とうもろこしの島 14年
2019年3/30〜4/3タブレット端末にて執筆し脱稿 4/3 深夜投稿
【 別名“精霊の集まる場所、或いは黄泉乃邦の入り口とも揶揄される”ジョージア(ロシア語読みでグルジア)共和国とロシアの支援受け独立したアブハジア共和国が未だ領有巡って争うアプシニィ地方のエングリ川中洲を舞台に繰り広げられるアブハジア人貧農爺様とそろそろ思春期始まる年頃な孫娘の泊まり込みダッシュ島生活をほぼ台詞無しで描いた“マンガ日本昔ばなし”みたいな作品でした テーマがテーマなだけに他所様へ一体どんな映画だったか……本当に説明に困る物語です。 】
★爺様の鋭い目付きが微妙に勝新太郎ポイッのと孫娘が無防備エロなのが地味にクる作品です……人生の意味?一応其れなりに生きて来たけど知らんがな(呆)多分終わりが見えない限り死んでも分からないソレをどうこう書き連ねる積りは有りません。
原題:Simindis Kundzull
多分グルジア語のラテン語表記で“とうもろこしの島”
英題:CORN ISLAND
ジョージア共和国(グルジア語でサカルトべロ)
ドイツ.フランス.チェコ.カザフスタン.ハンガリー共同製作.
個人出資&企業も加えると延べ14ヶ国が参加.
日本公開2016年.単館イベント上映.
そもそもこんな爺様が孫娘と一緒にトウモロコシ育ててるだけの地味な映画に興味を抱いたのは偶々動画サイトで予告編見てしまったのが切っ掛けです……なんぼその年のアカデミー賞や海外映画祭で外国映画賞ノミネート作品だと絶賛されようが、人気の無い公園の茂みや高速道路の橋脚にダンボールハウス建築して転がってたりするタイプの目付きが野生動物そのものな貧乏拗らせた爺様のヒューマンドラマをはいそうですかと素直に見る筈は有りません(苦笑)まあヒロインの無自覚であまりに無防備なエロとチラリズムが無けりゃ手も出さなかったと思います。
大体ジョージア自体…以前はロシア語読みのグルジアだった所が民族浄化がどうこうやらかし、北京オリンピックのドサクサに紛れて始めた南オセチア紛争(当事者により多数の別名有りでジョージアの目的は少数民族の絶滅或いは追放だったけど返り討ちにされた。)でロシアと敵対関係となり読み名変えて欲しいと大使館から要請された経緯が有り…ヨーロッパの何処に有るか分からないお客様が大多数だろうしロシアとそのお仲間以外独立国家として認めて無いアブハジア共和国に至っては知ってる奴は日本じゃ現役の受験生ぐらいのもんじゃないでしょうか?
アタシが学生だった頃は未だギリギリでソビエト連邦だったしねぇ。その後ユーゴスラビア筆頭に何処もかしこも民族紛争で国が出来ては潰れだったから尚更です。
2019年4月現在もNATOとアメリカの軍事&経済支援受けてるジョージア共和国と同じくロシアの軍事&経済支援受けてるアブハジア共和国が領有巡って小規模の戦闘や挑発行為を繰り返すエングリ川流域。ネットで調べてみると冬は長く大量の雪が降り積もり雪解け水と春先の降雨量が其れなりに多い所で湿度が高く黴に弱い小麦の生育にはあまり向かない地域らしく、専ら果樹とワインの生産が主な生活の糧となっている様です。パンの代わりに食べられてるのがコーンブレッド…とは言えアメリカの家庭料理である粉にした玉蜀黍を使った代用パンケーキでは無く映画見ている限り硬くないけど水分足りないベーグルモドキみたいなモノです。
戦争に負け追い払われた20万近いグルジア系民族だけでなく元々住んでいたアブハジア系民族もグルジア人に多数が殺された1989年頃から度々勃発する民族戦争により推定12万人程が国を棄てヨーロッパ各地の難民キャンプや不法入国者としてドイツやフランスに潜り込んでおり農地は取り残された20万程のアブハジア系に託される事になりました。生育に必須な水の供給が容易で栄養豊富とは言えわざわざ降雨時の洪水被害のリスクが高すぎる川の中洲でトウモロコシを育てるなんて行為は農地の個人所有を認めず食糧を始め何もかも配給制だったソビエト連邦時代を最後に徐々に廃れている風習らしいのですが……まあ寓話じみた物語だしあまり深入りするとロクな事にならない様な気がしますので軽く流します。だいたい撮影協力に当のアブハジア共和国やロシア共和国が入ってない辺りでお察し下さいな。
