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獄門島/石坂浩二版 77年

2019年4/27〜5/2タブレット端末にて執筆し脱稿 同日朝 割り込み投稿

【 身も蓋もない話から始めますが私は子供の頃親と一緒にこの映画見てて網元(あみもと)って何がどう偉いのか全然解らず瀬戸内海の海賊が何故.復員服(にほんぐん)なのかとかそもそも海賊(笑)って時代錯誤(バイキング)だろうがと歴史背景知らずに爆笑したり頭が御花畑(パンパカパーン)な三姉妹が何故殺されなければならなかったのかとか全然理解してませんでした。ただ人が殺される=死体(モノとなったソレ)が怖かったんだよね……という訳で今では存在せずほぼ死語な職業?や慣習の説明から始めたいと思います。まあ意味知ってたりそんな話に興味が無いお客様は適当に読み飛ばして下さいな。 】


★ついでに当時洋画劇場では大概“犬神家の一族⇒今作⇒八つ墓村”の順番で3週連続放映でしたから(たまに手毬唄/首括りの家/女王蜂が入る)何故に加藤剛演じる等々力警部が毎回初対面みたいな対応するのか子供心に不思議でした(笑)白拍子も長年.民間霊媒師(ユタ)(別名沖縄の電波さん…祝女(ノロ)は女性神官…沖縄では神事司るのは女性限定.明治時代以降に漸く神社や寺院が台頭)だと勘違いしてました…まあコッチはあながち的外れでも無いかな。


☆犬神家=橘警視役で獄門島=等々力警部役だったのね(汗)芸風同じだから全然気付きませんでした。


日本劇場公開作品.

原作は横溝正史により昭和22年〜23年

(1947〜1948年)まで月刊宝石で連載.

1971年角川文庫として出版.

以降映画/ドラマ/コミカライズ/舞台化も多数に上るし時代背景や

解釈の仕方で犯人すら違ってますので此処では書きません。


☆惜しむらくは殆どの金田一耕助シリーズ同様、TV放映前提に制作されてますのでブラウン管サイズで撮影されてます……色んな意味で勿体無いです。



 高校生の頃に読み耽り昭和〜平成と様々な役者さんが演じた、そして恐らくは令和に入っても新しい解釈で作られるであろう古典的な作品を敢えて取り上げようなんて思い付いたのは結構良い歳になっても知らない事が多いもんだなと改めて思い知らされたからです。まさか某局の5歳児(チコちゃん)に怒られるたぁね(苦笑) 網元(あみもと)=てっきり漁業協同組合会長の昔の役職名だと思ってましたからこの映画の感想書く前に色々調べて瀬戸内の島々でその地位が何故1940年代後半まで絶大な権力持ってたのか漸く理解しました。ついでに戦後どうして瀬戸内海で海賊が猛威を奮っていたのかも色々調べる事になったけど。てっきり与那国や宮古の同輩みたいに大陸や東南アジア経由で食料品や嗜好品密輸入してる連中みたいなモノだと思ってたんだよ。


海版の豪農と書いたらソレで終わりそうですが、兎にも角にも戦争が無い江戸中期…それまで水軍みたいな連中除いて専ら個人経営に近かった水産業は流通の発達と人口の急激な増大で転換期を迎えます。 通貨も兼ねる米の増産で需要が増え続ける干鰯(ほしか)(鰯加工した肥料)を確保する為の定置網を始めとする大人数を投入する必要が有る漁法や海苔・天草・牡蠣養殖に塩の生産。中型(カツオとか)&大型魚(クジラ)の市場需要に答える為にそれぞれの地方で集団化&中央集権化が進み網の大型化と漁業権の寡占化⇒それが網元(あみもと)で小作人に当たるのが網子(あみこ)。 網元は多数の漁船や網を購入管理し、網子を雇い入れる形で漁業を営み網子が稼ぎ出した税収を村長経由で領主へ纏め支払う役割を担い、やがて網子の生活相談や婚姻関係 (大工のお仕事同様旦那が海や川で事故死⇒寡婦の再婚口利きとか残された家族の支援とかね…) にも領主以上に関わる様になります。


