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seek after magic ~魔法を探求するもの~  作者: 池田 時雨
第一章
2/6

1話

2075年9月1日午前7時

『ぴぴぴぴぴぴっ』

デジタル時計のうるさい電子音が頭のなかに鳴り響いた。

「ぐっ・・うっ・・あぁ・・。」

朝の眠さで呻きつつベットのサイドテーブルに充電しておいてあった小型の液晶端末に必死に手を伸ばしアラームを止めた。

もっと寝てたいという欲求に襲われたが、今日はそういうわけにはいかないのだ。

禁欲的に身体を起こし、伸びてみる。ボキボキッという骨の快音が響いた。

カーテンを思いっきりシャッと開けて、目を閉じて深呼吸してみる。

蝉のやかましい声がこの日本の東京の喧騒を表わしているようだった。



朝食にトーストと目玉焼き。何もかわらない日常。

昨日と違うことといえば、今日夏休みの明けの登校初日であること。

そして俺にとっては『国立魔法研究高等学校』の編入初日である。



新しく支給された制服を着て、

鞄に小型の液晶端末と薄型PCをいれて学校に行く支度をした。

そして制服のポケットの中に学生証が入っていることを確認する。




『国立魔法研究高等学校』

生徒名;九条 アレン

生年月日;1959年11月3日

住所;東京都〇△区◇×町3丁目桜ヶ丘ヒルズ7-02

上記のものを国立魔法研究高等学校の生徒であることを証明する。

学校長;牧瀬 一葉



同日7時45分

俺は『国立魔法研究高等学校行き』のバスに乗り込んだ。

このバス停から学校までは15分程度なので始業チャイムが鳴る8時30分によりかなり早く着くためか、バスに乗っている高校の生徒はあまりいなかった。

「発車します。」というアナウンスとともに静かにバスが動き始める。

アレンは耳につけたイヤホンを流れる音楽聞きながら、もう見飽きるほど見てきた自分の右手の甲にある「あざ」のようなものをぼんやりと眺めて、

魔法について考え始めた。



『国立魔法研究高等学校』(National Magic Reserch Highschool)

通称、MR高校。

そしてここに通っている生徒のことを世間では『MR生』と呼んでいる。

MR高校は2070年に開校されたばかりの新しい学校である。

その名前の通り、この学校では〈生徒〉が魔法の研究を行っている。

2064年に日本政府は魔法の存在を認め、

魔法に対する対策として『魔法対策庁』を設置。

そして2070年にMR高校開校。

と簡単に学校のパンフレットに小さく書かれていた。



魔法、つまりは科学で証明できないもの。

突如あらわれた魔法使いに世界は驚愕した。

どのように世界初の魔法使いが政府に接触し、魔法の存在を認知させたのは未だにわからないが2063年、日本政府は魔法の存在を認知した。

そして世界中の科学者たちを集め、魔法についての調査を開始した。

世界初の魔法使いの身体を隅々まで研究した。

が、彼らは魔法使いと普通の人間との違いを見つけることはできかった。

唯一発見できたのは彼女の手の甲に刺青のような、魔法を使うと淡い光を発する刻印だけだった。


その刻印を彼女たちは『エンブレム』と名付けた。


「次は終点、国立魔法研究高校前、終点、国立魔法研究高校前でございます。」


いつの間にか高校の近くまで来ていたらしい。

バスが高校の目の前で停止した。

アレンは座席を立ち、バスの前にある機械に学生証をかざして、

ピピッという電子音が鳴ったのを聞くとバスを降りた。

この学生証は内臓されたICによってクレジットカードのようになっている。

この学生証を使えば基本的に公共の交通機関は無料で利用できる。

正確にいえばこの学生証を使用して支払ったものは国が負担している。

(もちろん限度額はあるが)

これは『国立魔法研究学校』の粋な計らいである。

MR高校は世界に6つしかない魔法研究学校の一つである。

また6つの中でも1,2を争うほどの研究成績をあげており、

国も大変気前がよい。

また生徒が発見した魔法理論が将来国に大きな利益があることを理解している。

これぐらいの金は安すぎるほどの先行投資というわけだ。



アレンはバスを降りて校門の前に立った。モダンな新しい校舎、研究施設を眺めていた。微かなに漂う魔法の気配を感じつつ、アレンは一歩足を踏み出した。



世界初の魔法使いが世界中にしられるようになったころ、

魔法使いの存在が1人ではないことがわかってきた。

世界で何百人、何千人もの人間が突然魔法に目覚め始めた。

しかし、当時魔法といっても単純なことしかできなかった。

例を挙げるならば、石を宙に浮かしたり、動いているものを止めたり、といった物理法則に少しばかり干渉できるといった程度だった。


しかし、最初の魔法使い、彼女だけは別だった。

彼女は魔法を使えるようになってから魔法について独自に研究をしていた。

もともと12歳にしてIQ170を記録するような天才だった彼女は魔法の研究に没頭する。

2年間の研究を経て、彼女は魔法の属性を発見した。いや、正確には開発した。

彼女は自分の魔法が物理法則に干渉していることを発見した。

そして彼女はこう考えた。

物理法則内で起こり得ることであれば、魔法は変幻自在である、と。


2066年8月11日、世界中の研究者と合同で魔法に関する最大の発見をした。

魔法の根源、『マナ』の発見である。

『マナ』、それは物理法則に直接干渉する〈物質〉である、と彼女たちは考察した。つまりは物質という物質、分子、原子、電子、中性子、陽子、などに作用させる力があると。

彼女が『マナ』の実験で行ったのは物質の〈停止〉である。

すべての原子は熱運動という超微細な運動をしている。

原子の温度が低いと熱運動は鈍くなり、絶対零度に達すると完全に停止する。

彼女はこれを逆手にとらえた。

熱運動を『マナ』の力で完全に停止させれば、温度を下げることになるはずだと。

彼女の理論は正解だった。ここで世界で初めて『魔法属性』が生まれた。

停滞による『氷属性』である。


彼女が様々な魔法理論を体制させていくなかで、世界で数千人ほどの魔法使いが確認された。

しかし、その数千人には不思議な共通点があった。

それは手の甲に『エンブレム』があること。そして2050年1月1日以降に産まれたことである。つまり、世界で確認されたほとんどが当時10代前半だった。


同じころ世界の政治家たちは魔法を恐れ対策を練っていた。

もし魔法が悪用されれば大変な事態になる。

物理法則に縛られているとはいえ、魔法についてわからないことが多すぎる。

よってまず第一に発案されたのは研究所である。

しかし、研究するのは魔法。魔法は科学では証明できない。

そして魔法を使える科学者は当然ながらいるわけがなかった。

『マナ』がどこで生成されていて、物質にどのようにして作用しているのか、

ということですら、わかっていなかった。


第二に考えられたのは確認された魔法使いの管理である。

この2つの面から世界の政治家たちは頭を悩ませた。


そこで最初の魔法使いである彼女が発案したのが、『魔法研究高校』である。

魔法を使える生徒が魔法を自ら研究し、国が管理できる国立高校の設置である。

世界の首脳陣はこれを即座に採用。

そして、世界に6つの国立魔法学校が誕生した。

アメリカの『ワシントン魔法研究学校』、

イギリスの『ロンドン魔法研究学校』、

ロシアの『モスクワ魔法研究学校』、

オーストラリアの『キャンベラ魔法研究学校』、

インド『ニューデリー魔法研究学校』、

そして日本の『国立魔法研究学校』である。


そして魔法の第一人者であり、様々な魔法理論を打ち立ててきた、その人こそ『国立魔法研究学校』初代校長、牧瀬一葉 である。



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