はぐれ猿は熱帯雨林の夢を見るか 11年
2020年7/8〜7/11タブレット端末にて執筆し朝脱稿 朝10時投稿
なるべく端折りましたが6000字超えました オムニバスは難しい。
【 レアメタル=パラジウムを身体に溜め込む巨大ウナギを巡るドタバタコメディ マンション建設予定地で見付かった調べりゃ調べる程得体の知れない人骨の塔が撒き散らす想定外な災厄 特殊な趣味持つ女性除き後味最悪かも知れない本当にタイトル詐欺なエロ話 下心満載でハニートラップに引っ掛かったり麻薬に手を出す目的で迂闊に海外旅行なんか行くものじゃ無いとなる理不尽劇 4つの物語を収録した "諸星大二郎" や "星野之宣" の悪ふざけマンガを彷彿させるSF=少し不思議で凄〜く理不尽な短編集。 発想は面白いけど映像化は多分不可能かな? 】
★個人的に気に入ったのは史跡保存口実にまともな発掘すらやらせて貰えない日本の異常な考古学研究と税務署だけがお得な遺産相続のゴタゴタ 果ては撒き散らされる疫病がエゲツない "豚と人骨" この短編集自体モノ食いながら読めませんのでご注意を(-_-)
日本 SFホラー(或いはホラ)小説
篠田節子 著
文藝春秋社 刊
2014年 同社文庫化
更新ペース早めると中々時事ネタも思い付かなくなりますがウチの新入り居候=三毛猫が前足使ったドア開けと後ろ足だけ使った匍匐前進&後退をマスターしました。 暑いからフローリングの床を歩きたくないとスライドドアや網戸こじ開け ゆっくり伏せ或いは仰向けバンザイ状態で顔面から突入したりいきなりバックするから夜中ベッドの下から飛び出るとビックリします。
都市伝説の殺人鬼みたいにその内斧でも担ぎ出すかな?
今回紹介するのは登場人物が其れなりの年齢でいまひとつ癖が無いと言う致命的な欠点から 意外にもサスペンス以外の映像化作品には恵まれてない篠田節子の短編集。 大量生産目的で改良された巨大蚕が人間襲い出す "絹の変容" を筆頭に生物災害をテーマにした物語や残念ながら未読だけど新興宗教扱った物語とかエッセイなんかも書いてるそうで 映画栄えする作品も多いのだけど今の日本映画業界じゃ物理的に不可能と言えるかも 劇画調のコミカライズならかなり受けそうな気がするけど そのジャンルの題材アニメ化って割とハードル高いからCG技術のコストダウンに望みを繋げるしか無さそうです。
何時もなら物語の感想書いてあらすじに進む所ですが タイトルが海外SFや日本映画のパロディだったりと多種多様で関連性は全く無い短編作品ばかりですので其々小分けしてコメント挟みながら物語を整理してみます。 例によって独自解釈ですので読む人により印象が分かれる作品です あくまでも参照程度と割り切り出来りゃ文庫版にでも手を伸ばして頂ければ幸いです。
■深海のEEL 2009年2月 オール讀物掲載
タイトル元ネタ:シグル・ヨハンソン
タカアシガニ漁シーズンに突入した駿河湾 だが喜び勇んで400mの深海から蟹籠を引き上げた漁師達を愕然とさせたのは体長2m超え胴回り40cmを上回る籠満載のウナギ達 しかもその目と身体は金属を思わせるメタリックな輝きを放っておりとても美味そうには見えない せめて60cm以下なら貴重な国産鰻として売れるのに 失意の漁師達にポンと札束差し出し10トントラック数台分の其れを現金購入したのは回転寿司からファミレスまで手広くこなす外食産業 金太郎水産の買い付け部隊 辛うじて60cm程度の其れは貴重な国産鰻として適正価格で高級日本料理店や割烹に引き取られ思わぬ大惨事を引き起こす。
リストラにより五洋マテリアルから系列組織とは名ばかりな 大日本レアメタル研究所 に左遷され視察にやって来た官僚接待に駆り出された主人公 斎原 は偶々その鰻を食べた事が切っ掛けで官僚共々緊急入院。 食中毒の原因が鰻に含まれていたパラジウムによる症状だと判明したのは3日間程トイレで地獄の苦しみを味わっての末だった 天然鉱石1トンから取れるパラジウムは精々2〜3g だがこの "パラジウムウナギ" なら1匹辺りから重量辺り⇒1%ものレアメタルが取れるのだ。
