アメリカン・デス・トリップ 上 01年
2020年7/15〜7/16タブレット端末にて執筆し脱稿 同日朝割り込み投稿
【 ジョン・F・ケネディ大統領暗殺作戦における不手際の後始末から始まり キューバ・カストロ政権打倒からベトナム赤化への介入⇒泥沼のベトナム戦争へ突き進むアメリカ合衆国 何故兄を売り飛ばした弟ボビー・ケネディも口封じされたのか 黒人公民権運動において指導的立場に有ったマーティン・ルーサー・キングJr牧師が何故殺されたのか 1963年〜1968年までの合衆国の暗黒時代を傍証と妄想で描いた物語 死の旅路 或いは 死の罠 をかけたダブル・ミーニングな日本語翻訳版のタイトルがあまりに的確過ぎて原題が見劣りするのがアレかな? 】
原題:THE COLD SIX THOUSAND
裏金6000ドル=ヒモの黒人男性ヴェンデル・ダーフィーに掛けられた
ラスベガス カジノ経営協会の報奨金 但し殺害前提
アメリカ ミステリー小説
ジェイムズ・エルロイ 著
同年文藝春秋より翻訳版上下巻出版
文庫版は2007年出版
■どちらも絶版 中古品しか有りません
2020年の7月半ば 暑ければ潮風が押し寄せる昼間と違い外気そのものは下がるものの風が止まり湿気と熱気が身体に容赦無くダメージ与える熱帯夜は中々強烈です。 お陰で最近本当に寝不足気味 退屈だから相手しろとトドメ刺しに来るのが1匹増えましたからマトモに眠れるの夜明け前ぐらいかも
今回取り上げるのは夏場に手を出すと色々地獄見るジェイムズ・エルロイ作品の暗黒のアメリカ史 アンダーワールドUSAの第2弾 全体読んで見た感想はと言われても "変な薬飲まされて頭がバッドトリップしたような気分味わえる" としか書けません 3人の主人公の意識に入れ代わり立ち代わり入り込まないと物語の全体が掴めないから船酔い状態になります。 取り敢えず上巻読んでドン引きしたのがベトナム〜ラオス間のケシ畑を行き来する主人公達の残虐性と悪意を煮詰めた様な現地人の描写 前回の "アメリカン・タブロイド" でもキューバ人や黒人に対する差別感が炸裂してましたがこの物語に登場する人物達にとってベトナム人やラオス人 果ては麻薬栽培のため集められた中国人は其れ以下です。
殺されたケンパーの後任として物語に登場するのはラスベガス警察の部長刑事 ウェイン・テッドロー・ジュニア もうすぐ30迎える若手メンバーで色々有って実の母親とは疎遠気味 苦手だけど其れなりに尊敬してる同姓同名の父親が後妻として迎えた10歳差の義母 ジャニス・リューケンズ・テッドロー の色気に惑わされつつも空挺部隊に居た頃出逢い結婚した年下の妻 リネット・スプラウル・テッドロー を愛していると公言する愛妻家 だけどエルロイ作品に人格者は登場しません 女性に暴力振るうのが大好きな父親の血を受け継いだ彼のピート以下な心の歪みは章が進むに従い徐々に明らかになってゆきます。
そもそもこのシリーズに出て来る善人は死体だけです では本編へ
【 此処は黒んぼの来る所じゃない ベガスのカジノで殴りかかってきたディーラーの片目を正当防衛で奪いダラスへ逃亡したヒモ=ヴェンデル・ダーフィーにカジノ協会が掛けた暗殺報奨金は6000ドル マフィアとズブズブな関係を持つ上司と父親の推薦で派遣された処刑人 (但し言質取られない様殺せとは言われて無い) の名は ウェイン・テッドローJr刑事部長 だがマフィアの方針や彼等とズブズブな父親のやり方も隔意を抱く彼の狙いはダーフィーの見極め もしマトモな奴なら何とか殺さずに済ませたい。 皮肉にもその陰謀の手助けとなったのは証人の口封じで派遣された2人の男達 そして謀略と暗殺の時代は彼等をさらなる闇へと誘う。 】