私がこの映画見てて感じた印象は沖縄=本土復帰を契機に一気に廃れた黙認耕作地(米軍基地施設内の空きスペースを許可貰い耕作、地主や元住民限定でしたが例の9.11テロ事件契機にチェックが厳しくなった…偶に実弾射撃演習の流れ弾が飛んで来る(汗)幸い撃たれて死んだ奴は復帰後は皆無だけれど……それ以前は色々とね…)のソレでした。まあそれ以外にも小学生〜割と最近までちょくちょく見かけた戦争で一家離散し所有者不明の荒れ果てた土地を市役所に内緒で農地として何時でも使える様にちゃんと手入れし、ちょっとした野菜や月桃=サンニンと呼ばれる目茶苦茶繁殖力の高い香草を植え育て自分で食べたり物々交換したり冬至之季節の頃とかに、隣近所相手に激安でこっそり卸して孫にやる小遣いの足しにする爺様婆様のソレだったりします。
とは言え家の近所じゃ卸売りこそしないもののヨボヨボになってもコッソリやってる家の爺様みたいな連中は未だに居るし、高々20年前ぐらいまでは決まった日に養豚場の飼料として供出する生ゴミを早朝に回収する馬車や、歩いて仕入れた魚や野菜の行商やってる婆様が当たり前の様に存在してた元ド田舎でしたからコレが沖縄の日常だと勘違いされても困る訳ですがね……高校時代の仲間や学校卒業生SNSで交流する10歳年下の後輩達と飲み会で未だに深夜飛び交うコウモリや梟に追い掛け回されるネズミの悲鳴が煩いとかトイレの排水口から偶に出てくるハブの怖さとか日常感覚で当たり前の様に話題にしたら…ホグワーツ魔法学校か江戸時代の住民扱いされたし(苦笑)
ではそろそろあらすじに入ります。台詞や状況説明はほぼ皆無な黙って自然の音やさり気ない遣り取りを聞きやがれな内容の作品ですので此処に書き綴ったソレはあくまでも映画見た私自身の独自解釈でしか有りません。実際に視聴しどんな印象を受けたかは個人個人で異なる物語だと断言致します…まあ出来りゃ面白かったと感じて頂ければ幸いです…後日本版の予告編はぶっちゃけ詐欺だからね♥未成年の子供にご無体な事なんざ出来ませんって(笑)
【 世界は此処に留まり人も時代も流れ続ける……コーサーカス山脈の雪解け水と春の豪雨が降り注ぐエングリ川地方は精霊の集まる場所で有り追い詰められた者達が最愛の想いを残し消え去る黄泉へと続く場所でも有った アブハジアの民は淀みとなった川の中洲に長い冬を越す為のトウモロコシを植え付け育てる慣習が有る 其処に留まる者は仮染めの客で有り同じ者が住み続ける事は決して無い これはとある戦乱の年に此処に流れ着き消え去ったとある名も無き老人と孫娘の物語。 】
それはアプシニィ地方がジョージア共和国の一地方でしか無かった1992年の物語。山脈の水が一斉に溶け出し、駄目押しで降り注ぐ豪雨が全ての畑を沼地へと変える春…アブハジアの人々は水位が下がり種蒔きの季節が訪れるまで急流の淀みに出来る倒木が作り出した中洲に仮染めの住まいを作り冬を越す為の貴重な主食を植え育てるのが慣わしでも有る。未だ水が冷たい季節に名も無き老人がその場所でトウモロコシを育てようと決め目印を建てたのは偶々掘り当てた前の農民の思い出の残滓で有る笛に魅せられたからだったのだろう。小舟に廃材や大工道具を積み込み土台を建て雨の日も風の日も小屋を建てる為に通い詰める老人はある日、廃材と一緒に魚を捕る為の仕掛け罠と年端も行かない孫娘を連れて来る…両親を亡くしたらしい娘は人形を手放さず軍服を怖がる様になっていた。
