再び、初めまして。
皆様、初めまして。
初めましてじゃない人もいる。
はい。ではお久しぶりです。
僕の名前は橘琥珀と申します。
僕は大変残念ではございますが、人間ではございません。
二歳の黒猫です。
これから始まるのは、猫が勝手気ままに書く徒然草でございます。
僕の一日は、若夫婦を叩き起こすことから始まります。
とりあえず、襖の前で一言。
起きてください。朝です。朝だよ。職員会議だよ。今日は。
・・・寝てます。まだ起きてきません。
次のステップに入りましょうか。
襖を開けて、二人の部屋に僕は潜り込みました。
まずは・・・。
女性の方の枕元に僕は立ち、彼女の頬を撫でながら、呼びました。
京ちゃん、起きてください。朝です。朝ですよぉ。
「ん・・・おはよ。琥珀。何時もありがとうねぇ」
起き上がって僕の頭を撫でてくれたのは、京ちゃん。
旧姓・橘京子。入籍したので、三沢京子。
33歳の女性。黒髪美人。
結婚してからは何故か、「学園の◯蜜」と言われるようになってしまった可愛らしい女性です。
◯はお察しくださいな。
おはようです。ぎゅうしてください。
起き上がった京ちゃんが、僕を抱きしめてくれた。
大好きです。さて。
京ちゃんの隣でぐっすりと良い夢を見ているであろう男に、僕は視線を向けた。
其の視線に気づいた京ちゃんがクスリと笑っていった。
「じゃあ、早速だけど十分後に知さん、叩き起こしてね。私はその間に朝の支度を始めるから。」
ハイです。
10分、経過しました。
この男は、まだ寝ております。
では、早速ですが叩き起こさせて頂きましょう。
僕は部屋の中を見渡した。
丁度良い所に、机があります。
其処に僕は乗ると、彼の腹に向けて飛び降りた。
「うぎゃああああああ・・・琥珀・・・内臓破裂で俺死ぬよ・・・」
知兄ちゃん、大丈夫。君の腹筋飾りじゃなければ。
腹の上に飛び降りた僕を抱き上げ、文句を言うのは三沢知之。
30歳。男。
ハンサムで学園内外にももてるのに、Mr.残念。
残念すぎて、一部の生徒の伝承だと、「Mr.残念の写真を、携帯の待受画面にしておくと、不幸がそちらに向かう」という伝説まで持つ男。
色々ありましたが、京ちゃんとどうにか結婚いたしました。
「おはよ。琥珀」
僕は一旦知兄ちゃんから、離れると姿を変えた。
黒猫から黒髪黒ブラウス黒スカートを纏った人間の姿へと。
「おはよう。早く起きないアタクシが・・・」
「すぐ起きます。可及的速やかに支度して・・・」
知兄ちゃんは飛び起きると、着替えを始めた。
この姿・・・黒髪で黒のブラウスと黒のスカート姿の人間のアタクシも橘琥珀。
存在自体は黒猫と同一なのよ。
特定の人間の前だけ、猫から人間へと変化することが可能なの。
ファンタジーというツッコミは無しね。
この姿を知っているのは4人だけなのだから。
それは、この後紹介させてもらうわ。