■第1部 境界 EXTRADITION 1963.11/22〜11/25
白人様の片目奪った黒んぼを始末しろ。 報奨金を無理やり提示され送り込まれたダラスへ降り立ったウェインJr刑事部長を唖然とさせたのは 地方遊説中のジョン・F・ケネディ大統領が何者かに暗殺され悲嘆に暮れる学生達の姿だった。 ネバダの名士の息子に与えられた名誉殺人の仕事は黒人弾圧に勤しむ白人屑に眉をひそめる妻リネットを愛する主人公にしてみれば薄汚い気の進まない汚れ仕事 案内役兼監視役として現れた地元警察のメイナード・D・ムーアー刑事の人種偏見振りに不快感を抱きつつホテルへチェックイン 名前を聞いた瞬間態度を豹変させ親しげに振る舞うホテルマン達に閉口し ラウンジは暗殺を祝う男達と英雄の死を悲しむ男達により一触即発の雰囲気が漂う
大統領暗殺に我感せずの態度を貫くムーア刑事の態度が豹変したのは 容疑者で左翼崩れのチンピラ=リー・オズワルドの逮捕とその際JDティピット巡査が撃たれ殉職したと言う報道 任務を放り出し外へ駆け出した監視役に抱いた違和感が的中したのは全てが後の祭りとなってから ダラス警察に潜り込んだ暗殺支援チームに充てがわれた任務は、大統領を狙撃した事になっているオズワルドを逮捕では無く射殺し口封じを行なわなければならなかった。 元FBI捜査官にして現CIAに所属するガイ・バニスターのチームがやらかしたヘマを尻拭いする任務を与えられたのはマフィアの弁護士兼色々有って長官推薦で50代で捜査官に復帰したウォード・J・リテル サイパンの英雄⇒保安官補佐⇒マフィアの始末屋へと転落人生歩み続けるピート・ボンデュラント ちなみにピートは新妻のバニーとダラスのホテルに滞在していた事から逸早く捜査妨害や口封じに暗躍する事になる。
本当の暗殺者を目撃したらしい ナイトクラブ経営者にして情報屋ジャック・ルビーの黒人女性会計士アーデン・スミスとウォードの出逢い そもそもオズワルドを仕留め損なった理由は任務をサボり内職を優先した底無しの間抜けが元凶だ 妻や子供連れてメキシコへ逃げるダーフィーに当座の生活資金を渡し逃亡を見逃した主人公は監視役のムーアに殺されそうになり返り討ち タイミング良く駆け付けたピートの手助けで死体は行方不明 恐らく黒人のヒモに殺害された事になった。 家族や飼い犬と店の安全保証を条件に (勿論其れ以外の理由も有るが詳しくは本編で) オズワルドの口封じを行ったのは史実の通りジャック・ルビー かくして役者は再び舞台へ
■第2部 徘徊 EXTORTION 1963.10月〜1964.10月
ウェインJr刑事部長によるムーア刑事殺害容疑は遺体が見付からないまま 不祥事発覚を恐れた父親の支援も有り有耶無耶となる。 アーデンを匿い彼女の為に新しい身分証明書を偽造するウォードは雇い主の1人 南部3州を纏めるマフィア=カルロス・マルチェロに呼び出された 要件はガイ・バニスターに頼み込まれた大統領狙撃犯の顔を知る者達の口封じ ジャック・ザンゲッティ ハンク・キリアム アーデン・スミス ベティ・マクドナルド 4人の殺害はピートに託された 断れば自身のみならずバーブとその親族も殺される ザンゲッティは射殺され遺体は海へ捨てられた だが女は殺したくない お前も隠蔽に協力しろ ウォードは再び危ない橋を渡る事に
