八つ墓村/渥美清 版 77年
2019年4/6〜4/15タブレット端末にて執筆し深夜1:40脱稿 4/15深夜3時投稿
【 子供の頃トラウマになった山崎努演じる多治見要蔵の32人殺しのスプラッタシーンと呪いの切っ掛けとなった尼子落人8名の悲惨で悍ましい騙し討ちの末路の描写……あれから早○○年、所詮はフィクションだし泣くほど怖かったのは小学校だった頃の話だし、いい加減良い歳だから独りで深夜見ても大丈夫だろう。ゾンビとかサメによるグロ描写には免疫ついたしなと久し振りに視聴に挑んだのですが……無理でした(笑) 】
★先日早世された荻原健一様の冥福を祈りつつ…そういや市原悦子さんの出演作でも有ったと気付いたのはDVD見てからです。あたしゃあの双子の婆さん役は樹木希林さんが2人分演じてるもんだと長らく勘違いしてました……フィルム合成やってた訳でも無かったんですね(汗)
☆後この映画のお陰で私は夜桜がちょっとだけ苦手です。鍾乳洞で宝探しの原作クライマックスは“グーニーズ”と微妙に被ると書いたら怒られるかな。
英題:Village of the Eight Tombs
まんま“八つの墓が有る村”と読みますが英文にすると大概冗長ですね。
日本劇場公開作品.
原作は雑誌“新青年”で1949〜50年に掛け連載。
休刊によりオチ無しの未完の物語となる筈だったけど1950年年末〜51年春まで雑誌“宝石”でダイジェスト版と完結編を連載し出版。
1968年の少年マガジンでの影丸譲也によるコミカライズ大ヒットを切っ掛けに71年に角川で文庫化。その際に物語を再構成。
1976年につのだじろうによるコミカライズ版。
以降もコミカライズや映画化に舞台劇、ラジオドラマにテレビドラマ等々多数有りますが書ききれないので機会が有れば。
☆映画は見た事なくとも多治見要蔵のプラモデル…もといフィギュアは下手な萌系アニメキャラよりも有名なのかも知れません。もっと大きく動く様にして桜並木に飾れば魔除けやインスタDQN避けに使えそうです(笑)
久し振りに見てみようと思い立ったのは、偶々芸能ニュースで“昔、恥知らずにも将門塚? を悪ふざけで蹴り付け3年程仕事干された自称お笑い芸人大田光が 最近舞台の上で塚と(人間に見立てると)同じ場所を強打し緊急入院した”という自業自得な嗤える話を聞いたから 喋れば喋る程、腐り切った性根と人間としての底の浅さが露呈する癖に政治家気取りな惨めな嗤われ芸人の名前なんて書く気にもなれませんが“祟り”って言葉に連鎖して思い浮かんだのがこの物語でした。私個人は別段それが祟りだとは思わないのですが大昔の出来事とは言え、他所様の慰霊碑に蹴り入れる様な愚か者はそれこそ不幸な目に有ってしまえば良いと思います。アレをギャグで済ませられるのはハナ肇さんの銅像コントと嘘と嫉み妬みで造られた某国の汚物ぐらいのモノでしょうよ。
なお“祟りは超常現象”ですが“呪いや忌み名は心理学で人間をコントロールする必然”です。久し振りに本編クライマックス見て気付いたのですが、あのシーンで400年以上前に殺された筈の尼子の落武者が燃え落ちる多治見家を見て嗤っていたのは主犯の血脈が絶えたからでは無く“莫大な報酬の代わりに村の忌み名として祟りのガス抜きを担っていた邪魔者が居なくなった事にあります。”本当に報いを受けるべきだったのは謀を知る立場に有りながら見て見ぬ振りをし、祟られた実行犯の血脈を忌み嫌う普通の村人を名乗る恥知らずな共犯者達…主人公であり祟りの目撃者でしか無かった“寺田辰也”や金田一耕助&村の外から駆け付けた部外者達を除きこれから始まるのは偏見と恐怖による救いの無い滅び…本当の祟りが始まるのはこれからなんだよとやらかすから怖いんです。
子供が見たらガン泣き必至な壮絶な追いかけっこの末に鍾乳洞崩落⇒パニック起こして飛び出した無数の蝙蝠により多治見家(原作では田治見家表記だけどそんなシーン有りません)が失火により最後の血族・小竹婆ちゃん共々全焼し燃え落ちる…丁度そのシーン見てる時にとある半島で森林火災発生⇒初動鎮火どころか消防車が居なかったり別地域にお出掛け中とかの不手際続出で人間や家屋も焼けたと聞いて流石に引きました…とは言え森への可燃ゴミの大量不法投棄は日常的に行われ、変電所の配線が腐蝕して剥き出しだしの土地で事故が起きるのは時間の問題だった訳ですが…そういや釜山の山火事は鎮火出来たんですかね?
