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キョンシー 僵屍 13年

2019年11/22〜11/24タブレット端末にて執筆し午後脱稿 11/24 16時投稿

台風27号⇒熱帯低気圧の影響で今日もコチラは暑いです 未だかぶれない布団と毛布どうしよう(汗)

【 共産党にへつらう厳しい検閲を突破する為にとは言え 何故あんなラストにしたんだと評価が分かれる物語なのかも知れませんが香港限定で(じつはたいりくでも)大ヒット‼ 当時はこれでオシマイとなる筈だった絶望に満ちた物語は結果的に中国へ返還後辺りから延々四半世紀も途絶えていたカンフーと霊幻道士の復活…今振り返ってみると2014年の香港雨傘革命を始めとする民主化&反共産主義運動へと人々を動かす篝火(かがりび)となったのかなと 歴代霊幻道士出演者の生き残り総ざらえしてますのであのシリーズが大好きだった香港映画&ゴールデン洋画劇場ファン向け。 】


★ちなみに出演チン・シュウホウ(85年に公開された人気シリーズ・霊幻道士で女幽霊 薫小玉(シャンシー)に惚れられる弟子1号 秋生(チュウサム)が出世作)はまんま本人役で出演……当時10代半ばだった彼も撮影当時既に孫が居る50歳を迎えていました。 見た目あんまり変わってないけどね。


原題:僵屍 (キョンシー)

本来は死後硬直を意味します

英題:RIGOR MORTIS リゴル・モルティス

意味は死後硬直…当時の香港映画を巡る状況を

強烈に皮肉ったタイトルになりました。

香港劇場公開作品

日本の清水崇プロデュース作品.

2013年イベント上映の際は リゴル・モルティス 死後硬直 

のタイトルで上映.

2014年日本劇場公開.

■R15限定作品.

お店によってはR18作品となります。



 何故この物語を取り上げようかと思い付いたのか? まずはそんな話から始めましょう。 儒教思想或いは中華思想にあぐらをかき21世紀を迎えても紀元前のまま弱肉強食のルールで生きている近代化に失敗した特亜三ヶ国には元々約束という概念が有りません。 決まり事は強者が弱者に強要するものでなければならず、契約は自分達に不利だとなれば必ずしも守る必要は無い。 なにせ政権が代わる度に其れ以前の支配層を根絶やしに(リセット)して来た訳だしなと態度を豹変させ文明人に対し高圧的に振る舞った結果が、中国大陸内で五月雨式に多発する暴動と弾圧の鼬ごっこで有り2019年再び始まった学生抵抗運動の激化です。


70年代末期に度重なる植民地独立と第二次大戦から延々と続いた対外政策の失策により弱体化したイギリスは、ライフライン封鎖するぞと脅し付けた中国共産党に言われるがままに香港の防備を放棄し、84年には97年までに香港返還に同意すると言う大失態をやらかします。 返還当初は"同じ中国人民なんだから仲良くやろう"なんて親切ヅラした共産党が態度を豹変させたのは例の習近平(クマのプーさん)とやらが権力を掌握した2011年から 一国二制度を2047年まで遵守するとした誓約書をいきなり破棄し、香港マカオのみならず日本を含む地球の大半を(もっとも自制心皆無だから何処までも手を伸ばすけどね。)世界最優秀民族で有る自分達が支配すべき領土領海と決めた中国は香港やマカオに軍隊(実際は軍閥団体で非合法の暴力団含む)や警察組織を進駐させ出版物の検閲や思想信条の自由を取り締まる暴挙に出ます。当然ながら映画も検閲の嵐となったんですよ。


具体例として93年に香港で製作公開された作品は234本有ったんですが、オカルトは禁止カンフーも駄目で果ては恋愛描写やお色気にコメディも検閲された結果、2013年に当局の公開許可を取り付けた作品は僅か43本に激減します。良い顔しないダメリカ(ハリウッド)には大陸で映画上映の門戸を開き大量の(かね)ばら撒いて黙らせました。 この作品は海外で公開するから(がいかかせぐため)と当局を騙くらかし、ホラーでは無く幻想的な文芸作品として押し通した物語です。 だからあんなオチとならざる終えなかった。



結論から言うと清水崇のファンを狙った宣伝方法…キョンシーなのに御札が使えないとか王朝時代は駄目とかであの衣装もアウト…と年齢制限に引っ掛かった残虐描写やシリアス演出が完全に裏目に出て日本では興行失敗。 ついでに当局の度重なる検閲の結果、全てが強引にとある人物が断末魔の中で見た幻想(フラッシュバック)なのかも知れないと匂わせる結末を迎える物語になったので85年〜92年まで正統な続編だけでも6作製作されレンタルビデオやゴールデン洋画劇場でこの物語を楽しんだ霊幻道士シリーズの緩いギャグやカンフー描写を期待していた往年のコアなファンにしてみれば些か消化不良な結末を迎える物語になったのかも知れません。 


