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薔薇のスタビスキー 73年

2019年1/23〜1/27タブレット端末にて執筆し脱稿 1/27投稿

第2次世界大戦前 フランスは何故駄目だったかを描いた物語

【 専制君主国家(ロシア ロマノフ)から自由民主主義(フランス)に憧れつつも亡命したその地で堅実に質素に生きる父親に反発抱いたその息子が手段を選ばないやり方で何度も微罪や詐欺容疑で逮捕拘留されながらも遂には大物政治家の懐刀に 多額の賄賂で過去を消して経済活動で成り上がりただ周囲の見知らぬ人々を幸せにする為の自転車操業で稼いだらユダヤ嫌いな警部と賄賂が欲しい新聞社の脅迫と嫌がらせにより破滅。 ところが彼の交流相手が警視や政治家、経済界の大物ばかりで騒乱がはじまりその後大規模なデモ&次々解散する内閣によりフランス滅亡まっしぐら 巻き添え喰ってトロツキーが破滅する とまあそんな物語です。 】


★なんつーか特亜のアレも大概だけどフランス人も学習能力皆無なのかも? 2018年年末から始まったカルロス・ゴーンの巨額脱税を切っ掛けとした逮捕や 金持ち優先の法律作りで国内経済ズタズタにしたマクロン大統領弾劾する黄色いベストの暴動見てるとつくづく思います。


☆本編でボレリ弁護士役を演じたFペリエ氏 見事に“ゴーン顔”な為、地味に腹筋に来るかも知れません。 あんま珍しい顔でも無いのなアレ。


原題:STAVISKY...

スタヴィスキー 自称実業家・実は…

フランス劇場公開作品.

1975年日本公開.


 正直当時の日本ではアラン・ドロンと共に人気を二分したジャン=ポール・ベルモンド主演&製作全面協力でなければ見向きもされなかったであろう実録犯罪者映画(はん ノンフィクション)。純粋な高等学校教育受けた人、あるいは30年代のフランス国内の歴史に興味持つ歴史オタクか共産主義やトロツキーの世界革命思想にどっぷり嵌り混んだ可哀想な“勉強だけは出来るバカ”でも無い限りスタヴィスキー逮捕を切っ掛けとした疑獄事件とテロ合戦。その後ナチスドイツによる電撃戦勝利に繋がる人民戦線政府(れんごうせいけん)内通(ばいこく)なんて知らないと思います。


大体私自身も最近“映画 パピヨン”をこの歳になって再視聴するまで全くこれっぽっちも全然興味無かったしね(笑)5年前のお粗末な感想とたった半日で書き綴った文章を全面改稿する際に、前科持ちの人間なら例え無実でも賄賂と密告だけで死ぬ迄植民地で終身刑(奴隷が足り無いから代わりに)に出来た30年代の急進社会党時代の司法体制に致命傷を与えたとある詐欺師の話が出て来て…そういや馴染みの店でそのDVD見掛けた事を思い出しレンタル。取り敢えずダイジェストで視聴したけど映画だけでは微妙にチンプンカンプンだった為、姪っ子の参考書借りたりネットで検索して漸く薄っすらと物語の背景が分かった所です。


そもそも海外セールス前提に描かれた物語では無いしね。30年代の虚構と欺瞞に満ちた…但しスラムやホームレスが見当たらない果てしなく優雅なフランスの風俗とそれが時代の波に飲まれ消えてゆく様を、主人公夫妻(スタヴィスキーとアレッテ)の父親代わりであり年の離れた友人にして同じ心の(くうきょ)を抱える没落貴族ラオール男爵と、“とある組織”からの指令で最初はスタヴィスキーに…嘘を見抜かれ逃げられた後は崇拝者(トロツキスト)の(説明無いけど後に暗殺者(トロツキーころして)ソビエト英雄)に接触しドイツからの亡命ユダヤ人秘書としてトロツキー夫妻の秘書として潜り込もうとしたエルナ・ボルフガンク(多分ナチのスパイっぽいけど説明無し)の視点も入ります。


せめて字幕版だけでもト書き入れて誰が誰を演じているのかはっきりしてりゃ事件の詳細分からなくともどうにか出来た訳ですが まあ主人公が格好良けりゃどうでも良いわ♥なお客様って少数派だと思うのよ 私個人は山田康夫吹き替え版で楽しみたかったかな。では本編映画を少しでも楽しんで貰う為スタヴィスキーがどんな過去を持ち詐欺事件と新聞に書き立てられた疑惑がどんな風に当時の政権与党を、一見無関係であり真逆な存在であるトロツキーがフランスから追い出される顛末を迎えてしまったのかそんな話から始めますね。


