バーンストーマー 大西洋の亡霊 91年
2016年8/24ガラケー投稿 2020年9/27改稿開始〜
【ロンドンに突入する巨大な飛行船。夜空を舞う赤いフォッカー三葉機。立ち向かうは王立空軍のじゃじゃ馬戦闘機隊ソッピース・キャメル…ジブリ風味の空戦アクションとして作れば売れると思いますがいかが?】
★本来なら改題された複葉の御者に手直しするべきなんでしょうがノベルズ版を未だ入手出来ずに居ますのでソノラマ文庫読んだ時の記憶参照してます。
☆事情知ったのは割と最近ですが漫画家・広井てつお氏はバイク雑誌の長期連載で有名な大御所だったそうです 私は当時ビッグコミック系列の雑誌キャプテンに載ってた変な漫画家のイメージしか有りませんでした。
英題:BARN STORMER
第1次大戦後アメリカを中心に始まった
複葉機を使った遊覧飛行やアクロバット等の営業行う
空の萬屋営むパイロット達の総称=複葉の御者
日本 ライトノベル作品
笹本祐一 著
1991年朝日ソノラマ文庫
イラストは 広井てつお(2008年死去)
2007年ソノラマノベルズ 再版の際加筆修正に合わせ
複葉の御者に改題 イラストは鈴木雅久が引き継ぎました
羨ましい…もとい“裏山の宇宙船”“小娘オーバードライブ”“星のダンスを見においで”等、笹本祐一先生の小説は学生時代のお気に入りでした。その中でも色々有って“ジブリ辞めたスタッフか就職出来なかった方々に映像化して欲しい作品”がコレです。
※裏山が何故“羨ましい”かは小説(新書版・放電映像先生イラスト担当)読んだら解ります(笑)
※何故“ジブリ辞めたあるいは入らない…”が条件かと言いますとマニアックな複葉機アニメ製作するとなったら“あの爺様”絶対湧いてきそうだからです。
お願いだから最近の作品みたいに意味不明な怪しい政治論や価値観押し付けは辞めて下せぇ(涙)押井守も最近鳥●化を疑ってます。
全学連とかそっち系の人間はアルツハイマー化する薬物でもやってんですかね?。もっともあのオジサン昔から余計な一言で周囲を敵に回す駄目人間です。
1920年、第1次世界大戦が終結して2年経過し、そろそろ戦争忘れて馬鹿騒ぎ始めても良いじゃない。世界中がイベントを再開した明るい時代を背景に戦争で大量に余った航空機を活用した郵便業務等の輸送業務。アクロバット飛行等のイベント業務でパイロットが活躍してた頃の物語。有名所では別名リヒトフォーヘン・サーカスの生き残りメンバー。ゲーリングやウーデットもアクロバット飛行や貨物輸送で活躍してます。
当時の航空機は木材に羽布貼りな脆弱な構造。無線も防寒対策もロクにない吹きさらしの操縦席。位置情報は場合によっては地上の原っぱに降りて。あるいは山や城を目印に。海の上では天候観測と海図が頼りな時代です。まあ今の飛行機より短い距離で離着陸。下手すると原付感覚なのは進歩なのか退化なのか微妙ですね。ストーリー振り返りは昔読んだソノラマ文庫版(イラスト担当は広井てつお先生…バイクと飛行機のイラストに定評がありもっぱらバイク雑誌のマンガで活躍…2008年8月28日57代の若さで癌により死去。ご冥福を祈ります。)を色々記憶手繰り寄せて書いてます。
2007年に新書版(イラスト担当鈴木雅久先生)サブタイトルも“複葉の御者”と改定した原稿加筆修正バージョンが出てたんですが家改築して貯金が厳しい時代~集めた貴重な本毎シロアリに喰われて倒壊。その後更に数軒新築する羽目になってドタバタ~本屋駆け込んだら絶版となってました(涙)文庫版気長に待ちます。そういえばソノラマ文庫版では見開きイラストまであった象使いの少女より、遥かに扱いが酷く忘れ去られた後半のヒロイン“カラミティ・ジェーン”こと“アイリーン・ウェス・ハーバー”のイラストあったんでしょうか?
