ファイブ・イージー・ピーセス 70年
2020年タブレット端末にて執筆2/13〜2/14昼前脱稿 同日お昼投稿
世間一般はHAPPYバレンタインだけど嫌がらせみたいな映画です。 閲覧の際はご注意を
【 ララランド・オープニングダンス映像の元ネタとなったアメリカン・ニューシネマの傑作だそうですが エリートコースをドロップアウトした挙げ句、実家から逃げ出し 転落人生送った末に性格歪ませて自分より駄目な人間を周囲に集め見下す事でストレス発散してた正真正銘の屑な主人公がふと気が付いたら自分自身が極め付けの駄目人間に成り果ててる事に気付いて自暴自棄になる そんな物語です 前向きに楽しく生きたいと考えるお客さんには耐えられないかも知れません。 】
★何もかも投げ捨て何処かへ逃げたい……地を這う経験してない10年前の私ならボロクソに貶してたかもな作品でした。 30歳目前でも厨二病から卒業出来ない駄目人間 或いは40歳以上推奨作品かな?
☆ゴールデングローブ 助演女優賞 受賞作品 ある意味元祖アホガールに振り回される主人公を演じるのはとても当時33歳には見えないぐらい老け込んだジャック・ニコルソン。 ヒロイン以外も女性キャラが全員面倒くさい奴ばかり 何故コメディにならなかったのかは永遠の謎ですね。
原題:FIVE EASY PIECES
直訳すると5つの雑な切片⇒転じて5つの簡単なピアノ練習曲
物語をどう捉えるかにより意味は変わる そんなタイトル
アメリカ劇場公開作品.
アカデミー賞 4部門ノミネートで話題となり
1971年に日本公開.
■日本公開時のキャッチコピーは "いい生活なんて吐き気がするだけ" まんま全共闘やヒッピー文化拗らせた元祖厨二病大学生目当ての作品でした どんな前向きな人間も軒並み鬱になるこの物語が売れたかどうかは知りません。
70年代後半〜80年代始め辺りまで 視聴率なんざ期待出来ない深夜や平日午後3時頃に "もう1つのイージー☆ライダー" としてテレビ放映してたらしい知る人ぞ知る名作だったそうですが勿論見てません 私は数年前に同作のオーディオ・コメンタリー聞くまでそんな映画が有る事すら知りませんでした。 そもそもオチが大概バッドエンドで鬱展開の物語なんて見聞きする価値あんの? となる単細胞な私がこの作品を当時楽しめたとは到底思えない それなりに齢を重ね経験を積んだ年齢にならないとこんな最低な主人公や登場人物達に嫌悪感しか感じないかもね 世の中には自分で自分を追い詰めた挙げ句破滅する本当に救えない人が居るのです。
ほんのちょっと演出や脚本弄ったらブラック・コメディになり兼ねない物語だけど主人公の葛藤でギリギリ鬱映画になった物語 最初の脚本では主人公が自殺する事になっていたそうな。
自分自身に愛想を尽かし常に逃げ回って来た主人公 "ロバート・英雄・デュピーことボビー" が辿り着き腐っていた石油採掘施設に囲まれた街はカリフォルニア州のベーカーズ・フィールド 今では人口34万人を越えるサンフランシスコに次ぐ州の大都市なんだそうですが映画製作時はスラム街そのもの 元々石油採掘で急激に栄えつつ其れ以前に住み着いたバスク系移民により建てられたスペイン風の伝統的建築物が建ち並び葡萄畑や綿花農園が広がる土地が壊滅的な被害を受けたのは1952年の事 映画撮影当時は未だ復旧の最中に有り、怪しげな店が建ち並ぶ混沌としたゴミ溜でした 異様な雰囲気を醸し出す無数の採掘施設は今も昔のまんまピストン運動続けてます。