この映画は子供の頃から何度か挑戦したものの、あまりの怖さに結局最後まで視聴する事が出来なかった作品で私は映画とは違う展開を見せる原作小説でしかこの物語を知りません。つー訳でDVDレンタルし生まれて初めてシネマスコープ画面で堪能させて頂きました……やっぱりホラーじゃないかど畜生(泣) ちなみに自主検閲で雁字搦めとなった現在のテレビではもう二度と放映出来ないらしいです。特にCMでも子供達を恐怖のドン底に陥れた“キチ○イ=濃茶の尼(正式には妙蓮だそうです)”はあの迷台詞共々放送禁止扱いだとかで虚構と現実の区別が付かない阿呆に対しては最早殺意すら抱けます。
ほぼ同じ頃にテレビ放映&今作同様DVD化された“天変地異で住民皆殺しオチな”古谷一行版や、1951年に片岡千恵蔵主演で犯人も変更した初代劇場版もそうですが敢えて原作から色々改訂…特に里村典子の出番が消えたのは彼女のモデルが後の横溝夫人でありノリと勢いでうっかり馴れ初めを書いてしまったのと今作の主人公“寺田辰也のモデル”が横溝正史せんせ本人だからというのも有りまして…実際の所この金田一耕助のシリーズそのものが、両親の駆け落ちの末に生まれた病弱な息子で有る作者が生まれ故郷で体験した理不尽なしきたりや嫌がらせであり、結核となり人里離れた隔離病棟で差別を受けながら生死の堺を彷徨った時の恐怖を描いた物語だった事に有るのです……原作通りにされると色々恥ずかしかったんだわな。
では前振りが長くなりましたがあらすじに入ります。事実誤認や勘違い等有りましたら突っ込み宜しくお願い致します…にしても今夜は梟がやたら多いなぁ。コウモリ(家に来るのはフルーツバット…カラスぐらいのサイズです(汗))もコレ書いてる窓の外に何匹か居るし。
【 家が社会の基本となる価値観が昔話となり……とは言え平成の終わりを迎えた現在も割とそんな傾向有りますが、賃貸物件契約や就職・結婚も親族と疎遠で片親だけで育てられたり両親が既に早世してたりすると割と不便な思いを味わう事が有ります。割と欧米もそうだったりしますが実質捨てられたり孤児だったり某国の黒亥子みたいに役所の出生記録すら残ってなければ尚の事 何をするにも今よりそれが遥かに高い障壁となっていた昭和52年 “寺田辰也”にとって親族が生きて居るという事実は宝くじが当たった様なモノ だけどそれは家という古い因習=ある意味呪いに囚われる事でもあった訳です。 】
1566年、物語は全ての始まりとも言える尼子の落武者の毛利軍からの犠牲者続出な逃避行を映し出し漸く辿り着いた安住の地を眺め下ろす生き残り8人の姿から始まります。時代は一気に412年後の未来へと流れこの物語の主人公が生きる1977年の東京・羽田空港国際線へ…まるで枯木の様に草臥れ果てた誘導員=寺田辰也の行方を探す新聞広告を見た上司の呼び出しにより舞台は大阪府大阪市へと移る。
辰也には生まれ故郷の記憶が無い。三田郡川上の集落を物心付く前に母・井川鶴子と共に逃げ出し神戸市台東で幼少期を過ごすも再婚早々に母を病で失い、義父の再婚相手や母の違う4人の弟妹とも疎遠気味な彼は高校卒業と同時に整備士として独立、養父逝去を契機に東京へ移り住む。自身の出自が分からない根無し草として引け目を感じながらも6年前羽田空港の職員となった。それ也の歳を迎えた彼が上司の支持も有ったとは言え母方の祖父に会う決意を固めたのは、母の出奔を契機に疎遠となった筈の会った事も無い祖父・丑松が今も自分を探しており家族として受け入れたいという申し出が有ったからだ。だが大阪の諏訪弁護士事務所で漸く再会した祖父の急逝により辰也は村を覆う呪縛へと巻き込まれる事になる。