経済産業省や資源エネルギー庁まで巻き込んだ資源探査 実は見た目グロテスクな深海魚とか身が水銀等で毒物塗れだろうが長年蓄積した加工技術でどんな魚も危ない成分を綺麗に除去し穴子やウナギ風の食材に加工出来る金太郎水産も利権に絡み始まった巨大プロジェクトは 駿河湾で産卵終えて外洋へ⇒沖縄尖閣諸島近海へ集団移動するパラジウムウナギの横取りを狙う中華人民共和国海洋警察に海軍部隊 果ては漁夫の利狙う台湾政府も絡みドタバタ状態に まあこの辺りのエピソードはかなりブラックな笑い誘うシチュエーションコメディじみた本編読んで楽しんで貰うとして
株価が爆上げし笑いが止まらない五洋マテリアルと金太郎水産の社長達に冷や水を浴びせ掛けたアメリカ企業⇒実は日系2世の御年80近い爺さんが個人経営し唯一の従業員として働く アメリカンパラヂウム社 の告訴状から判明するパラジウムウナギ誕生の原因。 果てはアメリカンパラヂウム社と業務提携しハワイに進出した金太郎水産が始めたSPAM=フイッシュパテ (健康の為なら死んでも良いとのたまう阿保な白人にジャンクフードを♥) のセールスに繋がるオチは変な笑いが込み上げてくる作品で御座います。
★昔はそのまま魚屋で売られてた魚介類 生ゴミ増えるしそもそも捌くのは時間と手間暇掛かるからと切身や加工冷凍食品として売られる時代になってからは 例えウミヘビでも別にウナギや穴子じゃ無くても同じ味だから良いんじゃね♬ と金太郎水産みたいなやり方する企業増えました でも安全性や品質は、魚肉ソーセージやカニカマ等でかなり技術蓄積有るから本物よりも高いのよ。 ちなみに私はスーパーで売られる冷凍ウナギ蒲焼きや回転寿司の穴子に鰻ついでに雲丹とイクラが苦手です 原料推測出来ると有り難みが薄れます(=_=)
■豚と人骨 2009年12月 オール讀物掲載
遺産相続を巡るゴタゴタの末に解体された古民家跡地で始まったタワーマンション建築 ところが床下に設置された石壁剥がし見付かったのは無数の人骨。 当初は江戸時代の無縁墓地或いは殺人事件を疑われた其れは警察の調査により今から3500〜3600年前・縄文時代の遺跡だと判明するも 何故10代前半〜20代の若い女性だけが無造作にしかも少なくとも300体以上が同じ頃に投げ込まれ 石灰を振り巻かれ果ては巨大な岩で覆われたのか皆目検討が付かなかった。
地権者と建築会社に泣き付かれ妥協に妥協を重ねた発掘調査期間は僅か3ヶ月 女子短大で客員教授やって稼いだ資金で関東の縄文文化を研究する女傑 松村江美子所長率いる3人のスタッフとバイトを総動員した炎天下の調査により判明する様々な新発見 以前泣く泣く埋め戻す事になった近隣のショッピングセンター建設現場同様、此処の人々は狩猟採集では無く養豚や農業で生計を立てており 他の古代人よりも体格が良かったらしい 豊富な食料で飢饉や餓死の心配は無縁だった筈の彼女達の死因は急激な栄養失調だったと判明し謎は増えるばかり だが突如降り出した豪雨により遺跡が水浸しになった事を契機に此処の文明が何故急激な滅亡を迎えたのか 発掘に参加した女性達は身を持って味わう羽目になる。
水に洗われ全貌が明らかとなる骨の塔 数日後、泥まみれで救助されたアルバイトの学生達の股間からこんにちわしたり内臓から見付かった巨大な紐状の未知の寄生虫 遺伝子を調べ虫の正体は人間の女性のみに感染し子宮を食い破り患者を殺すブタ回虫の新種だと判明した事で塔が出来る程の死者を発生させ集落が焼き捨てられ廃棄された原因が明らかとなった。 このままでは骨の塔に付着した無数の卵から幼虫が飛び出し東京は前代未聞のパンデミックに襲われる危険性が高い 連日連夜無為な対策会議とは名ばかりな責任の押し付け合い なにせ男は感染しないが微生物より小さい卵だけはその妻や娘に寄生する可能性が高いし消毒液程度じゃ数千年も生きて来た其れを殺せない 考古学者達は遺跡破壊するなと騒ぎ出す。