そこら辺り立ち読みしてでも確認するべきでした。未だに後悔してます。
※災厄の(カラミティ)ジェーンは実在の人物です。1870年から第7騎兵隊にある理由で男装し潜り込んでた女性で本名は“マーサ・シェーン・カナリー”本人曰わく“インディアンとの攻防戦で活躍して災厄を防いだからその渾名がついた”と公言してますが第7騎兵隊の“カスター将軍”“ワイルド・ビル・ヒコック”等交際相手が“大抵ろくでもない死に方した事からついた説”が有力です。
他には終生風呂に入らなかったから強烈な臭いとバイ菌持ちというふざけた新聞記事もありましたが多分ネタです。
そっちならダーティー・ジェーンだわな。
晩年はイベント“ワイルド・ウェストショー”で本人役で2丁拳銃で暴れてました。1903年死去享年50歳。以降も西部劇の定番キャラで活躍しました。死なない範囲で主人公に不幸を呼ぶ恐怖のヒロインって“峰不二子”以外は露骨に女性陣に嫌われて絶滅しましたなあ。
【元戦闘機乗りと年下つんでれ美少女と書くと“ダンタリアンの書架”思い出す方が多いと思いますが…こっちのコンビは赤貧洗うがごとく貧乏です】
“何でも・どこからでも・何処へでも”がモットーのパイロット兼整備士、主人公“ジョナサン・ウォーカー”予備役中尉通称“ジョニー”と事務員兼交渉役の4ヶ国語話せる戦災孤児のフランス人少女“レミィ・マルタ(本人曰わくアルザス・ロレーヌ地方産まれなら常識)”の総員2名の零細企業“ファルコン・フライング・フェリー”は貧乏会社ですから年中無休。
世間は復活祭の最中も愛機“複葉戦闘機キャメル”を駆って花火大会の集中放火をどうにかかいくぐり“イギリス情報局”の友人“ジャック・ダニエル”から依頼された郵便業務を無事終了。
※手紙の内容は情報局関連の秘密文書。怖い事になるから秘密です。
宴会の翌日、2日酔いで頭が痛い状況で新しい仕事を半ば強制的に“レミィ”に押し付けられます
理由は勿論破格の料金。しかも前払いだからです
依頼者はサーカスの団長さん。依頼内容はソマリアに居る象使いの少女と子象1頭の輸送業務。子供とは言え相当重い…当時の航空機では常識的には不可能な配送をどうやって達成するのか?通訳者として初めて同行、アルプス越えで寒さに色々キレた“レミィ”の描写を挟みながらゴータ、カプロニ、ヴィッカース社の珍しい大型機の登場と共に当時の郵便飛行業務を紹介しながら愉快な珍道中が続きます。
で専門的な話だけじゃ拙いという事で
2話は“レッドバロン”の幽霊戦闘機伝説をテーマに戦争継続を諦めてないドイツ帝国海軍の提督の暗躍と“巨大飛行船ゲシュテンペスト号の空母運用”その頃テスト運用が始まったばかりのイギリス海軍空母“別名アイロン”アーガスの話となります。
【そもそも第1次世界大戦でドイツ海軍は何やってたか?という話になりますなあ】
陸軍についてはナポレオン時代からの蓄積した経験が有り。航空機に関しては多大な犠牲を払いながら実績を上げている一方で、海軍の戦い方は基本沿岸警備業務から最後まで発展する事が出来ませんでした。戦艦クラスでも宿泊設備ないから基本戦い終わったら港へ帰還が常識だったのよ。
ヴィヘルム2世皇帝就任。ティルピッツ提督が海軍大臣に就任してから巨大戦艦19隻開戦後+5隻を中心とする大艦隊の整備を始めたものの主力艦・支援艦艇個艦の性能はそこそこですがイギリス海軍やアメリカ海軍日本海軍と比べ経験者がおらず。そもそも戦艦1隻ですら2000人近い乗組員を動かして大砲撃てる様になるまで4~7年はかかります。更には艦隊運用ともなると…長距離の艦隊運用ノウハウ。エンジンの保守信頼性。海上補給等の経験も殆ど無し。現物揃える事を優先したせいで動かすだけでも莫大な経費が必要となった海軍は実際は“張り子の虎”でした。
弾も燃料も無いから動けないのです。
莫大な経費がかかる貴重な戦艦を沈めるなと、戦力維持を命じられたドイツ海軍は結局植民地青島から脱出途中に捕まった南米チリのコロネル沖海戦、制海権確保する為展開中にイギリス海軍に捕まったデンマークのユトランド沖海戦の2回の戦いを除いて戦闘行為を避け、港から出ませんでした。
代わりに戦闘行為を行ったのは飛行船103隻によるロンドン爆撃作戦と潜水艦による無差別攻撃でしたが、飛行船は結局77隻を失い壊滅。潜水艦もアメリカ人が多数乗り込んでいたルシタニア号を沈めてしまい、アメリカ参戦と海上封鎖で食糧購入が出来なくなりました。
事態悪化に動揺した帝国はティルピッツ提督を解任。無差別攻撃は一旦中断されますが連合軍の海上封鎖はそのまま継続されます。
以降の話グダグダ書いても楽しくないから省略しますが結局主力艦隊の決戦無いまま戦争終わったという事でご理解下さいな。
ではエピソード入ります。舞台はイギリス・スティプルフォード小型機専用飛行場の隣にある零細企業ファルコンフライングフェリー社の日常風景から始まります。