祖父を殺したのは、常備薬に混入していたという殺鼠剤・硝酸ストリキーニ……警察により結局誤飲事故として処理される。偶々実家の里帰りと父方の多治見家遠縁の親族である夫・野村達雄(故人)の事業を継いで大阪に出張していた若き未亡人“森美也子”と共に祖父の遺体を荼毘に付し、納骨の為に生まれ故郷へと戻る決意を固めたのは親族逝去を知った上司の配慮により有給が認められたのと長年自分を探してくれていた祖父へせめて最低限の義理を果たしたいという思い、其処には母親違いの兄“多治見久弥”と姉“春代”が主人公と会うのを心待ちにしている…しかも兄は結核により明日とも知れぬ命だと美也子に聞かされた事からだった。
列車を乗り継ぎ出迎えの車に乗せられ九十九折の山道を走り続け漸く辿り着いた生まれ故郷の岡山県三田郡川上。だが市町村合併以前この集落は“八つ墓村”と呼ばれていたと言う…28年前に起きた多治見要蔵による八つ墓村32人殺しで夫や子供を奪われた事を契機に狂い果てた“膿茶の尼”に罵られ、同じく妻子を奪われ深い恨みを抱き主人公達に嫌がらせをする“片岡吉蔵”の不穏な挙動を挟みつつ出迎えてくれたのは姉の春代と見るからに怪し気な大叔母に当たる双子の老女“小竹”と“小梅”(何かもう妖怪じみた雰囲気漂わせてますがれっきとした人間です…多分。)外観はアレだけど割と近代社会に適応してて親身な女性達に見守られ安心したのか幼い頃に体験した母の思い出を夢見る主人公……だが夢の最後に出て来た父かも知れない男=要蔵の鬼の形相に魘され飛び起きた辰也は深夜人目を避ける様に蔵へと出入りする老婆達の姿を目的してしまう。
井川丑松の葬儀はしめやかに行われた。新しい頭首として多治見家に留め置かれた辰也に好感を抱き、主人公の村案内役を勝って出てくれた美也子は偶然墓地を訪れたという麦わら帽子の観光客“金田一耕助”に請われるまま、此処が何故多治見家を中心とする封建的で余所者を極端に嫌う閉鎖的な集落となったのかを語り出す。戦国時代、集落に潜伏した尼子義孝を首魁とする8人の武士達を毛利家からの莫大な報酬に目が眩んだ庄左衛門を始め二兵衛.直吉.留一という名の村の4人の有力者が中心となり毒を盛って彼等を討ち取った事に始まる。断末魔を迎えた義孝を祟れるものなら祟って見ろと罵った彼等が報いを受けたのは数年後の事だった…発狂し7人を斬り殺した庄左衛門は最後に自身の首を切り落としたと言う。祟りに怯えた人々により尼子の屍は改めて8つの墓に葬られそれが村の由来となったのだ。
集められた親族に会う為に多治見の家へと戻る辰也と美也子を見送り、待ち合わせていた小学校校長“工藤”と合流する金田一耕助……実は井川丑松の変死に疑いを抱いた諏訪弁護士からの依頼で集落を独り訪れ調査に当たっていたのだが事態は既に探偵である彼1人動いた程度では収拾不可能な状況となっていた。
