとしても・・