ならば予定通りマンション建てて全て無かった事にしよう。
建築会社の提案で地権者には実情は知らされず骨の塔は全て掘り出した事にし 3Dプリンター厳密に再現された偽物をガラスに封印し博物館や研究機関に展示 あくまでも其れは本物だと言う事にされ全ては闇へ葬られる。 元々メタボ気味だった江美子は寄生虫によりダイエットに成功し年齢不相応な若さを取り戻すが二度とブタ肉料理を食えなくなった。
■はぐれ猿は熱帯雨林の夢を見るか 2010年5月 オール讀物掲載
都心の大学を出たものの折からの構造不況で就職浪人となり故郷へ戻り お年寄りばかりな部品メーカー 松沢科学 で事務員の仕事に付いた主人公 上野藍子 過疎の村に出来たハイテクエリアは産業スパイを警戒する大手企業の新製品開発ラボの様な場所で有り 敢えて身分隠した若手研究者の出入りも多い職場 昨年から隣同士で机を並べていた興田電気の社員 金森 に絶賛片想い中だった彼女は、先月のバレンタイン なけなしの勇気を振り絞り本命チョコを手渡したものの 彼女に負けず劣らずに内向的な彼からまともな返事を貰えぬまま別れる事に
ホワイトデーの前日事務所を離れた金森の机を片付けていた彼女が見付けたのは ラッピングされ引出しの中に置かれたままになっている綺麗な真珠色の携帯ストラップ もしかしたら此れが彼からのプレゼントなのかも知れない 余りに綺麗な其れを持ち帰りペンダントに加工し身に付けた藍子は その日からスカートの中にカメラを差し込んだり家の中に侵入し入浴中の彼女を覗く 変形可能なキャタピラ付きのラジコンカーに付き纏われる 車両蹴り飛ばし警察に通報しても攻撃を巧みに避け彼女以外に姿を見せない機械
翌朝寝不足状態で事務所に現れた藍子を心配し相談に乗った浅賀工場長は もしかしたら其れは村のラボで軟禁状態の暇な技術者が作ったスマホやタブレット端末で操作可能な盗撮ロボットの可能性が高いと ちょっと表沙汰に出来ない目的で開発された強力電波妨害機を託されるが 自律型で自己修復に充電機能を持つ其れは人型に変形し○○○ンを思わせる充電ソケットを着換え中の彼女の下半身に押し付け悲鳴を上げさせた 軽自動車を暴走させ妹夫婦が両親と暮らす実家に逃げ込むがロボットは其処にも現れ彼女に迫る だがロボット目撃したのは主人公だけ そんなSF紛いのイロモノを全く信じない妹からは病気扱いされ彼女は遂にブチ切れる。
浅賀工場長と駆け付けた警官に付き添われ自宅に残されたキャタピラ跡等、様々な物的証拠は見付かるものの相手は人間では無く自律型のロボットではどう対処したものか そもそもロボットは何故彼女だけを追跡出来るのか 真珠色のストラップの正体は発信機能が仕込まれたICチップだと判明し 証拠品として工場長が預かる事に 下手に警察通報しても相手は大手企業の技術者だから圧力掛けられる可能性も有る だがICチップを外してもロボットは彼女を追い掛けてくる 深夜独り逃げ回る藍子の前に現れたヤンキー集団に拉致された彼女は危うくレイプ殺人の犠牲者になり掛けるが満身創痍の姿で現れたロボットは身を挺して藍子を守り抜く。
藍子に抱き付いたまま腰?を振る変態を目の当たりにし 駆け付けた社長夫人=御年60歳のオッパイに飛び掛かる其れを見た工場長が 思わずスタンガンでロボットにトドメ刺し 翌日事情を聞き慌てて村に戻ってきた金森さんから全ての事情を聞く事に 実はあの自律型ロボットは類人猿を模した物で有りICチップが可動した事で100km以上離れた大学のラボに保管されていた其れはプログラム通り雌の仲間を保護するためにやって来たことが判明する 性的な其れはボノボのコミニュケーションであり別名エロ猿呼ばわりされてもアレは無害なんだと説明する金森に 責任取って此れ直せと怒る主人公は何故か感激した金森に思いっ切りハグされ携帯アドレスと自宅の住所が書かれたメモを渡され頭を抱える羽目になった(^_^)
■エデン 2011年3月 オール讀物掲載