漸く受け答えが出来る迄に体調が回復した頭首=久弥が自らの後継者として指名した寺田⇒多治見辰也とは何者なのか?屋敷に集まった一癖も二癖も有る親族達。多治見家のバックアップを受けて医者から県会議員を目指したい“久野垣三郎”に出戻り娘で有る美也子に何もかも任せきりで自身は現実逃避の盆栽に励む“森荘吉”新見で運送会社を営む“吉岡太一郎”に至っては新頭首に言葉巧みに取り入り会社のバックアップと多治見家の土地に有る巨大鍾乳洞の観光地開発を企んでいた。唯一まともに主人公に接してくれたのは母方の叔父である“井川勘治”だけ
『辰也に多治見を託す』その直後再び発作を起こした久弥は帰らぬ人となった。
村の玄関口で有り若者達がたむろできる唯一の雑貨店で、店の看板娘に多治見久弥の訃報を知らされた金田一耕助は同じ様に丑松の死に疑問を抱き捜査を続ける岡山県警の磯川常次郎警部と連絡を取り多治見久弥の司法解剖を依頼。丑松同様、久野医師の書いた報告書により適当な理由で埋葬される筈だった久弥の遺体を確保……検査の結果体内から丑松と同じ成分で調整された毒物=硝酸ストリキニーネが検出された。自分の過去を知る人物が次々と目の前で死んでゆく…眠れぬ夜を過ごす辰也は再び深夜に怪しい振る舞いを繰り返す双子の老婆に疑いを抱き蔵へと忍び込んだ。蔵の奥に隠されていたのは八つ墓村全域を網羅する巨大な鍾乳洞の入口…其処に隠されていたのは死蝋化した久弥そっくりな男の死体。その正体は28年前に32人を殺害し山へ逃げ込んで行方知れずとなった彼等の父である多治見要蔵の成れの果て…
もしかしたら要蔵に毒を盛り此処に葬ったのは双子の老婆なのかも知れない。
そして要蔵が狂い出したのは蔵に閉じ込められていた鶴子が幼い辰也と共に姿を眩ませて程なくの事で有ったという。
遺体を確認した春代に口止めされたものの悍ましい事実に打ちひしがれた辰也は村を出ようと決意するが、狂人=膿茶の尼に行く手を阻まれ言い掛かりから祟りに怯える村人達に危うくリンチされる寸前で駆け付けた磯川警部と駐在達に保護された。何もかもに愛想を尽かし歩いてでも東京へ戻ろうと決意する主人公を引き留めたのは“警察の様な仕事をしていると自己紹介した謎多き男”金田一耕助だった。諏訪弁護士の依頼で彼が見付け出したのは辰也が多治見要蔵の息子では無いという厳格な証拠。
『君の本当のお父さんの事を知りたければもう少しだけ此処に居るべきだ。』
当時村の郵便局に勤めていた辰也の母・井川鶴子を見染めた村の独裁者=多治見要蔵は自身に妻子が居るにも拘らず彼女を誘拐し蔵に偽装した座敷牢へ監禁したのだと言う……その1年後に産まれた辰也を出汁に強引に井川丑松を脅しつけ莫大な謝礼金と引き換えに鶴子は多治見家に引き取られたらしい、だが辰也の血液型が発覚し要蔵は激昂…相手は誰なのか暴力を振るう様になりある日鶴子は座敷牢から脱出し村人を総動員した山狩りでも結局発見出来なかった。そしてその数日後に起きた要蔵による村人虐殺事件で全ては有耶無耶となったらしい。
『父親が誰だろうが構わない。せめて死ぬ前に娘が守り抜いた孫に一目でも良いから会ってみたいんだ。』
叔父の井川勘治と面会し彼から何故丑松が辰也と会いたがっていたのか本当の真相を聞かされた主人公は美也子と共に座敷牢を抜け出し密かに逢引を重ねていた鶴子の交際相手を知っているという出張準備で中々時間が取れないという工藤校長に強引に面会するがそれはとても長い話となるから久弥の初七日の後で…という事となった。