マグニチュード7.5の大地震による建物倒壊を原因とする大火災 河川決壊による土砂崩れと洪水により街と農地は壊滅的な被害を被り。 惨劇を生き延びた従来の住民は 文字通り移住を余儀なくされ 代わりに押し寄せたのが流れ者達 復旧を優先した石油採掘施設の労働者と其れが落とす金を目当てに集まった有象無象が作り上げたのが多種多様な怪しいお店と仮住まいを前提とした仮設住宅 2020年現在、此処は南米系マフィアとロサンゼルスから追い出された黒人団体が抗争を続け銃乱射事件が度々起こる危険地帯と成り果てます。 中心部の見た目だけはビルが建ち並び当時よりなんぼかマシに見えますが周囲は今も砂漠のまんま 近隣の高速道路から撒き散らされる排気ガスにより早朝は辺りが見えなくなるそうな。
【 砂漠の様な土地で24時間ぶっ通しで動き続ける石油採掘機の面倒を見るのは、日雇いで集められた訳有りの単純労働者達。 映画の冒頭から流れ出すのは 男はどいつもこいつもろくでなしだと呟く "タミーウィストの時代錯誤で女の愛こそ全てなカントリーソング Stand by Your Man" 色々有ってこの街に流れ着き機械工として働く主人公 "ボビー" と同棲する "レイエット・ディペスト⇒レイ" のお気に入りのレコードは何時だって主人公を苛つかせる。 馬鹿で知恵遅れだと内心軽蔑してるその女は間違い無く自分の本質を見抜いているから。 】
★1919年〜1930年代までは木材を伐採し組み立てられた採掘櫓だったそうでまるで枝葉の無い森みたいな光景が拡がっていたそうです。
元天才ピアニスト ボビー=ロバート・エロイカ・デュピーにとって人生の頂点はコンクールを総ナメにした8歳の頃 だが少年は敢え無く人生に行き詰まる 偉大な先祖達やバイオリニストとして成功した兄 "カール・フィデレオ・デュピー" 姉でピアニストの "テイッタ=パルティータ・デュピー" の才能をどうしても超える事が出来ず、厳しい指導を続ける父親 "ニコラス・デュピー・ウィリアム" に反発し学校を辞め自由を求めカリフォルニアへ逃れたのは10代の半ば 其れからずっと自堕落に生きて来た主人公が手に入れたモノは給料はそれなりな日雇いの仕事に オツムも音楽センスも皆無な歌手志望のメンヘラ地雷駄目女 "レイ" と大概オンボロな1件家と年代物な自動車ぐらい。
歓楽街のダイナーでウエイトレスとして日銭を稼ぎあなたが私を捨てたら自殺するわよと脅す5歳年下の "レイ" とは共依存関係 互いに早朝から日没まで黙々と働きやる事やって眠るだけの単純な生活。 時折衝動的に見ず知らずの女達と身体を重ねどんちゃん騒ぎをやらかし 早朝の渋滞で身動きが取れない高速道路で鳴り響くクラクションにブチ切れ 高速道路で踊り出した挙げ句、偶々廃品回収トラックに積み込まれていたアップライトピアノで (小学校とかに置かれている小さなオルガンなアレ) 前奏曲を演奏しながらそのまま何処かへ連れてかれる等、突飛な行為を繰り返す主人公を見兼ねた妻子持ちの友人 "エルトン" は俺と妻の様に身を固め子供を作れと諭すが馬耳東風 だがやる事やってりゃ子供は出来る レイの妊娠が発覚し精神的に追い詰められた主人公が衝動的に退職届を出したその日 エルトンは刑事達に取り押さえられた。
10年前 余所の州で強盗をやらかし保釈中にカリフォルニアへ逃亡した事で3アウト。 終身刑が確定している友人から残された妻子を頼むと懇願された主人公は、金の工面をつけるために疎遠気味だった家族の中で唯一仲の良かった姉 "ティタ" がレコーディングを行っているロサンゼルスのスタジオを訪ねるが 其処で知らされたのは兄 "カール" が交通事故で療養生活に入ったニュースと父 "ニコラス" が痴呆症を患いもう長くは持たない事実。 何もかも投げ出し遥か北のワシントン州沖合いに有る実家へ帰ろう そう決意する主人公だったが妊娠初期の体調不良で精神状態が不安定な彼女を見棄てる事が出来ずなし崩しの長距離ドライブ。
