178ページ 闘技場。
勇者なのでなんでもできるけどオレの得意なのは魔法だ。
剣も槍も弓もダチ勇者どもほどの才能は無いと思う。
レベル1に戻って連中に稽古を付けてもらってそう感じる。
召喚主はオレが子供でも闘技場に出す気だ。
闘技場の最強戦士に勝てれば彼の望みは叶うのだそうだ。
「今はガキでもいずれ大人になる。
今すぐでなくてもアイツを倒せ!
オレの望みはソレだけだ。」
召喚は何度もしてるらしい。
ソレってコワイことなんですけど。
「世界がどうなろうと知ったことか!
他にもいるオレの手駒の捨て石でもいい。
オレの役に立て! そうすれば戻してやる。」
あー・・多分戻せないよな。
でも首輪も外せないから逃げ出せない。
ともかく闘技場で戦うしかないらしい。
魔法は使ってもいいのだけれどまだ威力は低い。
魔力量も足りない。
なので魔力量を伸ばすことにした。
気絶する寸前まで魔力を使う。
風魔法が目立たなくてイイね。
魔力切れになると気を失ってしまうけれどそうなると実は少しヤバイ。
下手をするとあの世行だ。
気絶の手前で止めて体力を魔力に変換する。
ゆっくりやるのがポイントだ。
魔力の最大値が多少上がるのでそれで今度は回復魔法を使って体力を戻す。
一日にできる回数はレベル次第だけど速成で総魔力量を上げられる。
まあ、裏技だね。
あまりやり過ぎると体とのバランスが崩れるから要注意なんだけど。
ともかくコレも隠蔽しておこう。
闘技場の闘士の担当者はバカにしたような気の毒なモノを見るような眼で
オレを見た。
召喚主が変な闘士を連れてくるのは初めてじゃあないらしい。
最初の相手はゴブリンだった。
人間相手じゃあないのか・・
まあ、瞬殺。
ココはそういう場所だ。
同情も感傷も必要ない。
初日はどうやらただの予選みたいなものだったらしい。
午前と午後に二回づつ試合した。
ザコモンスターだったけど。
飯はまずいが量はある。
アイテムボックスの食料を隠れて食べた。
やっぱり味がね・・・
三日ほどしたら相手が人間になった。
人は殺しにくいね。
なので戦闘不能にする。気絶させただけだけど。
子供はオレ一人。
高校生くらいが二・三人。
あとは大人だけど人族だけじゃあない。
色とりどりって感じだね。
首輪付きは多くない。
ほとんどが自由な闘士らしい。
娯楽の少ない世界らしくて観客はいつも満員だ。
一週間もしたら皆に名が通っていた。
まあ、子供が負け無しで戦ってたら目立って当然だね。
魔法は極力使っていない。
ココのルールだと使っていいんだけど目立ち過ぎは禁物だ。
一週間で対戦相手のレベルが上がった。
でもまだこの程度なら楽勝でイケル。
召喚主は意外だったようだ。
あれから別の闘士をまた召喚したらしい。
いったい何人召喚してるんだか・・
十日目でまた対戦相手のレベルが上がった。
ダチどもに感謝したね。
オレのレベルだとそろそろキツイけどダチ連中と戦ってたおかげで
魔法無しでも対応できている。
オレ自身のレベルも上がって来た。
そろそろ首輪を外せるだろう。
ココの世界のことはまだあまり分からないけど逃げても良い頃かもしれない。
あの召喚主はなんとかしないと召喚の被害者がどんどん増えていく気がする。
逃げるなら落とし前を付けてからだな。
本性を隠してるのにそろそろ飽きて来たマモルくんなのでした。
ちなみに今のマモルくんには迷子マーカーが付いていません。
レベル1に戻すときに外してまだ付け直してなかったんです。
さてバイトなあの方は見つけてくれますかね?