 セルジュ・アレクサンデル・スタヴィスキーは1886年.ウクライナ.スロヴォトカ生まれのユダヤ人。ロマノフ王朝主導で行われた不穏分子一掃政策により故郷を追われ1894年に父親と共にフランスへ移住。別荘地(バルビゾン)で堅実謙虚に理髪師として生計立てる父に反発するかの様に、幼い頃から売春宿やカジノに出入りし窃盗やポン引きで拘留を繰り返していたものの1910年に軍に入隊する事でフランス国籍取得。この時代のデータは現存しておらず、召集兵と違い志願兵なら色々便宜図って貰ったり軍務期間も短い筈だけど第1次大戦には容赦無く巻き込まれた筈……恐らくは其処で貴族階級や警察上層部と縁を持ったのかな?


その後スタヴィスキーの名前が出て来るのは1922年になってから。国際決済銀行を任されたボンネ元蔵相の懐刀として表舞台に現れた彼はハンガリーの農業資金貸し出しで莫大な利益を上げるも横領の疑いで逮捕され拘留。その後偽宝石を質屋に販売した容疑で逮捕されその際父親が自殺した事を切っ掛けに一度は詐欺師の道へ…1926年にいくつかの窃盗容疑で捕まり今度は1年半の懲役。出所後アレッティ・シモンと知り合い結婚しアレックス商事を設立…今度は堅実なやり口で宝石販売等色々やりつつ公営カジノで莫大な利益を上げのし上がる。


 1931年バイヨンヌ市議会の賛助で信用金庫を設立。派手な私生活も話題となる地元の有名人としての生活を送るが…実際の所世界不況でその内情はちょっと微妙。だが弁護士や支援者と相談し多額の債権を発行する事で一見堅実な経営してる様見せ掛ける詐欺紛いのやり口と事業拡大政策により経営は何とか健全な状況へ流れつつ有った。ところがそんな最中に担保とされた宝石の大半が偽物や盗難品という不可解な噂が流れる……ユダヤ人嫌いで上昇志向の強いピエール・ボニー警部と彼と結託したボンスケール新聞社等の右翼系マスコミの執拗な特集記事と嫌がらせ同然の捜査の結果1933年に取付騒ぎをおこし信用金庫は倒産。スタヴィスキーは詐欺の容疑で一時拘留された。


保守系新聞がスキャンダラスに煽り立てる中、疑惑はスタヴィスキーとの交流が有った植民地相アリベール・ダリエ(元労働相)やスタヴィスキーの保釈を認め国内旅行免状を認めたシアップ警視総監にまで及ぶ。


1934年1月、別件逮捕される寸前スタヴィスキーが拳銃自殺(実は口封じ暗殺説が残る)詐欺の共犯者としてその妻シモンが令状無しで逮捕拘留された事が追い風となり王党派(アクションフランセーズ)と反共産主義を掲げる火乃十字団(クリアドフー)=退役軍人会が2月6日にユダヤ人等の不逞外国人追放と政権与党の打倒呼び掛け武装蜂起…死者16名負傷者2300名逮捕者数不明の大惨事を引き起こした為にフランス政財界は大混乱に巻き込まれ、フランス国内に潜伏していたトロツキーを始めとする反ソビエト勢力の人々は次々と国外追放…或いは愚か者揃いのこの国見捨て出て行ってしまいます。


……で紆余曲折の末に権力掌握したのは親ソビエト連邦、表向きだけはナチスに批判的なフランス人民戦線(ゴクサれんごう)。勿論こんな政権がまともな統治なんて出来る筈も無くまごまごしてる内にフランス内部の裏切り者(元軍人)やソ連からフランス軍部の内部情報提供されたドイツ軍は呆気なくイギリス軍をダンケルクから追い出しパリを制圧。シアップ警視総監をモロッコに左遷させる等、一時は英雄扱いだったピエール・ボニー警部は同僚の内部告発により汚職に塗れた正体がバレ結局クビに(笑)その後ドイツ秘密警察の現地協力者としてレジスタンス弾圧や拷問、ユダヤ人の強制収容所送りに関与し逮捕され戦争終結後処刑されました…なお1977年に最後の1人〜81年法律で死刑廃止されるまでフランスのソレは見学簡単な公開処刑でギロチンです。