西暦2050年 北米大陸の人里離れた極寒の山 とある大企業の依頼で63年もの年月を費やし 極秘理に掘り進められたトンネル掘削の原動力となったのは大型トラック40台を動員し運び込まれ 殆ど人海戦術で半年掛かりの手間暇掛け組み立てられたシールドマシーンを始めとする様々な工事車両と 方舟と呼ばれる世界から隔絶した集落で暮らす10代〜70代までの訳有りな男達とその家族によるものだった。 反対側から掘り進めていた男達に出迎えられ漸く繋がった其れを感慨深げに見守る日本人 ハルユキ が此処に連行され閉じ込められたのは今から30年も前の事になる。
口は災いの元 日本から遠く離れた此処に連れて来られ四半世紀ものドワーフ紛いな人生を生きた彼を評するならこの1言に尽きる。 大学を出たら寺の跡継ぎとなるための修行僧生活 其れが終われば周囲に決められた配偶者を充てがわれ寺の住職として次世代に引き継ぎ終えるまで生涯檀家に縛られなければならない。 卒業旅行も兼ねた最後のスノーボードとガールハント 飲酒にちょっとした禁止薬物を楽しんでみたい 初めて会った見知らぬ他人に此れから待ち受ける憂鬱な人生を愚痴った末に 麻薬取締法違反の囮捜査によりまんまと容疑者に仕立て上げられた主人公が昨夜色々やった (詳細は本編どうぞ 体臭キツイとか背中に剛毛がとか身も蓋も無いエロ描写が悲惨過ぎる) ブレンダと名乗る赤毛の白人女に車に乗せられ連れて来られたのは人里離れた山奥で苦行僧そのものな生活送るコミュニティ
落盤事故により7名の鉱夫を失った彼等は追加メンバー兼 次世代の鉱夫を生産するための若い種馬が必要だった。 英語が話せていきなり行方不明となっても誰も困らない外国人なら尚更都合が良い 2日前肉体関係持ったばかりのアメリカンな女ブレンダの入り婿として "方舟" の鉱夫となった主人公 周りは何処迄も広がる地平線に狼やヒグマだらけな山岳地帯 食事は鈍器として使えそうな石よりも固い丸パンと其れをふやかすための塩味なスープ 建設機械と会社とだけ連絡取れるパソコン除けば12世紀で止まった世界 何とか此処を脱出して日本へ帰りたい 決められた時間穴を掘り進め 夜はブレンダに迫られ義理の両親達が暮しプライベート空間すら皆無な5人暮らしの6畳1間の家でまぐわう其れはまごうこと無き交尾でしか無かった。
1年後 建設機械の燃料や食料補給に現れたコンボイが現れるが あれ程焦がれた様々な嗜好品の臭いに耐えられず 逃げ出す積りで便乗したトラックから飛び降り方舟へ戻った主人公 ブレンダ相手に作った子供達は総員7名 学校も病院も存在せず弱ったり病気になれば神に祈るか死ぬしか無い此処での生活が漸く終わる。 当初此処に集められた60余名のメンバー………ハリケーンで何もかも失った元コカイン密輸入業の義父を除きほぼ全員が鬼籍に入ったが遺された家族には63年分の報酬と年金が約束されている 実は方舟が有る此処は莫大な埋蔵量を誇り合衆国が秘匿するプラチナ鉱山だったらしい 国営企業ギガースミネラルの公共工事に貢献した彼等は街の歓迎パーティへ招待された。
ショーンとハルユキを除き 多くのメンバーが初めて体験する塩味以外のまともな料理 ネオンサインや車の轟音 讃美歌以外にも存在していた音楽に三半規管やられパニック状態 主人公は30年振りに手に入れたチョコレートとモーション掛けてきた東洋人女にフラフラと引き寄せられるがギリギリで踏み留まった 工事が終われば方舟は解体 全員が散り散りバラバラに第二の人生を歩む事になる。 亡くなった鉱夫やその家族が埋葬された墓地で30年振りに読経を唱える主人公
観自在菩薩 行深般若波羅蜜多時………… 色も形も感情ですらも生きとし生けるモノ その全てが感じるモノに実体は無い
此れから何処で生きどう暮らそうが何とかなる そう笑う妻ブレンダと共に歩む事を決断した主人公と数人の子供達 (とは言え7人全てでは無かったが其れは仕方の無い事) 此処での生活が最も幸せな時だった義父はダイナマイト片手に坑道の奥へ独り姿を消した。