【私・残酷ですわよ。…すいません人違いですゴージャス・アイリーン覚えてる人は居ないね。突撃バカ介入でジョニーは危うく海の藻屑】
4ヶ国語を話せるけど読み書きは壊滅的な“レミィ”の日課は保護者代わりの“ジョニー”に教えてもらいながら定期購読しているお固い“インディペンデント新聞”を読み上げる事。
暇つぶしにお茶しにやってきた“ジャック”も加えて雑談交えた勉強会の中、2つの奇妙な記事が話題に上ります。
1つは画期的だけど発想が無茶な新型艦艇アイロン・アーガスこと“航空母艦”の試験航海の事…実は“ジャック”が今回やってきた目的は“ジョニー”のテストパイロット就任打診でしたが“お金の匂いに敏感なレミィ”の介入でグダグダになり…まあ命懸けな仕事は“高い”と決まってます。
2つ目は“お固い新聞に不似合いな怪談話”最近英仏海峡で度々目撃される“赤い三葉機=フォッカーDr1型戦闘機”の記事でした。
第1次世界大戦で有名になった撃墜王リヒトフォーヘン男爵(戦死)の愛用機として連合軍パイロットから恐れられたドイツ帝国陸軍航空機が…マルタ十字のレッドバロンが未だに空にさまよっている…荒唐無稽な話を笑い飛ばした3人に
「その記事書いたのは私よ。仕事があるの!ごちゃごちゃ抜かさないでとっとと手伝いなさい!!」
と事務所に乗り込んで来たのはテンガロンハットにドロワーズを穿いてドレス、2丁拳銃を腰に身に付けたアメリカ女。
インディペンデント新聞社の新人記者“アイリーン・ウェス・ハーバー”でした。ジョニーもジャックもワイルド・ウェスト・ショーまんまな人物登場に目が点に仲間内の渾名は何故か“カラミティ・ジェーン”主人公が渾名の恐ろしい意味に気が付いたのは手遅れな事態となってからです。
実は“飛ばし気味の記事掲載”に激怒した編集長とアイリーンは事務所で朝から大喧嘩。売り言葉に買い言葉で“だったらレッドバロンをカメラで捉えるか直接インタビューを試みる”
と無茶が出来そうな航空会社にチャーター依頼でやって来た彼女は要所要所で茶々入れる暇人2人を無視して“レミィ”と直談判。前金に口止め料も確保した“レミィ”は喜々として2人を送り出します。
怪しさ大爆発な仕事にげんなりしながらも増設した後部座席に“アイリーン”を乗せ大西洋上をパトロールに出た“ジョニー”を待ち受けていたのは勝負を挑んで来る赤いフォッカー三葉機の姿でした。激しい格闘戦を展開したものの忽ちガス欠となった“キャメル”はフランスのど田舎に緊急着陸。
最初の遭遇戦はジョニーの機体に機関銃積んでません。一応民間機ですので…メッタ撃ちに合った主人公は逆ギレ気味。前世紀の遺物みたいな教会の天国に繋がってる可能性が高そうな古い電話を使って何とか燃料確保した2人はイギリスに帰還します。
飛行場で待ち構えていた“ジャック”に元上官への伝言を残し契約書楯に意地でも降りない“アイリーン”連れての2度目の勝負は機関銃積んで健闘したものの、赤いフォッカーはいきなり3機降伏した彼等を雲の中で待ち受けていたのは背中に飛行甲板&多数のフォッカー戦闘機を乗せた空中母艦=ドイツ海軍の新型飛行船ゲシュテンペスト号でした。
飛行船の中で敵の首領“提督(確か酒の名前まんまだった筈ですが忘れました)”とインタビューも兼ねた物騒な昼食会を体験。彼等の目標がロンドンへのささやかな復讐と教えられた彼等は監禁室へ…勿論アイリーンが隠し持つナイフやら工具やらを駆使して脱走。外壁よじ登って飛行甲板にどうにかたどり着いた彼等は隙を付いてキャメルを奪い返して脱出。大西洋上で迷子となります
※脱走の事実を知った“提督”は「ディナーの準備もしていたのに忙しない方達だ」と余裕綽々なのはお見事です。悪役はこうじゃないとねぇ。
ジョニーとアイリーンを乗せた戦闘機キャメルは燃料しっかり抜かれていて海水浴のピンチ。そこへ目の前に現れたのは巨大なスチーム・アイロン…イギリス海軍の航空母艦アーガスでした。殉職者や海水浴体験者続出中の新鋭艦に何とか着艦成功させたジョニーは3回戦を決意します。
クライマックスは夜のロンドン上空で繰り広げられる大空中戦。この辺りの描写は小説でお楽しみ下さいな。
…物語の後日談は“レミィ”が読み上げるインディペンデント新聞“IWハーバー”のスクープ記事で始まります。
戦闘機隊にはしっかり逃げられ、海上でゲシュテンペスト号の残骸は見つかったものの遺体も生存者も一切発見出来ず……あいつら逃げたな……と潰れるジョニーとジャックの溜め息が…そこへ再びアイリーン登場。
「編集長から取材費と金一封貰ったわ(高笑い)今度は提督捕まえるわよ!手伝いなさい!!」
現金収入でホクホク顔のレミィに呆気なく売り飛ばされたジョニーは空にドナドナされてゆくのでありました…。
“第1巻・大西洋の亡霊”ソノラマ文庫で以降続刊予定でしたが予定は結局未定に終わり“ARIEL”の続刊と“星のパイロット”優先となります。…残念ながら第1次大戦~1920年代の飛行機やバイク、車の蘊蓄はマニアックだったのかも知れません。