とまあ分かり易くこの事件切っ掛けにしたフランスの滅亡顛末を纏めてみましたがご理解頂けたでしょうか?一応義務教育〜高校の選択科目でもしっかり世界史取った筈だけど、私ここら辺りの展開一度も授業で習った記憶がねーぞ(爆)裏取る為に教科書読んだらスタヴィスキー事件のもっと意味不明な概要とダイジェストしか書いて無いし(笑)まあこの辺りの事情を映画で説明すると軽く3時間オーバーは確実だし当初構想に有ったらしいトロツキーとスタヴィスキー…ロシア系ユダヤ人としての宗教倫理や振る舞いを否定しつつも違う道歩む対照的な2人の描写についてもかなり中途半端になったのはフィルム削ったからなのかもと結論付けて本編あらすじです。



【 結局の所映画本編の基本コンセプトは尊大で身勝手、時に怒鳴り散らしあからさまに精神が不安定気味のこの主人公が何故妻や男爵を始め多くの人々に好かれ愛されていたのか?ソレに尽きると思います。自身を成功した経営者に見立て演技を全うし破滅の足音が迫って来るのを理解しながらも泣き叫んだ所で事態は解決なんてしないから…せめて終わりを告げるその時まで私は周囲を幸せに楽しませて見せる…それは確かに堅実で地道な人生送りたかったが挫折した父親のソレとは真逆な生き様でした。 】


☆本編は何故か滞在先がリンクするトロツキーの亡命生活と彼に関わろうと画策する自称フランス人青年とドイツの市民権剥奪されフランスへ仕事求める自称ユダヤ人女性=エレナ・ボルフガンク(でも本当に怪しい)で繋がる物語ですがややこしいから一部省略します。


 幸せは一瞬の煌めき…宛らみずうみに映える光の様なモノでしか無く、快楽は追い求めるのに一生かかる…手に入れたいなら嘘と発明を必須とするからまずは金持ちにならなければならない。コレは祖父の偉大さに憧れソレを否定し自殺した父の狭量さと宗教へ依存する小市民振りに反発を隠さない彼のささやかな反抗心が生み出した物語なのだろう。


家を持つ事を嫌がり夫婦でクラリッジホテルに滞在しながら様々な業種への資本投資や分単位での会見を妻アレッティと二人三脚でこなし続ける“アレクサンデル・スタヴィスキー”が謎のユダヤ人女性“エレナ・ボルフガンク”と最初に出逢ったのはホテルのティーラウンジで妻の仕事に付き添った友人“ラウル男爵”や“ボレリ弁護士”とお茶で一息ついている最中だった。


直前まで長々と続いた警視総監との“ピエール(ボニー)警部&右翼系新聞社”の付き纏い対策の不毛な遣り取りで疲れ果ていたが事情は分からないけど只一人半泣きでカフェを飲む彼女が気になった。主人公はホテルマンにメッセージカードと大量のピンクの薔薇を彼女に贈る様、手配させ劇場へと急ぐ。事務所で待ち構えていたのはかかりつけの医師による健康診断…昼間は信用組合の仕事で政財界の重鎮と会見を重ねその合間に劇場に通い書類決済とオーディションの立ち会い、夜は再び政財界の人々のパーティーや会食への参加…まるでブレーキの壊れた自動車で坂道を駆け降りるかの様な生活は夫婦を不眠症へと追い込みつつあった。


物語はアレッティへモーションをかけ続けるスペイン貴族ボレアルに懸念を抱く男爵の告白…主人公を二重人格を持つ面倒臭い人物だと断言する弁護士…彼の診察にあたる医師…そして夫と同じ悪夢に悩まされながらも彼の為に金づるとなりそうなスペイン貴族と着かず離れずの関係を続けるアレッティの独白により今はユダヤ人で有る事を公言せず控え目に生きながらもスポットライトが当たる事を望む主人公のややこしい性格と立場を説明する描写を映し出します。


★登場人物が似たような名前多いので役職名で書き綴らせて下さい。後スタヴィスキーの周りで何が起きていたかについては最初に可能な限り解り易く説明したのでその辺りの描写も省略します。でないと書いても書いても終わらない。


