155ページ 勇者初級コース 1歩目。
まずは面談から。
健康状態と運動経験のチェック。
そして性格と勇者の自覚の程度。
まあ、やる気はあるようだ。
領主の息子だという自覚も。
でも、体力は無い、戦闘経験どころか訓練すら経験が無い。
木の枝すら振り回したことが無いという。
あー・・病弱で生きてることさえ大変だったと。
オレも病弱だったから分かる気がする。
病院がなじみの場所というのは誰でもツライことだ。
体質改善はイケメン神官の薬を段階的に投与だね。
訓練は騎士の訓練をまず見学させてみた。
でも木剣すら重いようだ。
アイテムボックスの中から竹刀を出して振らせてみる。
ヨロけてるよ・・(汗。)
要らない紙を丸めてボールにした。
風魔法で彼の前に浮かべる。
ゆっくり振り下ろしながら当てさせる。
集中させるのが目的なのでべつに威力は必要じゃあない。
腕力とか型とかの前にまず集中力を鍛えさせた。
目の前のボールにすら当たらないから程度はヒドイ。
でも上下左右、斜めと続けさせる。
こまめな回復魔法で疲れ知らずながらなかなか集中を続けるというのは難しい。
本人は気づいてないけど魔力で竹刀が徐々に重くなって行っている。
半日でなんとか木剣でもできるようにした。
午後は魔法を教えてみる。
魔力は普通の人よりは多いが使ったことは無いと言う。
まあ、初級コースだね。
手をつないで二人で輪を作り微量な魔力を流してお互いの間を循環させた。
オンオフを繰り返して魔力が循環している状態を理解させた。
そして自分で循環させられるように誘導。
自分だけで手を組んで腕の輪を魔力を循環させる。
両手で透明なボールを持っているような感じに
構えさせて循環している魔力をソコに溜めるイメージ。
そしてろうそくの火のイメージをさせる。
3度目でポンと火が付いたのを見て周りで様子を見ていた騎士たちと
お抱え魔法使いたちはビックリ!
最短で3日。1ヶ月かかった人もいたと言ってます。
初日でたった3回で成功なんて聞いたことも無いと。
あー・・才能もあるけど集中力を上げたからね。
イメージと集中が大事なんだよ、魔法って。
彼は勇者だからほとんどの属性の魔法が使える。
でも気を付けないと器用貧乏の言葉どうりになってしまう可能性もある。
能力が特化しているヤツに敵わなかったりもする。
そのあたりも自覚させておかないといけない。
なんでもできてどれも最強という都合のいいことには
なかなか到達できないものなんだ。
領主の坊ちゃん勇者がソレを理解するにはまだまだかかるだろう。
周囲の人たちにもそういうことを説明しておくことにした。
何しろオレ達は帰ってしまうのだから。
修行を先々まで見守るのは周囲の彼等ということだ。
自分の及ばない所を仲間に補ってもらうことを素直に受け入れられるようなら
チームプレイもスムーズにいくようになるだろう。
でもまだ、自分のことで精いっぱいだからな。
先々のことは周囲に留意させるしかない。
4日続けてなんとか騎士たちの訓練に少しは混ぜられそうになった。
初級の魔法もほぼマスターできたと思う。
たかだか4日ではこんなものだろう。
彼はまだ10歳だ。
これから時間をかけて成長すればいいだけの事だ。
坊ちゃん勇者はなんだか顔が引き締まってきたようだ。
礼を言われたが教えたのはほんの一歩だけのようなものだね。
ココには騎士も戦士も居るしもちろん魔法使い・魔術師も神官もいる。
周りがみんな先生だと思って頑張れ!と励ました。
誰に教わろうと結局やるのは本人だ。
自分が勇者なんだということを忘れなければなんとかなると思う。
クラスメイトたちは三々五々と坊ちゃん勇者の訓練を覗きに来ていた。
帰れる5日目になって半分居ないのに気が付いた。
残ってる連中も口をつぐんでいる。
なんだろう?
でも連中には迷子マーカーが付いてるんだよね。
・・・街の外なんかで何をしてるんだ?
僧侶な先生とチャラ男まで・・
危ないことなんかすんなよー!
アチコチで勇者特訓コースを教えてるので大分手慣れた感じですね。
でも坊ちゃん勇者はスタートラインより遥かに後ろから始めたようなもんです。
4日でやっとスタートラインに立ったと言ってもイイかも。
うん・・ガンバレ!
それにしてもクラスメイトは何をやってんでしょうねぇ。
先生やチャラ男くんまで付いて行くなんて何事なんですかね?