その慣習は廃藩置県が始まった明治⇒大正⇒昭和に入っても続き、化学肥料の発達により干鰯(ほしか)の需要は減ったものの食糧輸入が困難だった戦争中は貴重なタンパク質の供給源だった漁業が転換点を迎えたのは戦後になってからの事。 魚群探知機と化学繊維で作られた腐らない網の導入により個人経営でも成り立つ様になったのとGHQ(せんりょうぐん)による漁業権の移譲と協同組合結成命令 敢えてこう書きますが集団農場化により網元の権威は失墜し衰退。 中には蓄積した資産や人材運用して政治家や実業家に転向する例も有りましたがその殆どは事業転換に失敗し1960年代頃には表舞台から姿を消す事となりました。 まあリアルにそれを見ていた昭和ヒトケタ世代でも都心部で暮らしてた人々には既に無縁な話だったかも知れませんね。


 そして時代錯誤にも程が有る海賊が瀬戸内で猛威を奮ったのは敗戦直後。 GHQによる食糧政策の失策と “それまで民生用にイギリスから安定供給されていた石油” や化学肥料等海外依存商品の輸入禁止により1950年代まで続いた大戦末期以下の深刻な食糧&エネルギー供給不足は北海道や沖縄を除く本州に世界大恐慌以上の混乱を招き入れる事態となります。 イギリス・アメリカ両海軍の管理地域となった瀬戸内海も忽ち無法地帯と化し連絡船の荷抜きや港湾施設からの船を使った窃盗や略奪が横行、賊の主力となったのは故郷が空襲で消え自暴自棄となった復員軍人達やとある国から潜り込んで来た火事場泥棒達です。 自尊心や倫理感を失った惨めな連中の中には今作で出てくる傷痍軍人に扮した復員詐欺や成り済ましも横行 そういや平成に入ってからその頃やらかした遺族への義援金横領や慰霊碑建立詐欺が発覚し悲惨な事になった○○党の国会議員も居ましたっけ名前忘れたけどさ それらが漸く駆逐され始めたのは日本が自治権を取り戻し経済が上向きになってからの事です。


本職は占いや祭祀での踊り子、但し個人によっては非合法の売春にも関わっていたらしい白拍子についてはこのサイトでも戦国史関係で散々ネタになってますからオミットするとして住民の移動が制限された江戸時代〜昭和40年代(1960年代後半)までをピークとした村や自治体公認の精神障害者の存在と差別、座敷牢の存在に中々発覚しない“ある種の名誉殺人”とかは何故そんな人物が多かったのかも含めて深く掘り下げると物凄く怖い話になるから(いやまあ、海外や沖縄でも昔それ也に多かったけど村や島が元々外に対し閉鎖的だったりすると“間違い”も増えたのですよ 中には昭和辺りまでガス抜き兼ねた乱交⇒産まれた子供は集落の共有財産(はなぞのメリーゴーランド)みたいな慣習が当たり前の所も有ったしさぁ で誰が遺伝子上の親か兄妹か解らないから………以降自己検閲(笑))ここら辺りは説明しません(汗)お察し下さいな。


そういやこのシリーズでお馴染みな集落や家族に迷惑掛けない為に“死んで詫びる”ってオチは明治に始まり〜昭和を最後に廃れた概念なのかもね。 という訳で独自解釈有りなあらすじへ移ります。 あ、前回ロサンゼルス決戦でシリアスモードは色々使い切ったから多少ガス抜き入ります。



【 古くは源平時代から瀬戸内海を闊歩する海賊達の本拠地として使われた八門島は、江戸時代とある藩領の流刑地として悪名を轟かせた事から何時頃からか獄門島と呼ばれる事になった。面積は僅か2里(8km平方㍍未満)流刑者への差別と海賊に対する恐怖…全てが昔話となった今も本州を敵視し有象無象の見えない偏見と戦うその狭い島で網元を営み争い続ける2つの鬼頭家“本鬼頭”と“分鬼頭”……結局の所昭和21年に島の住民を震撼させた不可解な連続殺人を引き起こしたのは、時代の変化に取り残された因習が未だ残るこの島の死せる独裁者が遺した愚かな執念でしかなかったのかも知れない。 】