同じ頃、事件の有力容疑者として硝酸ストリキニーネを管理していた久野医師を疑い監視を続ける磯川警部達と別れ一旦別行動で関西全域を動き回り調査を続ける金田一は、祟りを利用し毒殺を続ける犯人は恐らく久弥の初七日を狙い多治見家の誰かを狙うかも知れないと警備を頼み込むが、毒殺されたのは命を狙われる可能が無い筈の“工藤校長”だった。直後に辰也を災いだと罵り殺せと喚き立てていた“膿茶の尼”も絞殺遺体で見付かり、深夜相変わらず要蔵の御参りを欠かしていない双子の老婆達も鎧武者に扮した何者かに洞窟で襲われ“小梅婆さん”が行方不明となる。攫われた老婆を探して一晩中洞窟を歩き回る主人公が出食わしたのは村に戻り病院から逃げ出した久野医師を磯川警部と一緒に追っていた金田一耕助だった。結局小梅婆さんは地底湖で絞殺された状態で見付かり磯川警部は何者かに毒殺された久野医師を見付けだす。
彷徨っている最中に村の中で何者かにより広められたデマにより、主人公が連続毒殺事件の犯人にされてしまった。辰也を殺して八つ墓大明神に捧げ祟りを鎮めようと動き回る暴徒達により多治見家は踏み荒らされ、春代や小竹の婆さんもそれぞれの部屋に軟禁されているらしい。テレビ局のヒステリックなスクープ報道を受け、事態を沈静化させる為に県警から応援を呼んでいるが山奥の此処に到着するまで時間を稼がないと主人公がどうなるか分からない。小梅と久野医師の殺害の事実は応援が到着するまで伏せられる事になり丸2日洞窟に潜伏する事になった主人公の唯一の味方で有り村人達に見張られていない美也子が食糧や飲み物を差し入れながら共に応援到着まで洞窟に出入りする事になった。
気分転換が必要だと美也子に誘われるまま主人公が産まれた場所だと子守唄代わりに母から聞かされた洞窟を歩き回る。まるで黄泉路の道行きの様に3人の死体が転がる鍾乳洞を歩み続け遂に鶴子が恋人である隣街の小学校教師と逢瀬を重ねたという“龍のアギト”を見付けだした2人は先の見えない絶望感と不安感から激情のままに身体を重ねた。事件が解決したら何もかも投げ捨て2人でこの村から出て行こう…宵闇が迫る中自宅へ戻る美也子を見送り鍾乳洞の奥へ戻る主人公が深夜目を覚ましたのは此処には居ない筈の春代の悲鳴が聞こえたからだった。深夜県警応援部隊到着により軟禁状態から開放された春代は辰也の無事を確認し、あの日主人公がこの村に到着する前に久弥.小梅.小竹.春代の4人で話し合った真相を語る為に洞窟に入り物陰に隠れていた何者かに襲われ指の一部を食い千切ったものの内臓をメッタ刺しにされたのだ。
実は最初から寺田辰也が多治見家の血を1滴たりとも引いてない事を知っていた4人。莫大な資産を持ちながらも忌み名=生贄として村人達から恐れられ嫌われていた彼等は疲れ果てていた。だからこそ敢えて血の繋がらない辰也を教育し頭首に据える事で祟りを終わらせ、欲を丸出しに多治見家に寄生しようと企む親族達の悪意を断ち切ろうと考えたのだと言う。姉としてではなく1人の女として主人公を助けたかった……全てを語り終え事切れた春代を抱き締める辰也の前に何喰わぬ顔で食糧と水を持ち現れた美也子の左手には深い傷が有った。連続殺人犯の正体に漸く気付いた辰也とまるで化け物の様に姿形を豹変させ主人公に血の涙を流しながら襲い掛かる美也子。洞窟の外では漸く暴徒の説得に成功した金田一&磯川警部率いる警官隊と村まで駆け付けた諏訪弁護士により連続殺人犯の正体と寺田辰也の正体がフラッシュバックの様に入れ替わり立ち代わり明かされる。