それでも当時香港で明日はどうなるか不安に怯える学生達、或いは大陸の何処かで当局の目を掻い潜りDVDを手に入れた人々の心を奮い立たせる事になりました。 目を閉じ耳を塞いでも状況は良くならない、負けるかも知れないし拷問受けたり殺されるかも知れないがこのままでは野垂れ死にを待つだけなんだと覚悟を抱かせた物語です。 結果検閲は一部暖和される事となり2018年からチン・シュウホウが道士役でシリーズは復活を果たします……但し皆様平均年齢が高いからコレからどうなるかは作品の人気次第。




【 DVDの日本語吹き替え版は主人公チン・シュウホウを当時担当した池田秀一 に引退状態の丸眼鏡の霊幻道士ヤウ役を同じく石丸博也が担当。 他にも羽佐間道夫等々……当時ゴールデン洋画劇場で"霊幻道士シリーズ"を見たお客様ならニヤリとする事必至なベテラン&腕が確かな若手声優で固めてます。 広東語版を見て再視聴するのも楽しいしあのシリーズで御馴染みな皆様が最高のタイミングで登場しますのであまり深刻にのめり込まない様に物語を楽しんで下さいな。 】


★とは言え当局の意向に沿ったあらすじ説明するのは芸が無いから、独自解釈で物語を捻じ曲げ再構成します。 公式なあらすじは別途閲覧下さいな。



 全てが終わり廃墟と化した共同住宅の中に唄が流れる。 僵屍(キョンシー)となり故郷の大地へと歩む死者を導く子供達の優しい歌声と霊幻道士が鳴らし向かう先を照らす鈴の音が だがかつて香港映画のスター俳優として多忙な日々を送っていた(チン・)小豪(シュウホウ)には最早家族や親族だけでなく故郷すら存在していなかった。 幼少期を九龍城の孤児院で過ごし16歳で映画俳優デビューを果たし芸能界でスターダムに伸し上がった彼も今や50代。 かつての同僚達は次々と鬼籍に入り香港映画衰退と共に減り続ける仕事で精神的に追い詰められるお決まりの転落コースの末に妻と離婚。遂には社宅からも退去せざるおえなくなった彼が自らの終焉の地として選んだ住処は今は取り壊されリゾートホテルに変わってしまったゴミ溜めの様な生まれ故郷を思い出させる井戸の底の様な共同住宅。


2週間程前 老いぼれた守衛 燕叔(イン)に案内されたのは、長年封鎖されていたらしいクローゼットだけが残された2442号室。 退職金代わりに渡された僅かな衣装を部屋に吊るし余計なモノで部屋を汚さない様シートを敷き詰めた部屋で、最後に息子の留守電が残された携帯電話を再生し涙を流した主人公(チン)は首吊り自殺を図るのだが、シーツを血に染めた幽霊に身体を乗っ取られそうになり直後異変を察知し部屋へと踏み込んだ眼鏡の冴えない男 阿友(ヤウ)により未遂に終わる。 断末魔を迎えた(チン)の身体に入り込もうとしたアレはいったい何だったのか? 何者かが主人公の部屋の前に並べた線香やお供物が何を意味するのか? 果ては其れを盗み食いした狂女 楊鳳(フォン)は何故主人公を見て怯え出したのか? 此処の住人はいったい何なんだ。 老人と訳有の人々…総員28人が暮らす共同住宅唯一の飯屋で悩み続ける主人公を諭したのは、不可解な術式で命を助けてくれた此処の店主 阿友(ヤウ)だった。


此処はもう他に行き場の無い人々が暮らす吹き溜まりで有り、死者の魂ですらもあの世へ行けず此処に留まり続ける土地。 あの部屋は以前3人の住民が亡くなっているんだよ…10年前までこの部屋に暮らしていた楊鳳(フォン)は生まれたばかりの息子小白(パク)を夫に託し買い物に出掛けた最中、夫が面倒を見ていた双子の姉妹の1人をレイプし殺害。生き残った姉が夫を殺して首吊り自殺した現場を目撃し壊れてしまったのだと言う。 惨劇を目撃し血塗れとなった子供は髪の色が抜け落ち、双子の霊は成仏する事なく2442号室に留まり続けているらしい


今から数十年以上も前に父の殉職を契機に此処に住み着いた阿友(ヤウ)は、訳有りで此処に流れ着いた九叔(ガウ)同様、先祖代々続く霊幻道士の一族だった。悪霊退治や魂の救済に駆り出される道士の一族は元々根無し草のその日暮らし 近代化が進むにつれ何時しかキョンシーも居なくなり時代から取り残された彼等は、有る者は阿友(ヤウ)の様に料理人として、或いは九叔(ガウ)の様に葬儀の取り仕切りや占い等で生計を立てているのだと言う。 色々有って喧嘩慣れして(もとカンフースター)いる主人公(チン)阿友(ヤウ) 頑固にも未だ共同体の拝み屋を続けている九叔(ガウ)道士は部屋から離れようとしない双子の悪霊をクローゼットに封印し、10年に渡るホームレス生活を(実は母子の窮状に同情したお人好しの守衛燕叔(イン)に匿われていた)続けていた楊鳳(フォン)小白(パク)を呼び寄せ同居を始める主人公……其れは久し振りな穏やかな日々