☆映画では警視庁の「よし!分かった‼(でも本当は分かって無い(¯―¯٥))」の迷台詞と豪快に龍角散を口から吹き出すオジサンこと等々力大志警部が何故か岡山県警に左遷され出張ってますが原作では岡山県警の磯川常次郎警部が担当でした。


 昭和21年(1946年)日本は未曾有の混乱期にある。 広島や長崎ではあの熱線(ピカドン)を生き残った筈の被災者や人命救助や復興支援に駆け付けた人々の間で原因不明の白血病が蔓延し早世する者が続出。 GHQの命令により軍務経験者の公職追放と軍人恩給廃止(警官や公務員が居なくなり全てが廻らないから結局1953年復活)により治安と行政サービスが悪化し、各地で粗暴犯による略奪行為や強盗殺人事件が続出するが占領軍の命令で血生臭い案件に対する全ての報道や反占領軍発言は黙殺されたそんな時代でした。


多くの兵士達が飢餓と疫病で戦没したニューギニア戦線を辛うじて生き残り復員したこの物語の主人公にして傍観者(しりつたんてい)である“金田一耕助(きんだいち こうすけ)”も、当然ながら他の者達同様に着の身着のまま恩給無しで軍を放り出されたのだが、徴兵期間中もアメリカへの留学経験と戦前私立探偵としての能力や活躍を買われ各戦線を転々とした経験=人脈を伝手に様々な理由で表立って動けない人々や最悪の時代を生き抜く戦友達の依頼を受け日本中を歩き回る日々を送っている。 元々アメリカ留学を契機に故郷とは縁切り状態で両親も既に他界、唯一の拠点だった東京の探偵事務所も空襲で灰となった彼は以降文字通り宿無(スナフキン)し或いは能登麻美子さん演じる某アニメ・継続高校チームのミカさんの様な飄々とした根無し草生活を送る事となる。


9月下旬 日本文化の全面否定や洋装推進を進めるGHQの居丈高なやり方に逆らうかの様に伸ばし放題の髪をお釜帽で隠しシワシワの単衣と袴の時代錯誤な書生姿で金田一が岡山県笹丘を訪れたのは、行政サービスの麻痺により各地で戦死広報や復員情報が途絶えた最中に原因不明の病に倒れた友人雨宮の依頼で彼の親友だった“鬼頭千万太(きとう ちまた)”の病没を伝え彼の書き残した手紙を遺族に渡す為であり内密に口頭で直々に頼まれた殺人予告を防ぐ為でも有った。 挙動不審(あきらかになりすまし)な傷痍軍人から港の場所を聞き出し供出先から千光寺に返される釣鐘を積む真最中な獄門島行きの船の出発に何とか間に合った主人公(きんだいち)が其処で出逢ったのは釣鐘の受領に来た島の住職“了然和尚(リョウネンおしょう)”と本鬼頭分家の若き後継者“鬼頭一(きとう ひとし)”の生還と復員を伝えに来た“親切な傷痍軍人”を本州まで見送りにやって来た“荒木真喜平(あらき まきへい)村長”にドジョウ髭の漢方医“村瀬幸庵(むらせ こうあん)”何故か和尚に気に入られた金田一は勧められるがまま千万太の葬儀に参列する為、共に獄門島へと向かう。


 獄門島へ向かう船は偶に立ち寄る郵便船を除いて乗組員ごと戦争に徴用され帰って来ない、かつては漁業と塩田で成り立っていた島の現状は文字通り破綻寸前。全身が錆付き今にも沈みそうなボロ船1隻と体力頑健だけど高齢のために徴兵を免れた塩作人を兼業する“竹蔵(たけぞう)”他数人のオジサン達が海に関わる働き手であり戦力で有る。戦争が終わり駐留していた僅かな軍も解散し島を離れ元々島に居た男達は徴兵され未だ故郷に戻れないしその大半はもしかしたら帰って来ないかも知れない。最悪廃村も考えないといけない程切迫した状況下、それ迄島の独裁者として君臨して来た網元の本鬼頭=“鬼頭嘉右衛門(きとうかえもん)”が死に、本鬼頭に遺されたのはと(さよ)の死とその直前に知らされた事実を切っ掛けに発狂し座敷牢の住人となったその息子“与三松(よさまつ)”とその介護と本鬼頭屋敷の維持管理を出征中の兄“(ひとし)”に代わり行う予三松の歳の離れた従妹“早苗(さなえ)”と嘉右衛門の使用人兼妾で、自分を殺し早苗の副官の様な立場にあたる訳有な女性“勝野(かつの)


