180ページ バトルジャンキー。
召喚主はオレには期待していないようだった。
まあ、そうだよね。どう見てもガキだし。
連勝を続けていてもアノ最強闘士は他の連中とは別格だ。
普通に考えてもかすり傷でも付けられればラッキーだ。
対峙して質問してみた。
オレが勝てたらあの召喚主の望み通りお姉さんを奴隷から解放するのかどうか。
「いいぜ。アイツの望みは解放だが彼女がアイツの元に
帰るかどうかまでは保証できないけどな。
彼女が奴隷でオレの側にいるんでアイツは面白いヤツラを呼んできてくれる。
退屈しないで済むんだよ。
お前もオレの退屈を紛らわせてくれるとイイんだがな。」
職業を確認してみたけど戦士だった。
魔法もオッケーなこの闘技場では不利に思えるけど中には
魔法を切り裂けるくらいの戦士も居る。
多分彼もそうだろう。
楽しそうに戦う人は久しぶりに見た気がした。
体育館の連中も結構楽しそうだけどアレはあくまでも摸擬戦に過ぎない。
殺すつもりで、殺されても構わないギリギリを楽しむ人。
バトルジャンキーそのもの!
オレがガキでも手加減する気は一切ないのはすぐわかった。
魔王さんの本体の魔王様が居る世界の脳筋騎士よりもっと脳筋なんだと理解した。
いかんせんレベルの違いは歴然としている。
受け流して避けてスキをついてと繰り返してはみても今回は魔法具は使えない。
杖は良かったんだけどね。
体力も違うから長期戦は不利だ。
なので最大威力の火魔法で不意打ちして得物で追撃をかけた。
オレが魔法を使うとは思ってなかったんだろう。
まともに喰らってくれた。でも追撃は避けられた。
ステータスを確認して驚いた!
職業が戦士じゃあ無くなっていた。書き換えてたらしい。
あきれたことに彼は〔勇者〕だった。
彼はますます嬉しそうな顔でこちらを向いて言う。
「久しぶりに楽しいぜ。魔法を温存してやがったんだな。
オレでなけりゃあアレでケリが付いたと思うぜ。
だがお前のそのレベルじゃあもうそんなには魔法は打てないだろう。
いいぜ! 打って来いよ。受けて立ってやる!! 」
あー、そうですか。
じゃあ、最大威力で行かせてもらいます。
死んでも文句は言わないでくださいね。
「ガキのくせに魔王より生意気ってどーいうコトだよ。
四の五の言わずにさっさと打って来い!。」
モチロン打たせてもらいましたよ、雷魔法を。
ちゃんと積乱雲を集めて置いたからねぇ。
集めるのには時間がかかるけど維持しとくのは
さほどの魔力はいらないんだよね。
こういうのも慣れがあるようでかなり狙ったところに
落とせるようになってま~す。
勇者はもちろん雷魔法に耐性がある。
並の勇者の電撃位なら彼だと平気だっただろう。
でもね・・自然の力は偉大だからね。
オレはただその力を誘導しただけなんですよぉ。
少ない魔力でもできるんだよね。
彼は平気ではなかった。
でも、倒れたけれどヨロケながらも立ち上がってみせた。
あー・・流石です。
でも勝たないとイケナイんですよ。
オマケの雹をプレゼントしちゃいましたぁ。
ええ・・埋まるほどね。
まあ、電撃で意識はほとんど飛んでたようにも見えたけどね。
観客にも気絶しちゃった人がでちゃいましたぁ。
魔法の防御結界はちゃんと有ったんだけど自然な雷を誘導したんで
魔力とは判定されなかったらしいでーす。
・・・ごめんなさーい。
でもまあ、余波なんで・・死んでないからイイか。
さて決着はついたけど困ったことに・・・
お姉さんが叫んでます。
「彼の側に居られるように奴隷になったのよ!
たとえ解放されたって兄さんの所なんかには絶対帰らないんだから!! 」
あー、兄妹ゲンカのせいでオレって召喚されたんだ・・
お姉さんが未来の妹に見えてしまうマモルくんなのでした。
言うなればゲームの二周目なマモルくん。
見掛けのレベルは低くても経験値には出てない経験が積み重なってます。
バトルジャンキーなココの勇者にはソレが分からなかったんですねぇ。
まあ、分かる訳ないんだけど。
ともかくコレで帰れますよね・・よね。
帰してあげてよ・・召喚主さん。