 

 だが死んだも同然な人々と彷徨う幽霊達が共存する小さな共同体で2つ目の事件が起きた。住民達の衣服をリフォームし生計を立てている梅姨(ムイ)婆さんの旦那 冬叔(トン)が階段で足を滑らせ行方不明(本当は事故死?)となったのだ。 彼が死んだら私は生きてゆけない…表向きは家賃の金策目的で故郷に出掛けていると夫の死を隠し、偶然に冬叔(おっと)を看取る事になった九叔(カウ)道士に泣きつき死者を生き返らせる反魂の儀式に手を出した梅姨(ムイ)により冬叔(トン)は動く死者キョンシーとして復活。 だが其れは肺癌で精神的に追い詰められた九叔(ガウ)による自作自演の犯行だった。 自ら身に着けた霊幻道士の技術を使わないままに俺は死ぬのか……彼は偶々お供物漁りをしていた楊鳳(フォン)に驚いて目の前で階段を転げ落ちた冬叔(トン)を出来心から殺してしまう。


何れ自身に施術する積りだった上手くゆくかどうかも分からない反魂の儀式を誰かを実験台に試してみたかったのだと言う事実を隠す九叔(ガウ)から、儀式で必要となるのは本来子供の生贄だと知らされた梅姨(ムイ)婆さんは血迷った末に共同体に住む唯一の子供=小白(パク)冬叔(おっと)に貪り食わせてしまう。 行方を眩ませた小白(パク)を探す燕叔(イン)守衛を殺し夫の食糧とした梅姨(ムイ)の異変に気付いた九叔(カウ)道士も凶暴化したキョンシーに返り討ちにされ、息子の霊を目撃した事で復讐に燃える鬼女と化した楊鳳(フォン)は主人公達によりクローゼットに封印された双子の悪霊を解き放ち諸共キョンシーに襲いかかるが心臓を握り潰された。 


行方不明の小白(パク)を探し共同住宅を駆け回っていた主人公は楊鳳(フォン)を助けようとしたがキョンシーが投げ付けた鉄パイプで内臓を射抜かれ瀕死の重症。 夥しい血肉に塗れた梅姨(ムイ)婆さんの部屋で瀕死の九叔道士から事の次第を知らされた阿友(ヤウ)は封印していた霊幻道士の装備を身に纏い現場へと駆け付け、主人公に懇願される形で事切れる寸前の彼をキョンシー化し双子の悪霊と融合し操られる冬叔(トン)だった怪物に立ち向かう。自身の身体を生贄とし主人公(なりかけキョンシー)をアシストする阿友(ヤウ)のコンビと怪物の戦いは壮絶を極めた。最終的に左腕を操作板に食い潰された阿友(ヤウ)は死ぬ覚悟を決めた主人公と共に怪物を巻き込み20階の建物から地表へと叩き付けられ瀕死の状態。 術式から解放された怪物は取り憑いた双子の悪霊と共に魂を切り離され全身が崩れ始める……惨劇を目の当たりにした梅姨(ムイ)婆さんは夫に詫びるかの様に首をガラス片で切り裂き漸く意識を取り戻した冬叔(トン)は割れたスノードームと共に土へ帰っていった。



阿友(ヤウ)も全てを見届け咥えタバコを燻らしながら命を落とした。 やはり僕はあの時死ぬべきだったんだ。 断末魔を迎える主人公が幻視したのはオカルトなんか存在しないありふれた自分の最後。何も起きなかった世界で首を吊り警察病院の死体置き場に保管されたモノと化した彼が最後に見た光景はあれ程会いたいと願った大人になった息子の姿。 


果たして現実はどちらだったのか明らかにされないまま物語は暗転する。



追記①:お笑い要素皆無という訳では無く、かなりガサツで香港風味な阿友(ヤウ)のおこわ調理シーン(老酒を口に含んでフランベ)とか、道教が廃れた現在ならではの楊鳳(フォン)の頓珍漢にも程が有るお祈り口上(小林ゆうさん怪演) 後は香港ならではのおトイレ事情とか 有りはするのだけれどね。


追記②:最後のアレは何なのか……答えは主人公のサングラスに映る光景で判断下さい(アレは目茶苦茶怖かったし悲しかった。) ちなみに遺体安置する場合、真っ先に腐敗し白濁する眼球を保護する為に敢えて閉じるのが常識です。開けた状態で死体袋には入れませんし首吊り死体の場合線縄の跡がくっきりと残ります。



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[一言]  「各地域支配軍閥の支持と言う土台の上に協賛搭が乗っている、協賛主義国家」なんて駄洒落がありました。  少子化政策、無理やりで歪な経済政策、軍拡による支配地域拡大、民主運動や少数民族弾圧強…
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