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小話集  作者: 深江 碧
6/18

宴会にて(アグラダとイヴン、『空の座』より)

※この小話は、以前バトンで答えた、

 ◇お酒を飲んだ時

アグラダ(ラスティエ教の教義で酒を飲んでいいかどうか、イヴン枢機卿と延々と論議する。結局はイヴンに酒のグラスを取り上げられる)

を元に構成されています。


 ラスティエ教国の教皇アグラダ(外見年齢は二十七歳、実年齢は千歳)はお付きの人と共に宴会の席に呼ばれた。

 アグラダ「お酒を口にするのは何百年ぶりだろうか。普段は周囲の人の目もあって飲めないからなあ」

 そう言って酒のグラスに口をつけようとすると、枢機卿のイヴンがやって来る。

 イヴン「ちょっと待って下さい、教皇様。あなたは天空神ラスティエに仕える身であり、すべてのラスティエ教徒の模範となる方です。そんな方がラスティエ教の教義に反して、酒を口にしてもよろしいのでしょうか?」

アグラダ「ラスティエ教の正式な教義では、酒を飲んではいけないとは定めてはいないのだよ、イヴン。それはリコッサの聖典に書かれている教義ではないのかい? 確かにリコッサの聖典には、酒は堕落の飲み物だと書かれ、禁止してはいるのだけどね。それも解釈の仕方によっては、酒を飲み過ぎなければ良い、とも受け取れるのだよ?」

イヴン「しかし聖ウルリウスの教義では、酒を飲むことを全面的に禁止しています。ピッポスティの聖典でも、酒は人にとって有害で口にしてはならないと書いてありますが?」

アグラダ「聖ウルリウスはただ単に酒が嫌いだっただけだよ。だから酒を飲むことを教義で禁止したんだよ。ヒッポスティはどうだったかな? あぁ、思い出した。ヒッポスティは、酒を飲んでからんで、好きな女の子に振られたから、聖典にそう書き残しているだけだよ」

イヴン「そうなんですか?」

アグラダ「そうなんだよ。だからラスティエ教の教義では酒を飲んでいいんだよ」

イヴン「しかしラスティエ教の信心深い者達は、我々聖職者も含め、酒を絶っていますが?」

アグラダ「そんな固く考えることは無いんだよ、イヴン。この宴会の席では、逆に酒を飲まないことの方が失礼だと私は考えるが?」

 アグラダは酒のグラスを口につける。そこへすかさずイヴンがグラスをひったくる。

イヴン「宴会であれ、どこであれ。現在のラスティエ教の教義では、広くそう信じられているのですから、その指導者である教皇様には人々の目がある場所では、その模範となっていただきたいと、私は考えますが?」

 イヴンは微笑を浮かべながらも、その目は笑っていない。

アグラダ「で、でも、この場は宴会なんだし、少しくらい飲んだって良いんじゃないかな? 私も久しぶりにお酒飲みたいし…」

イヴン「酒は教皇様のお体に良くない影響を与えかねません。教皇様はお年もお年ですし、お体のためにも酒を慎んだ方が良いのではないでしょうか?」

アグラダ「でも、少しくらいなら」

イヴン「駄目です」

アグラダ「ちょっと飲むくらい」

イヴン「駄目です」

アグラダ「……(不満顔)」

イヴン「何ですか。何か言いたいことがあるのでしたら、どうぞ仰ってください」

アグラダ「イヴンのけち、頭でっかち(ぼそり)」

イヴン「!」

 イヴンは手に持っていた酒のグラスを握りつぶす。グラスは砕け、酒が辺りに飛び散る。

イヴン「よく聞こえませんでした。もう一度仰ってください」

アグラダ「(震えながら)いや、いい。じゃ、じゃあ、烏龍茶を頼もうかな?」

イヴン「では給仕の者を呼びましょう。あ、烏龍茶を二つと、雑巾とほうきとちりとりを頼む」

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