謎の魔道書(『フォレスさんとセイナさん』より)
ある日、魔族で外交官のフォレスさん(夫)が、空間術師で保育士のセイナさん(妻)に頼みました。
フォレス「頼む! どうしても欲しい書物があるんだ。セイナの空間術で探してくれ!」
セイナ「……(夕食の準備をしていたが、物凄く嫌そう)」
フォレスさんは本を集めるのが趣味で、世界中の本を収集していました。
フォレス「この通りだ、頼む!(土下座しそうなくらいの勢い)」
セイナ「(溜息)……わかりました。フォルさんがそこまで言うのなら」
フォレス「ありがとう、セイナ。愛してるぞ」
セイナ「(赤面)……それで、フォルさんはどこへ、何の書物を買いに行きたいんですか?」
フォレス「詳しくは知らないが、ネクロ●ミコンという書物がこの世界のどこかにあるらしい。何でも強力な魔道書だとか」
セイナ「ネク●ノミコン? ……何か嫌な予感がします。あまり手を出してはいけないような、そんな危険な書物のような気がするのですが?」
※ネクロノ●コン……ハワード・フィリップ・ラブクラフトの書いたクトゥルフ神話に出てくる書物の名前。ファンタジーやホラー映画などに禁断の魔道書としてよく登場するが、実際のところはどんなことが書かれているのかよくわからない。
フォレス「気のせいじゃないのか? なあに、もしも危険だった時は、セイナの空間術でその書物を次元の狭間に捨てて来ればいいじゃないか」
セイナ「人の力を便利なゴミ箱みたいに言わないで下さい! まったくフォルさんはいつも言い出したら聞かないんだから……(ぶつぶつ)わかりました、その本を探してくればいいんですね?」
フォレス「すまないな、セイナ。恩に着る」
セイナ「もう、どうなっても知らないんですからね? 責任はちゃんと自分で取ってくださいね?」
フォレス「わかっているさ。セイナは心配性だな」
セイナ「……(あなたが楽観的すぎるだけですよ……)」
こうして魔族の外交官、フォレスさんが手に入れたネ●ロノミコンは、平和だった街に大きな災厄を呼び込んだとか、呼び込まなかったとか。燃えるゴミの日に出されたとか、次元の狭間に捨てられたとか、その後の所在はわかっていない。
おしまい