 自身のが抱くややこしい性格を“俺は舞台役者として経済界の大物になりきって巫山戯ているだけだ”と現実逃避するスタヴィスキーの僅かな息抜きは妻アレッティに甘え甘やかす事と帝国劇場で若い役者志望者の演技や舞台を楽しみ時折アドリブで男爵や友人達と共に演技に飛び入り参加することで発散させていた。近々稽古が始まる新たな題材の役者オーディションで、あの時泣いてたユダヤ人女性エレナと再会し臨時の相手役を買ってでた主人公はまるで今の自分の様だと皮肉な思いを抱きつつも“死してなお物語を引っ掻き回す幽霊”の役を演じきった。


自己紹介で自らを“ナチスに追放されたユダヤ人だと告白したエレナ”は当然ながらオーディション落選。何故君は出自を隠さないユダヤ人で有る事を誤魔化せば君は金髪碧眼を売り物に合格した筈だ…疑問を抱き話し掛けるスタヴィスキーはヤケクソ気味な彼女に戸惑いながらもエレナが持つ独特な美学と身に着けた派手な首飾りに惹かれるかの様にベッドを共にし代価として当面の生活費とその足しにして欲しいと首飾りをそれなりの値段で買い取った。


合流した弁護士には冗談混じりでエレナの面倒臭さを貶し、彼女から買い取った装身具を安値で買い叩いたと出任せを叩きつつ…とにかく妻に甘えたくなったスタヴィスキーは途中男爵と合流しホテルの有るスペイン国境近くの街へ向かう…夜明けの海を男爵や弁護士と眺め不意に妻へ花を贈りたくなった主人公は街中の花屋を駆けずり回り薔薇や百合、ありとあらゆる白い花の鉢植を掻き集めホテルへと帰って来た。


早朝未だ眠り続ける妻を起こさない様、コンシェルジュやメイド達に協力して貰い(勿論現金払いで)ベッドの周りを花で飾り立ててサプライズプレゼントをやらかす主人公…悪い夢を見ていたと甘える妻(皮肉にもソレはこの映画のラストシーン…死を迎えたスタヴィスキーが断末魔の中で見た風景)を映しつつ場面は再びトロツキーサイドの動きと男爵.弁護士そしてスタヴィスキーを破滅させる為に謀議を重ねるピエール警部と新聞社のシーンを次々と映し出す。


 スペイン貴族の目的は内戦が続く祖国王党派への武器購入交渉だった。妻から内部情報を仕入れたスタヴィスキーはイタリア=ムッソリーニと会談準備を進めるスペイン貴族に接触、妻と一緒に計略を図りまんまと融資を引き出した…これで数週間後に迫る返済危機を乗り切る事が出来た。友人達と久し振りに不安感を感じない宴席を楽しんだ主人公はぐでんぐでんに酔っ払った。深夜元警視の友人とフラフラと立ち寄った墓地で墓石を枕に父親の思い出を語り始めるスタヴィスキーは出迎えに現れたアレッティの膝の上で子供の様に泣きじゃくる…だが彼等の足元には破滅の気配が迫りつつあった。


バイヨンヌの森で7年振りに父が自殺した我が家を訪れホテルに戻ったスタヴィスキー達を待ち受けていたのは融資を断られた右翼系新聞社がピエール警部と共に書き立てたスキャンダラスな特ダネ記事。根拠の無い噂とかつて詐欺師として逮捕された事実を面白可笑しく書きたてられたバイヨンヌ信用金庫は取り付け騒ぎにより徐々に経営破綻の道をひた走る。資金繰り確保の為に盗品扱い宝石屋と謀議を重ね政財界の重鎮と接触し賄賂使って事態打開を図る主人公達は政権与党に見捨てられる形で破滅していった。


 多額の保釈金を支払い釈放されたものの世論は完全にスタヴィスキーを悪者扱い妻と子供達の身柄を守る為に主人公は別荘へ独り匿われることになった。


『この国から南米へ逃げよう。身1つ有れば何れ名誉回復の機会もある筈です。』


主人公の身を案じる妻を宥めつつ灰色な案件が記された書類をホテルの暖炉で焼き捨てるスタヴィスキー…ベレクレール議員の秘書達に連れ出され車に乗せられた主人公が妻と再会出来たのは死体となってからの事だった。それはアレッティが繰り返し悪夢に見た光景そのものだった。全てが終わりを告げ混迷の度合いを深めるフランス社会。与党により詐欺の冤罪をかけられたアレッティは女子刑務所へと送られた。





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