ハワード・ヒューズによるラスベガス乗っ取り作戦に参加するのはジアンカーナやマルチェロ トラフィカンテ モウ・ダリッツ等々の大手マフィア幹部達 ウォードが調整役となり突き進める計画に最初に気付いたのはラスベガス市警に職務復帰し、連続黒人女性レイプ殺人事件を追う主人公 容疑者が白人で有り性的満足よりも殺しを楽しんでおり 黒人街では公民権運動活動家による抗議デモ⇒暴動の可能性が日増しに高まっている。 捜査の結果浮かび上がる父の友人達でベガスの名士=賭博評議会メンバーの犯罪行為 スパージョンは未成年者との性的関係 ピーヴィーは無許可のスロットマシーンで日銭を稼ぎ ヒントンに至ってはレイプ殺人の実行犯 だが上層部の圧力で何れも逮捕は出来ない。
そんな最中、荒事に慣れた3人の黒人を連れベガスに舞い戻って来たダーフィー 目的は見逃してくれた筈の主人公の口封じ そもそも何故ウェイン・シニアは息子を暗殺者に仕立て上げダラスへ送り込んだのか ウォードからの依頼ついでに黒人街での情報収集を続けていたピートは主人公に会うため微罪で態と捕まり警告するが手遅れだった。 妻リネットをレイプされ解剖されたカエルの様に殺された主人公は錯乱 ベガスにヘロインを持ち込み流通させるついでに犯行を手伝った3人を多くの黒人達が目撃者となる形で殺し 駆け付けた同僚に取り押さえられる アーデンとの関係が発覚し脅迫される形でマフィアを裏切り二重スパイとなったウォード弁護士の活躍 (公民権運動家への説得その他 実はアーデン=ジェーンを通し黒人団体へヒューズやマフィアの資金を流している 其れはFBIへの裏切り行為でも有ったがフーバー長官は黙認) により不起訴となった主人公 麻薬取締の捜査を台無しにされたドワイト・ホリーに証拠を提供し主任捜査官に推薦する手筈を整えたのはフーバー長官
ベティ・マクドナルドは逃げ切れなかった 警告しチャンスをあげたのに何故国外へ逃げなかった 微罪で捕まり刑務所に収監された彼女を殺したのは監視役と共に看守として送り込まれたピート 彼女は刑務所で首を吊った事にされ 遺された愛猫はピートが引き取る ウォードに詰問されるが嘘を貫き通す彼は憔悴しきっていた。 ダーフィーを探し出し必ず殺す 警察を辞めたウェインはカジノの用心棒の職に付いた ピートと友誼を交わす様になった主人公に徐々に恐れすら抱き始めるウェイン・シニア 息子には色々知られたく無い過去が有るよなとシニアに接近するフーバー長官 ハンク・キリアムも潜伏先が判明 皮肉にも其処は因縁浅からぬルイジアナ 眠る彼を苦しませ無い様1撃で仕留めたピートが大笑いしたのは元凶で有るガイ・バニスターの変死 実の所憔悴するピートを見兼ねたマルチェロは自己保身を優先しカタギに手を出す間抜けを生かす積りが無かったらしい。
主人公の心を最後に圧し折ったのは義理の母ジャニスの秘密 まあ詳しく書くと色々怒られそうだし読んでも楽しいモノじゃないから省略するが 色々有って義母と肉体関係結び父がJFK暗殺にも加担した正真正銘の人間の屑だと判明し漸く父離れが出来たウェインにピートから持ち込まれた仕事はCIA主導によるヘロインの密売による対キューバ戦の資金源獲得 軍属として戦地へ乗り込みフランス人経営者からケシ畑を奪い ラオスで生産精製した其れをヴェトナムへ持ち込み軍用機でアメリカへ 黒人マフィアの代わりに我々がラスベガスの黒んぼ共に売り捌く 2つ返事で了承したウェインは杖を掴みシニアの寝室へ乗り込んでいった。