そして与三松(よさまつ)の妾として本鬼頭に入り彼同様に発狂し早世した旅役者=小夜(故人)の忘れ形見で有る3人の年子にして美貌の色狂い“月代(つきよ)”“雪枝(ゆきえ)”“花子(はなこ)”である……本来の後継者は引揚げ船で非業の死を遂げた“千万太(ちまた)”だったが最悪でも能力的には分家で有る所の早苗(さなえ)(ひとし)が本鬼頭を継いでくれれば安泰の筈。だが本鬼頭の相続権を持つのは対外的には健常者扱いとなっている三姉妹……ぶっちゃけこの色々愉快に壊れまくりな姉妹が変な男を抱え込み権力握れば全てオシマイで有る。雨宮が懸念した通り碌でもない事態は有り得るかも? 和尚の勧めも有り寺に滞在する事になった金田一は本鬼頭(ほんきとう)と敵対する“分鬼頭(わけきとう)”の調査を始めた。ちなみにこの時点で未だ正体を明かしていない主人公の情報源となったのは島唯一の理髪店を経営する俳句と昼寝が大好きな清十郎(セイジュウロウ)の1人娘で探偵業に憧れる“お七さん”である。


 分鬼頭(わけきとう)の若き党首.与四郎(よしろう)が海難事故で亡くなり血が途絶え本鬼頭の嘉右衛門が死去するまで権力闘争に負け続け正直ジリ貧だった分鬼頭(わけきとう)は江戸時代に本鬼頭と袂を分かった名ばかりの縁戚関係を持つ敵対勢力。筆頭は妖艶で矢鱈強かな島内では鬼頭の淀君と陰口叩かれる後妻“鬼頭巴(きとうともえ)”のみで分鬼頭の唯一の直系は中々表立って出て来ない高齢の“儀兵衛(ぎへえ)”のみ。祖父と孫程離れたこの2人に子供は生まれなかった。だから島で絶大な権限を持つ本鬼頭との再融合し権威を取り戻そうと考えた彼女の切り札は、解散した駐留軍で半ば慰み者と化していたなよなよした美少年“鵜飼正蔵(うかいしょうぞう)” この島唯一の若者で有りその本質はまんま某SCHOOL・DAYSの伊藤誠(なかにはなにもいませんよ)な正蔵は三姉妹を相手に付かず離れずな関係を築き事態は最悪な状況に突き進む。


金田一が泊まり込む部屋の隅に飾られた年代物の屏風に貼付けられた色紙に“俳号=獄門”という名で達筆に書き写された宝井其角(たからい きかく)松尾芭蕉(まつお ばしょう)の三つの俳句と歌舞伎・娘道成寺をなぞらえた様に次々と殺される三姉妹……最初に命を奪われたのは最年少の“花子”提灯の灯りが辛うじて足元を照らす暗闇の中で振袖姿で頭を割られ絞殺された彼女の死体は寺の境内に逆さ吊りにされその光景は宛ら血抜きされる雉…無情にも其処に豪雨が降り注ぎ証拠も消える。寺からは同時に食糧も荒らされ其処に有るのは軍靴の跡…必死に事件解決に当たろうとした金田一は、証拠は無いけど島の外からやって来た不審者の仕業に違い無いと思い込んだ髭の駐在“清水巡査”により無理矢理留置所に放り込まれる。


深い霧と荒天により電話連絡を受け、本州から駆け付けた岡山県警の捜査官到着は遅れに遅れて昼過ぎとなり船酔いでダウン気味の“等々力警部”と御守役の“阪東刑事”が本鬼頭屋敷の一部を捜査本部として借受けた時には既に事態は手遅れ、唯一残された煙草の吸殻から疑いを掛けられたのは座敷牢に閉じ込められた与三松(よさまつ)次いで疑われたのは鍵を管理する早苗(さなえ)、そして寺へ来る様手紙を書いた正蔵(しょうぞう)だったが決め手に欠ける。“雪枝”が姿を消し彼女を探す“幸庵”が軍服姿の男に襲われた。姿を晦ました彼女は霧の中で絞殺され釣鐘の下から発見される。漸く疑いが晴れ駆け付けた金田一と“竹蔵”の協力で重くて動かせない筈の釣鐘にどうやって彼女を入れたのかというカラクリは呆気なく見破られたものの、手違いで再び倒れた釣鐘に押し潰され“雪枝”の首は黄昏の世界で血飛沫と共に空を舞う。


