176ページ リセット。
オヤジが死んだ。オフクロも。
出張で乗るはずの飛行機には乗れなかった。
空港の手前で飛行機のほうが車に突っ込んで来たので。
オフクロは珍しく送っていったのだ。
空港に新しく出店したと言うレストランへ行ってみたいと
食事を兼ねて見送りに出た。
「育児ストレスをなんとかしてやろう。」と
オヤジは嬉しそうにそう言ってたんだ。
葬儀も終わってからバイトなあの人から呼び出された。
オヤジは結果的に飛行機を救ったのだそうだ。
勇者ではあってもレベルの低いオヤジにはそんなことはこの世界では
できないはずだけど・・
死に際にオフクロを守ろうと風魔法の結界を展開したそうだ。
生命力も魔力に変換して・・
でも二人とも助からなかった。
「飛行機は彼の風の結界がクッションになったんだ。
結局ケガ人だけで済んだからね。
言いにくいんだが問題が起こってるんだ。
君でないと解決できない。」
孤児になっちゃったオレに何ができるんです?
親たちがいたから勇者をやってても平気でしたがこんな精神状態で
なにかできるなんて思えませんけど。
「君の親御さんたちが川を渡れなくなってるんだよ。」
は!? 川? ・・・川ってまさかあの・・
「そうだ。あの川だよ。」
なんでそんなことに・・
「原因は君だ。君が〔魂呼ばい〕を掛けている。
極めて強力な・・ね。」
そ・・そんなことは・・してるつもりはないんですけど。
「うん・・無意識にやっちゃってるんだよ。
そうして無意識なせいで意識的な物より厄介で強力なんだ。
君は勇者としてかなりのレベルになっている。
魂呼ばいの能力はそれに引きずられて上がったんだと思う。」
・・・一体どうすればいいんですか?
子供に「親に帰って来てほしいと思うな! 」ってのは無理な話ですよ。
今だって・・たった今だってココにオヤジとオフクロを
戻してほしいと思ってるんです。
ソレが禁忌だって・・分かってても・・
バイトなあの人は幾つか選択肢を示した。
そしてオレは選択したんだ。
レベル1に戻ることを!
死亡率100%。まあ、生まれたら全員いずれは死にます。
当然です。
でもソレは生物の欲求とは対極にありますからね。
生物は有り続けたい、生き続けたいという根源的な欲求を持っています。
なので生まれるのがファンタジーな不死の夢ですね。
世界を支配できる独裁者でも死は逃れられません。
奢れる者も久しからず。
独裁者の最後の望みは不老不死だそうですが。
マモルくんがレベル1に戻ることで両親をこの世から解放できる
ということなんでしょう。
・・・ツライね、マモルくん・・。




