109ページ 恋バナ。
バイトなあの人は女の子神官ちゃんに「異言語理解」のスキルを
付けてくれたそうだ。
勇者召喚をされると術式にそれが組み込まれていることがよくあってオレ達は
そっちのケースだね。
でも自力で来ちゃった神官ちゃんは持ってなかった。
スキルは他には自力で獲得する場合と神さまとか高位の存在から
付けてもらう場合があるらしい。
まあ、留学生ということになったので言葉が分かるというのは大事だね。
聖女な奥さんは妹ができたような気分らしくアチコチ連れ歩いては
山のように彼女のための買い物をしている。
オレはなぜかつき合わされて荷物持ちだ。
アイテムボックスがあるので簡単と言えば簡単。
でも、女性の買い物の恐ろしさは予想以上だった。
あちこち回った挙句最初の店の戻るとかどう見ても差異の分からない商品を
こっちに区別させようなんてのはまだ序の口だった。
トドメはどっちが似合う? の一言だね。
テキトーに答えるとあとのタタリが恐ろしい……
女性というのはホントは異世界から来た別な生物なんじゃあないかと
本気で疑っちゃったね。
そして困った存在がもう一人。
そう高校生勇者だ。
勇者のくせにストーカーみたいに付いてくる。
隠蔽と隠密を使ってるけど聖女さんも気づいてるからな!
とうとう堪え切れなくなって捕まえた。
偶然会ったフリをさせて皆でお茶をした。
神官ちゃんも嬉しそうだ。
一年後に二人がどうするか、どうしたいのかは分からない。
相手の気持ちを確かめてすらいないようだしね。
五・六歳の年の差なんて大人ならなんてことないんだけど高校生と小学生だと
大問題だよねえ。
このままゆっくりのんびりお付合いができればそれは理想的なことなんだろうけど
彼女は異世界人だ。
一年したら元の世界に帰らなければいけない。
元の世界での神官としての使命があるからこそココへの留学が認められたのだから
勝手にココに居つくという訳にもいかないだろうし。
高校生勇者が彼女と一緒に向こうに行くことが認めてもらえるかどうかも
分からない。
オッサン勇者のように長いことあちらの世界で勇者をしてた訳でもないのだし。
他人の恋バナでモヤモヤした気分になっても仕方ないなあと思っていたけれど
神官ちゃんから泣きつかれてしまった。
せっかく追いかけて来たのに彼が消えてしまったと。
勇者弟も半泣きで探してほしいと縋って来た。
十五人で召喚されたときの魔法使いと高校生勇者がどうやら
召喚されてしまったらしい。
彼女と弟の目の前で。
ノンキに恋バナの行方を心配してる場合じゃあなかった。
どうも彼や師匠な勇者さんの周りは召喚確率が高いみたいですねぇ。
高いパワーや才能のある人の周りってその影響で
ゆがんだりひずんだりってことがあるような気がします。
影響されて思わぬ方向に人生が変わっちゃうことって結構あるみたいです。
いい方向だけならいいんですけどアサッテの方向に行っちゃう人って
いそうですよねえ。
高校生勇者と魔法使いくんはどうなんですかね。
マモル君頑張って見つけてやってねぇ。