まるで何者かに操られるかの様に始まった実家の没落と、野村家から託された企業の不渡り…追い詰められ度々理性を失った彼女は…実は久野医師が計画し準備を進めていた計画を受け継ぐ形で莫大な資産を持ちながらも祟り持ちとして村人や近隣に嫌われ恐れられた多治見家一族の毒殺による乗っ取り計画を始めてしまう…だが祟りに操られた彼女はまさか自分の祖先が400年以上前に多治見家の初代に殺された尼子義孝の直系の子孫だとは知らなかったらしい……彼女を狂気に導いたナニかが有ったのだ。
龍のアギトまで追い詰められた主人公を救ったのは突如始まった洞窟崩落事故だった。落ちて来た鍾乳石の下敷きとなり美也子は即死するがパニックを起こし飛び交う無数のコウモリ達は洞窟の出口へ殺到…夕闇を覆い尽くすソレは多治見家に集まりだす。自分が何もかも皆に話さなかったせいで皆んな死に或いは殺されたのだ……自責の念に駆られ気が狂った小竹婆さんは半ば廃墟と化した多治見家に入り込んだ無数のコウモリが蝋燭を蹴倒し翼に点いた火でパニックとなり室内を燃え上がらせようと最早何が起きているのか理解出来ぬまま犠牲者達に詫びるかの様に念仏を唱え続ける。デマに踊らされた自分達が何を仕出かしたのか漸く理解し騒ぎ立てる村人達を悲しげに眺める金田一耕助。最早呪われた多治見家は存在しない、忌み名を与え生け贄にしてきた彼等の最後の1人が絶え惨劇がテレビで報じられた事で彼等に降り掛かる祟りは始まったのだ。庇護者を失い今度こそ村は滅ぶのだとね。
美也子の最後を看取り洞窟を彷徨い歩きやっと尼子の落武者達の墓の近くに隠された秘密の出口から外へ出て燃え落ちる多治見家を目撃する主人公。村を見下ろす山の頂上では400年以上前に殺され墓という名のくびきを説かれた尼子の落武者達が嘲り笑う……幸いにしてソレを目撃したのは誰も居なかった。
事件が終わり依頼主で有る諏訪弁護士と歓談する金田一耕助。寺田辰也の本当の父は亀井陽一と言う人物で有り、逃げ出した鶴子がその後どう生きたのか子供の存在も知らぬまま現在は教師を辞め東京で資産家として成功を収めているのらしいがあの事件を契機に丸で憑き物が落ちた様な主人公には事実を伝えなかったのだと言う…彼は自分を受け入れてくれようとした家族を全て喪った。それを忘れる事は一生出来ないだろうし最早自分が根無し草だと卑下する事も無い筈だ…そもそも亀井陽一の先祖もどうも尼子と関わりが有るらしいと聞いた段階で調査を止めたのだと笑う。今更不幸な形で終わった事件には深入りしたくないしね。
同じ頃東京に戻り再び国際線ターミナルで働き始めた主人公。嘘付きの探偵に本当の父親は海外に渡航しそこそこ成功しているらしいのだが今更会わない方が良いのだと説得され反発を感じない自分の心境の変化に驚きつつも時折海外へ向かう旅客機を無心で眺める様になっていた……あの空の向こうに父は居て僕の背後には受け入れてくれようとした家族が居た。だから良いじゃないか。
追記:出来りゃ未だDVDがブラウン管テレビ仕様の“獄門島”や“悪魔の手毬唄”とか“女王蜂”や“病院坂の首括りの家”なんかもデジタルリマスター&シネマスコープサイズで堪能したいとこですが…フィルム残ってるかな?