情緒不安定なレイとのドライブに息詰まる気分を味わっていた主人公は、途中オレゴン州の高速道路でアラスカ州へ向かう途中に自損事故をやらかした年若いヒッピー女達 "パームとテリー" を拾い同乗させるが近頃話題な二酸化炭素が目に見える環境少女○○タの様に何もかも扱き下ろし明らかに精神を病んでいるパームの妄想にレイが同調(笑) アレは狂ってるから仕方が無いんだと諦めモードなテリーには見向きもされず偶々立ち寄ったダイナーではマニュアル通りの対応しか出来ないウエイトレスに心底不快な気分を味わう等々、最悪の道行きを体験する事になった。
州境のインターチェンジで漸くヒッピー女達と別れ、曲がりなりにも上流階級に所属する親族にだけは対面させたくない彼女を宥め脅しつけ長期逗留で予約していたモーテルに押し込めた主人公は独り車を駆りフェリー乗り場へ デュピー家が所有するチェサピーク湾内の孤島に上陸し漸く実家へ舞い戻る。
久し振りの我が家で主人公を歓迎してくれるのは姉だけ コルセットが外せない兄は妻では無く名目上の弟子でピアニストの "キャサリン・ヴァン・オスト" を連れて来ていた事から気まずい雰囲気に 父ニコラスは痴呆症が進んでおりまるで出来の悪い人形の様に愛想の無い介添人 "スパイサー" に何もかも任せ切り 半ば強引にキャサリンと肉体関係になった主人公は何も言い出せぬまま無為な時間を過ごしとうとう島へ乗り込んで来たレイにより何もかもぶち撒けられる事になる。
馬鹿女を捨てて兄の愛人にプロポーズしようとするが 自分自身をすら好きになれない貴方は誰も愛せないよと手酷く振られ 姉ティタと介添人が肉体関係を持っている事実に激昂した主人公はヤケクソ気味にスパイサーに殴り掛かるも敢え無く返り討ち。 心身共にボロボロになった主人公は自身の心に潜む闇を動か無い父親に吐露するも痴呆症で何も分からないニコラスは何も応えてなんかくれなかった。 結局金を無心する事も出来ずレイを連れてカリフォルニアへ戻ろうと車を走らせ オレゴン州のガソリンスタンドで給油ついでに珈琲買いに出掛けた彼女から離れトイレで自問自答を続ける主人公は、衝動的にアラスカへ向かう途中のトラックドライバーに頼み込み何もかも投げ出して行方を眩ませる。
買い物から戻り灰色の世界と化したガソリンスタンド 車の側でボビーを待ち続ける妊婦の姿を遠景で映し出しながら画面は暗転 2人がその後どうなったかは明らかにされないまま物語は終わった。
☆当時は日本でも "ドロップアウト" なんて言葉が浸透して来たばかり "俺は脱サラして喫茶店を営業する" そんな事を繰り返したらどうなるか何てまんまやらかしたこの作品は見事にモラトリアム人間 (多分コレも死語だな(汗)) に冷や水浴びせるダメージを与えたそうです。
★色々有ってノミネートはされたもののこんな陰鬱な物語はアカデミー賞に相応しく無いと評価された作品。 2020年の作品賞はまんま此れを再現し審査員に様々な方法で便宜を図った事実が発覚したあの国の映画が表彰されたそうですが過去最低の視聴率を達成した辺り 最早笑いしか込み上げて来ませんな 何にせよポリコレやらLGBTやらでまともな作品が評価されないあの国の映画産業は衰退しました。 どん底からどう這い上がるのか気長に見守る事にします 尤も日本の其れは尚更悲惨だけどね(苦笑)
偶々レンタル店で目にして衝動的に借りちゃった そんな作品 敢えて似た作品挙げるなら顔が個性的な "NHKへようこそ" 但しバッドエンド版です。 日本公開当時の同時上映がコメディな辺りお察し下さい。