 荒天の中捜査員の増員と鑑識を応援に寄越して欲しいと電話口で粘る“等々力警部”に知らされたのは数日前に海上の包囲網を逃れ瀬戸内海の何処かに潜伏しているらしい軍服姿の海賊の情報…数日後漸く天候は回復し等々力警部をリーダーとした山狩りが始まった。同じ頃次々と殺される姉妹達の無残な最後に色々思うところが有ったらしい長女“月代”は真犯人を呪殺するために旅役者であり晩年は呪い師だったらしい母親(さよ)由来の白拍子衣装でお祈り堂に籠もる。本当に2人を殺し不気味に飾り立てた犯人は海賊だったのか? 疑念を抱いた金田一は漸く分鬼頭党首“儀兵衛(ぎへえ)”と面会し彼の口から意外な真相を知らされる……そもそも分鬼頭は本鬼頭と端から対立なぞしていなかったのだ。


崩壊の始まりは約20年前の事、定期的に瀬戸内海の島々を回る旅芸人=後の小夜(さよ)に入れ込んだ与三松(むすこ)嘉右衛門(ちちおや)の対立からだった。本鬼頭の棟梁(かえもん)の妾でも有った小夜(さよ)与三松(よさまつ)の歪んだ三角関係から生まれたのは心が病んだ娘達。何故まともな子が産まれないのか…疑心暗鬼に駆られた父と息子の対立は島の首脳陣を巻き込み最早どうしようも無い状況となっていた。親子に嬲られ心を病んだ小夜は精神的な自殺を図りやがて死に、全てを知った与三松(むすこ)も後を追うかの様に心を病んだという…元々下半身に理性など無かった嘉右衛門(ペドフェリア)は同時に使用人として雇い入れた行き倒れの遍路の娘=当時少女だった勝野(かつの)にも手を出しておりやがて(ひとし)早苗(さなえ)が生まれるが醜聞を恐れた了然和尚.荒木村長.幸庵漢方医により子が成せない事がハッキリしている分家へと預けられたのだと儀兵衛(わけきとう)は穏やかに語る…後継者が居なくなった分鬼頭も血が淀んでしまった本鬼頭も最早未来は無いのだと……。


暗鬱たる気持ちを抱え分鬼頭の屋敷を辞去した金田一は偶々道端で殺された花子が愛用していた髪飾りを拾った“床屋の娘お七さん”と再会、此処には何も無い…だからいずれ広い世界を見る為に島を出るのだと明るく語り探偵の仕事に興味を抱く彼女との他愛もない会話から殺人事件のトリックを暴き思わずはしゃぎ出す2人の前に現れたのは逃走中の海賊だった。追い縋る警官隊やとある事情から海賊に食糧を提供していた早苗も巻き込み(ここら辺りぶっちゃけ推理のミスリード誘う為のオリジナル脚本だから伏せます)始まる追跡劇とフラッシュバックするかの様に映し出される“月代(つきよ)”の呪詛……まるで呪われたかの様に海賊は元高射砲陣地だった摺鉢山から転げ落ち命を落とした。だが当初は威嚇射撃の弾が当たったのだと思われた海賊の死因は後頭部を鈍器で殴られた事による脳挫傷だと発覚する……あの現場にもう1人誰か居たのだ。


 そして清水巡査に警護され誰も入り込めない筈のお祈り堂で、呪詛の儀式を続けていた“月代(つきよ)”も絞殺され遺体を飾り立てられるかの様に萩の花弁の造花が振り掛けられており座敷牢に閉じ込められいた筈の“与三松(きょうじん)”も行方を眩ませた。主人公(きんだいち)とは違う視点から事件の真相に気付き犯人達を庇う為、敢えて与三松を逃がした早苗は何もかもこの村を覆い人々を縛り続けるしきたりが悪いのだと泣き叫び金田一(たんてい)にこの島から連れだして欲しいと抱きつくが…せめて死者の代弁者として事件の解決を図りたいと決心した主人公は竹蔵や等々力警部の協力を仰ぎながら次々と不可解な事件のから繰りを解き解していった。


