153ページ 特訓依頼。
領主の使者は青ざめていた。
待ちくたびれて寝入ってしまい使命を果たせなかったので。
どうやらディナーのご招待だったようだ。
まあ、目的は別だろうけど。
起こさなかったのは時間が遅かったこともあるけど多分に面倒ごとの匂いが
したからだね。
この使者さんに恨みがある訳もないんだよ。
でもオレ達が出かけてることが分かった時点で報告とかしなかったのかね?
あー・・一応報告はしてあるのね。
でもオレ達が戻るまで待機の命令が来たのか。
寝ちゃったのは誤魔化せないねぇ。
オレ達に起こす義務なんかないんだし。
騎士さん達の仕事はオレ達の監視で使者の面倒を見ることじゃあない。
しかもあの後また起こしたけど起きなかったって言ってるし。
一行にどうしたいか聞いてみた。
使者さんと話をしたヤツラもいて概ね同情的だった。
まあ、ドジ踏んで青ざめてたら同情もしたくなるか。
なので神殿への参拝は午後からということにして皆には街の見物と
買い物をしててもらうことにした。
お小遣いまで渡したよ。
皆ココのお金は持ってないからね。
オレが金を持ってるって分かったもんだからもう
遠慮なんて言葉はどこかに置き忘れたみたいだった。
ココの物価だと銀貨1枚がほぼ1万円くらいだね。
銅貨100枚で銀貨1枚なので銅貨は100円見当だ。
どっちも500円玉くらいの大きさなんだけど。
旅行の小遣いは5000円までだったのにコイツらは
銀貨を2枚づつふんだくっていった。
ホント遠慮って言葉を思い出してほしい・・
一応班行動。警護の兵士さんたちを案内係に。
担任と僧侶な先生に領主のところに付いて来てもらう。
バスの運転手さんはなぜか妙にクラスメートに馴染んでて一緒に出掛けて行った。
開き直ったのかもしれない。
体育館仲間に領主のところに行きたいか聞いてみたけどイケメンと元魔王さま以外は
街を見てみたいそうだ。
ということでドジを踏んだ使者と一緒に領主の館に行く。
着いたとたんに使者さんは怒られてたけどね。
領主はきれいなレディだった。
先代の未亡人だそうだ。戦争のせいで未亡人に・・
呼びつけたことを詫びたあと依頼を口にされた。
「ようこそ、勇者さま方。
神殿の要望を叶えられたということでしたね。
私どもの要望もぜひとも叶えて頂きたいのです。
ココにも勇者がいましたが彼はこの国を守るために戦死しました。
結果として平和にはなりましたがまだ世界は不安定です。
彼の代わりの勇者はまだ子供です。
戦うどころか訓練すらしたことのない私の息子です。
速成でもなんでも彼に勇者をしてもらうしかありません。
異世界の勇者の召喚も考えなかったとは言いませんが神様から止めるようにと
お告げが下されました。
迷い込んだとはいえあなた方が勇者だと神殿の方たちから聞き及んでいます。
どうかなにがしかの指導を息子にして頂きたいのです。」
あー・・困ったね。
勇者の特訓を要請されるなんて思わなかったよ。
引き受けても利益とかある訳じゃあないけど断るのも気が引けるなぁ。
まあ、ドラゴンと戦えって言われるよりはマシなのかも
と内心で思ってしまうマモル君なのでした。
う~ん、いますぐにでも帰りたいところなのにねぇ。
お気の毒な未亡人の頼みとなると断りにくいよなぁ。
それにしてもクラスメイト連中は大人しくできますかね?
修学旅行っていうと妙なことをしたがるヤツラが必ずいるんだよね。
ましてココは異世界です。
「旅の恥はかき捨て」なんて言葉があるんだけど。
まあ、引率は先生方でマモル君じゃあないだけどね。




