181ページ 勇気。
魔王討伐のパーティを組んでいた仲間だったと言う。
魔王が居なくなって用済みになった勇者は脳筋でバトルジャンキーなので
何処でも敬遠されたんだね。
なので職業を書き換えて戦士にして顔を知ってる人が
多くなかったのをいいことに闘技場で闘士をしてたと。
召喚主は魔術師でいささかの借金持ちだったそうだ。
魔術の研究費が嵩んでたらしい。
妹さんは勇者にお金を用立ててもらって代わりに奴隷になることで
兄の借金を完済。
まあ、それは口実で彼の側に居たかっただけ。
勇者も別に嫌いじゃあ無かった・・と言うかスキだそうだ。
なので彼女の言う通りに・・・
帰せ、帰らない、帰せない・・それじゃあ・・・
勇者に勝てるヤツを探して来たら帰してやる、ということに。
だからって30人も呼ぶなよ!!
何人か知らなかったけど全部で30人だそうだ。
ところでちゃんと帰せるんでしょうね?
・・・・・・・・・・。
まあ、そんなことだろうとは思ってたけど。
首輪付きのくせにそんな要求をするなって?
こんなものはもう簡単に外せるんですよぉ。
召喚者全員のを外しますからね。
文句は受け付けませんよ。
アナタは妹さんを思ってのことでしょうがオレにだって
妹は居るんです。弟だっています。
なのに親はもう居ないんです。
オレが帰ってやらないとアイツラは一緒に居ることすら
できなくなるかもしれない。
まだ最初の誕生日すら来てないのに!
結局召喚者たちは一発づつ召喚主をなぐってたそうだ。
オレ? バトルで限界まで魔力と体力を使っちゃってたからね。
ひっくり返っちゃってたんだよ。
バトルとは別の興奮もしちゃったしね。
まあ、気が付いた時にはもう召喚主なんかもうどーでもイイ気分だったよ。
隠蔽も隠密も解けちゃったチビがオレにくっついて離れずにいてくれた。
どうやらオレを守ってるつもりだったみたいだ。
うん・・ありがと・・チビ。
お前が一緒にいてくれて嬉しいよ。
脳筋勇者に神殿があるのか聞いた。
彼の案内で召喚者たちを引き連れてお参りをした。
神さまは白い部屋に招待してくれた。
ココの神さまは翼をお持ちな方だった。
でも天使じゃあないそうだ。有翼人なんだね。
「召喚には気付いてたんだが修復を優先しないといけなかったんだよ。
済まなかったね。
世界を壊す訳には絶対にいかないから・・
なにしろ修復したとたん次を召喚してしまうもんだから
君たちをフォローしてるヒマも無かったんだよ。
こういうのは今まで滅多に無かったんで慣れてなくてね。
召喚主にはそれなりの罰をやっとくから許してほしい。
それぞれの世界の神には連絡済みだよ。
向こうに召喚してもらう形になるけどね。
ココに残りたいなら認めるけどどうするね?
君たちの希望に沿う形にしてあげよう。」
さすがに奴隷扱いされた世界に残りたいと言う人は居なかった。
皆オレにお礼を言って帰って行ったけどオレはオレのために戦ったんだからねぇ。
お礼を言われるのがなんだか恥ずかしいような気がしたよ。
一緒にお参りしてた脳筋勇者が謝って来た。
「オレがちゃんと彼女と結婚でもしてればアイツも
あそこまでムキになって召喚なんかしなかった思う。
まあ、アイツが呼んだヤツラは対戦相手としては面白い連中だったんで
つい楽しんじまったんだがな。
世界に穴を開けてるなんて思わなかったんだよ。
済まなかった。」
それで結婚する気になったんですか?。
「こんな脳筋でバトルジャンキーなオレでもイイって言ってくれる
貴重なヤツだからな。
奴隷なら逃げずにそばに居てくれると思ってつけこんでたとこもあったんだ。
オレのほうが逃げてたのかもな。振られるかもって・・
まあ、勇者のくせに勇気のないことだったな。」
オレの仲間の中で一番勇気があるのは自分でビビリだって思ってるヤツですよ。
皆いつでも100%の勇気が出せる訳でも無いですし。
まあ頑張ってください。
魔王より手強いかもしれませんけどね。
「ハハハ・・そうだな、手強いよ彼女は。」
脳筋でバトルジャンキーでも気のいい人らしい。
笑ってお別れできるというのはいいもんだね。
帰還は体育館。
そこには居ないはずの人たちがいた。
オヤジと・・オフクロが・・