花子を手に掛けた張本人で有り荒木村長や幸庵に手伝って貰いながら“何者かに絞殺された雪枝の遺体”を釣鐘の中に放り込んだ犯人で有り海賊殺しの容疑者でも有る“了然和尚(りょうねんおしょう)”を追い詰める金田一……同時に探偵から臨時の助手として事件解決の協力を要請された早苗は“本当は名誉殺人を躊躇っていた了然の代わりに…そして本当の息子.(ひとし)と娘.早苗(さなえ)の未来の為に雪枝と月代を殺した犯人=勝野(おかあさん)”と対峙する。何故彼女達は死ななければならなかったのか? 既に死んだ筈の嘉右衛門の妄執に振り回される形で起きた事件の真相を聞かされた等々力警部達は愕然とするが運命のイタズラ或いは呪いそのものに満ちた陰惨な名誉殺人は結局の所、全くの徒労にしか過ぎなかったのだ。


“生活物資を運んで来た郵便船から届いたのは、本鬼頭最後の血を引いた鬼頭一(きとう ひとし)の戦死広報”


彼の生還を知らせる代わりにそれ也の謝礼を騙し取った復員詐欺師の悪意。勝野が送った手紙から嘉右衛門による名誉殺人の計画を知らされ死の床に有りながら母親の違う妹達を守ろうと絶筆を書き記し親友に託した“鬼頭千万太”の行動も犯罪者として憎まれ怖れられるのを覚悟の上で三姉妹と偶然娘達の殺害を目撃した海賊を手に掛けた了然和尚と勝野の行動も何もかも無駄だったのだ。弟子の了択(りょうたく)に寺の引継ぎを行い心折れた了然と勝野は皆の裏をかいて屋敷を抜け出し崖から身を投げる。かくして戦後の混乱期に起き島の住民達を振り回した連続殺人は表沙汰にされる事なく幕を閉じる。


悩んだ末、淀みきった本鬼頭の血を継いだのはこの島で(かつの)(ひとし)…そして愚かしい名誉殺人の犠牲者達の菩提を若き住職・了択(りょうたく)と共に守る事を決めた“鬼頭早苗(きとうさなえ)” まるで憑き物が落ちた様に心を入れ替えた“鬼頭巴(きとうともえ)”は結局役立たずだったヘタレ“鵜飼正蔵”を島から放逐。事件の後始末を終え到着した郵便船に便乗し島を離れる等々力警部や阪東刑事と同行する金田一を見送りに現れたのは“お七さん”と“竹蔵”に“清水巡査”複雑な思いから直接の見送りを断念した早苗と了択和尚は高台に有る千光寺に漸く建立された釣鐘を突いて見送る……やがて小さな島は波間に隠れ見えなくなった。


何か気の利いた演説を始めようとして再び船酔いに苦しみ始めた等々力警部を慌てて介抱する阪東刑事と旅行鞄の何処かに仕舞った筈の酔い止め薬を探す金田一のドタバタを映し出し物語は終わります。


追記:ところであの三姉妹は本当に壊れていたと思いますか…私はそうは思いません。分鬼頭の巴からけしかけられた美少年=鵜飼正蔵を姉妹でチヤホヤしても彼女達、心も身体も許してすらいないのですよ ヒロインの早苗にすら常に疎んじられていた姉妹にして見れば自分達以外は全て敵……彼女達にとっての命綱であり此処から自由に出して貰えるかも知れない数少ない味方は鬼頭千万太で有り鬼頭一だったのかもと考えると敢えてキチ○イを演じた理由が見えてくるし彼等が死んでいたとしたら生きている理由が無い……そう考えていたのかも知れません。





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― 新着の感想 ―
[良い点] ありがとう御座います。 頭の中で<犬神家の一族><獄門島><悪霊島>がごっちゃになっていたのがある程度整理出来ました(笑) [気になる点] 文章だけみると、未プレイでしょうが「うみねこ」の…
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