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seek after magic ~魔法を探求するもの~  作者: 池田 時雨
第一章
5/6

4話

(キーンコンカンコーン)

朝の始業のチャイムの音が校内に鳴り響く。

「はい、みなさんおはようございます。日直さん、挨拶おねが~い。」

滝沢先生が相変わらず平和的な声で1-Aの生徒に声をかけた。

「起立、礼!」

「「お願いします!」」

「着席!」

この学校でも一般的な挨拶はされているようだった。

どうも心のこもっていない挨拶は不毛な時間であると思えてならない。


とりあえず廊下で待っててね~、と滝沢先生に言われたが、

この微妙な時間がアレンを憂鬱にさせた。

教室のなかで滝沢先生の声が聞こえてくる。

「はい、皆さんに大切なお知らせがあります。」

先生が続ける。

「今日、編入生がこのクラスの仲間になります~。」

「「おぉ~~!!」」一同がどよめいた。

「先生、女の子ですか~!?」

なにやらチャラそうな声が聞こえてきた。

「うれしいことに、北山くんの大好きな~...」

「お、おんなのこですかっ!?」と、北山?と呼ばれた生徒が食いつく。

「男の子です!!」

「のぁあああ」北山?の悲痛な叫びが聞こえる。

「つーか、男好きじゃねぇーし!!」

「「(一同の笑い)」」

「じゃ、九条くん入ってきて。」

アレンは呼ばれたので、教室に入っていった。

(ガラガラ)

横引き戸を開けると、好奇心がそのまま描かれているような多くの顔が見えた。

普通恥ずかしいと思うところだろうが、アレンは別に何の感情も抱かなかった。


(ヒソヒソ)

(意外とかっこよくない?)(だよね~。告っちゃえば?)(やめてよ~)

(おい、なんか目が青いぜ?)(外国人か?)etc


アレンは意外と女子から高評価であることに驚いた。

ロンドンにいたときは、日本人であるがゆえに恋愛対象から外さることが多く、

自分の容姿が優れているなどとは考えもしなかった。


「九条くん、自己紹介。」

滝沢先生にうながされ、アレンは自己紹介をした。

「九条アレンです。前はロンドンの魔法研究高校に通っていました。」

「これから宜しくおねがいします。」

(パチパチパチ)

まばらに拍手が聞こえてきた。

「はいはい!!質問、質問!!」

「なに~、北山くん?九条くん困らせないでよ~?」

あいかわらずほのぼのしている滝沢先生。

「なんで、目が青いんですか?もしかして外国人?」

「北山くんっ!!失礼ですよ~。」

「いや、いいんです。」

アレンは答えた。

「父型の祖父がイギリス人なんです。髪は黒ですけど、目が遺伝して..。」

「へぇ~!!んじゃ、もう一個質問!!」と、北山。

こんな様子をみるとこいつがクラスのお調子者キャラらしい。

ロンドンでも、どこでも、こういうやつは集団で1人はいるから不思議だ。

「女子のみなさんが気になっていると思うんで聞きますが...。」

北山が続けようとした。


(ガシャン!!)


後ろの席から机を蹴る音がした。

すると先ほどまでの空気が一変して、シーンとなってしまった。

「いい加減こんなくだらないこと終わらせようや?」

先ほど騒音がしたほうから、ドスの利いた低い声が聞こえてくる。

「い、岩坂くん!!机は蹴っちゃだめです~!!」

滝沢先生が注意するが、先生の声音では効果はなさそうだ。

「すみません、先生。」岩坂が反省していなさそうに謝るが、続けて怒鳴る。

「おい、北山ぁ?いつまで喋ってんだ?しつけ~ぞ!!」

お調子者の北山に向かって不機嫌そうに岩坂が睨む。

「あーあぁ。これだから不良ぶってるやつは...。」

独り言のように、しかし岩坂に聞こえるようにつぶやいた。

「何だと?聞こえねーな、タコッ!!」と、岩坂。

すると突然北山が吠えた。

「自分が雰囲気壊してんのもわかんねぇ~のか!!あぁん!?」

先ほどのお調子者の雰囲気から一変して、ピリッとした雰囲気にかわる。

騒めいていたクラスもいつの間にか静寂に包まれていた。

アレンはこの2人のやり取りをみて、大体クラスの関係図がわかった。

「なんだと、てめぇ!!」(ガタンッ!!)

岩坂が椅子から思いっきり立ち上がり椅子が大きな音を立てた。

どうやらこの2人には確執があるようだった。


この岩坂という男はなかなかに身体が大きそうだ。

アレンが身長176cmほどあるが、それより大きい。

おそらく183cmぐらいだろうか。

大きな身体は筋肉で覆われていて、

名前に入ってるように岩のような体つきである。


一方北山のほうはアレンと同じくらいの身長だろうか。

ツンツンの髪型が非常に目立っている。

細身で筋肉はあんまりなさそうで岩坂と喧嘩しても負けそうだが

その切れ長の目には、絶対に揺るがない意志が潜んでいた。


滝沢先生はどうしていいかわからずオドオドしているし、

一触即発になるとクラスのほとんどが予測していた....。


「あぁーえっと...彼女はいません。」

アレンがピンと張り詰めた静寂の中で唐突にこう叫んだ。


「.......。」

クラスの間に長い静寂が続く。


「「ぷっ!!あはははははは!!!」」

関を切ったかのように、ピリッとした様子から

また一変してお調子者の雰囲気にもどった。

「わかったよ、岩坂。聞きたいことは聞けたし、もう黙るよ。」

冷静に戻った北山が先に折れたようだ。

ふんっ、と鼻を鳴らし、気に食わないようだったが岩坂も座った。

ほっとした様子の滝沢先生が話を戻す。

「じゃ、自己紹介は終わりね?え~と、九条くんは一番窓側の奥の席に座って!」

わかりました、と答えるアレン。

自分の席に向かって歩いていた。


席につこうとしたとき

「よう、よろしくな!」

北山が後ろを振り返りながら声をかけてきた。

どうやら前の席がこいつらしい。

「あ、あの...改めてよろしくです。」

右隣から聞いたことのある可愛らしい大人しめの声が聞こえてきた。

萩野 雪乃だった。

そういえば同じクラスだったな...。


なにやら波乱の予感がして、頭が痛くなってきたアレンだった...。






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