川の向こうはジョージアの支配地域…だが中洲は耕し作物を育てる者が生きる土地だ。年端も行かない娘と老人の開墾を見物するかの様に度々やって来るジョージア軍やアブハジア軍のパトロールボートを恐れる孫娘を宥めるかの様にアブハジア農民としての生き方を語り継ぐ…捕った魚を焼いて食べコーンブレッドを齧るだけの食事を済ませ、来る日も来る日も小舟で廃材を運び込み屋根を吹いてやがて小屋は出来上がる。水位が引いて穏やかになり広がった土地を耕しトウモロコシを植える2人…季節外れの豪雨が降り注ぎ始めたある日、ジョージア人とアブハジア人の戦争は始まった…そんなモノはわしらには関係無いと孫娘から託された人形を小屋の御守りとして飾り立て、杭を打ち耕作出来る土地を少しずつ広げてゆく…遠くから絶え間なく鳴り響く銃声に怯えながらも徐々に暖かくなり薄着となる季節を迎え中洲には緑が芽吹き始めた。
中洲から小舟で村の学校に通う孫娘は、魚の捕り方や干し魚の作り方に農機具の手入れを熟知し小舟も1人で操れる様になる…来年には小学校を卒業出来るらしい…が汗まみれになり身体を洗ったり漁で濡れそぼった服を脱ぎ絞ろうとする度にジョージア側の兵士達が覗き込み下品な声を浴びせ掛ける様になった。何を言ってるのか意味は分からないがどうせ碌でもない事に決まっている……自衛の為に猟銃を中洲に持ち込み馬鹿を威嚇射撃で追い払う日々が続いた…2人が留守の時を見計らうかの様に作物を狙う鹿を撃つ為に上陸し作物踏み荒らす密猟者も出てくる様になったから老人と唯一の身内である孫娘は畑を守るため小屋に泊まり込む事を決める。
川から水を汲み上げトウモロコシの苗に水を撒き、夏を迎え段々強さを増してきた水の流れや突風から守る為に島の周りに杭を打ち枯れ木や雑草で囲いを作る。時折鳴り響く銃声にもやがて慣れ、畑には孫娘の背丈を越えるかの様にトウモロコシが花を付けた。風呂なんて無いから身嗜みは夜食事を終え眠る前に暗闇の中行われた…ある日何時もの様に服を洗うついでに水浴を楽しむ孫娘は畑の中からいきなり聞こえた異音に怯え危うく深みに嵌りそうになる。それが戦闘で負傷し中洲に流れ着いたジョージア兵だと分かったのは翌朝の事だった。毎日の様に見かける様になったアブハジア軍の巡回を警戒し舟で運び込んだ古着を与えられたジョージア兵はやがて傷も癒え、中洲に流れ着いた薪を集めたり魚を干すのを手伝う様になった。
毎日の様にやって来るアブハジア軍の巡回を誤魔化す為、老人はなけなしのワインを兵士達に振る舞いジョージア兵は畑や堤防に匿われる。孫娘は兵士に興味を抱きアブハジア語で話し掛けたり気を引こうと悪戯を仕掛けるが……ある日ジョージア兵は小屋から永遠に姿を消した。中洲にはアブハジア軍だけでなく行方不明になった兵士を探しジョージア軍のパトロールボートもやって来る様になったが“頑として兵士の消息を話そうとしない老人の態度に全てを察した”孫娘は収穫の季節を迎えたトウモロコシ畑の中で不意に手を切った事を切っ掛けに泣き崩れる。
収穫作業が未だ終わらない最中、季節外れの嵐がやって来た……激流となった川は容赦無く中洲の土やトウモロコシを押し流して行く、何とか収穫出来た僅かなトウモロコシと孫娘を舟に乗せ逃がす事に成功した老人は崩れ落ちる小屋の下敷きとなり姿を消した………………いくばくかの時が流れエングリ川に再び春がやって来た。出来たばかりの中洲に上陸した年老いた農夫は小さな島を形成しつつある此処にトウモロコシを植え様と決め目印の旗を建てる為、穴を掘る最中に誰かに忘れ去られた人形を見つけ出した。冷たい水で泥を洗い落とし取り敢えずボートに乗せた人形の頭を撫でながらあの時の老人と同じ様に空を無心で眺める農夫の姿を映し出し物語は終焉を迎えた。
老人と孫娘そしてジョージア兵がどうなったかは誰も知らない。
追記:生まれた時から農民やってそうな爺様が何故に銃を使いこなし銃傷負った若造の応急処置が出来たのか……ソビエト連邦時代まで成人男性の約8割5部は20〜30代辺りまで平均15年程度は徴兵されてたからです。残る1割5部は手足欠損で物理的に従軍出来ないとか犯罪者だから使えないだけ……だから経済破綻したんだけどね(汗)




