マンハッタン殲滅計画 85年
2016年8/22ガラケー投稿 2020年5/18タブレットでの改稿開始〜
【 サリンやVXガス=ナチスドイツの絶滅収容所や第1次世界大戦でドイツ帝国が大々的に使ってたイメージが定着していた1985年に描かれるニューヨーク地下鉄サリン事件を始めとした連続テロの物語 急激な世界情勢の変化と消費税導入と共に始まった底が見えない出版不況のせいで入手困難となった幻の作品でも有ります 版権の問題何とかして国営の電子図書館みたいなモノが有ればね (溜息) マンガやアニメもそうですが次世代育成するなら誰もが手に取れ読める環境が大事 税金泥棒そのもなトリエンナーレは論外 予算はコッチに使うべきでしょう。 】
★此れがベースになる筈だったダイ・ハード3は 色々大人の事情とレーティングの問題で 毒ガス⇒あの頃絶対に有り得ないと思われていた仕掛け爆弾による無差別テロに変更されましたが……やっぱり今じゃテレビ放映無理なのかね(-_-)
☆内容的には "マンハッタンの戦慄" が正しい表現に思えますがFポール・ウィルスンのホラー小説がまんまそのタイトルだったから使えませんでした。
アメリカ ポリティカルフィクション小説
原題:OTTO'S BOY
オットーの息子 ⇒ 挑戦状に書かれた犯人の名前から 典型的なドイツ人のファストネームですが相続財産の意味も 第二次大戦中は オットー=弾薬or爆弾 ハーマン=燃料 の隠語でも有ります。
ウォルター・ワガー・ウェイジャー 著
翻訳版は二見ミステリー文庫より 1986年出版
■当時こんな名作が520円で買えました 巫山戯んな消費税 (怒)
様々な情報を可能な限り収集し 取捨選択し処理する過程で人間の想像力はまるで未来予知としか思えない事件や災害を予測し 娯楽作品の体裁で偶にとんでもない物語を纏め上げる事が有ります 場所も時代も違ってましたが日本に2発の原子爆弾が落とされる顛末を描いたポリティカルフィクション "来るべき世界" やコメディ形式で描いたBC兵器による無差別テロの顛末 "盗まれた細菌" とか H.Gヴェルズが書き残した様々な著作なんてその最たるモノなのかも知れません。 小説家にして脚本家 ウォルター・ワガー・ウェイジャーの得意分野はポリティカル・フィクション ダイ・ハード2……或いは9.11同時多発テロの原案となった "ケネディ空港着陸不能" 等様々な作品が映画化されてますが余りに危ない内容だった為に 未だに映像化されない物語のひとつがこの物語です。
題材となったのは当時割と身近 (日本の場合1970年代末期まで核地雷と共に沖縄に保管されてました。 横田や三沢もあの時代ならかなり怪しいと思うんだよね。) に秘蔵されていたサリンやVXガスを使った無差別殺傷による連続テロ事件。 当時読んで恐怖のどん底に叩き込まれた記憶が漸く薄れた頃に 最初は松本のアパートで 続けて都心地下鉄であの事件が起きました もっとも小説と違って毒ガスの被害が本当に恐ろしいのは死者の数より重軽傷者の数と死ぬ迄続く深刻な後遺症 イランイラク戦争やクルド族との戦いで散布された毒ガスによる被害者や重軽傷者は国際社会 (特に製造元のフランスとドイツの化学企業) が知らん振りしているため 現状不明としか書けません。
1994年と1995年に起きたオウム真理教による連続サリン事件は悲惨なデータが残っており 製造或いは薬品化合に失敗した粗悪品を散布したのにもかかわらず松本では死者8名 重軽傷者140名 地下鉄では死者13名 重軽傷者は5800名以上も発生する事になりました。 統計には後遺症で苦しみ自ら命を絶った人や治療途中で亡くなった人は含まれていませんし 家族が被害を受け深刻な影響があった人達も含まれていません 松本サリン事件に至っては被害者の1人河野さんが長野県警捜査担当者に無実の罪を押し付けられただけでなく 捜査員と内通してたTBSの報道関係者を経由し個人情報ばら撒かれ酷い事に……最近オウム真理教シンパとして犯人説を煽ったその馬鹿が堂々と立憲民主党から国会議員に立候補し当選しましたっけ。 おぞましい話です
この世に存在しない思想による10年後 20年後を見据えた悪意に塗れたテロ計画に基づいて組み上げられた "0歳からのテロリスト養成プログラム" の詳細満載の為、再販はかなり厳しい作品ですから例によって当時読んだ時の記憶を手繰り寄せながらネタバレ有りで進めます。 事実誤認や勘違いも有り得ますのでご注意を 出来りゃ当時この本読んだお客様に指摘頂ければ喜んで訂正致します。 タブレット入力で早期対応が可能になりましたゆえ
【 其れは新年も明け浮ついたお祭り気分から仕事や学業へ頭を切り替え忙しく動き出した1月の終わり頃 多くの人々が行き交う週末のマンハッタン・タイムズスクエア駅で始まった 4両目の客車から誰も出て来ない 駆け付けた駅員や偶々居合わせた乗降客が目の当たりにしたのは、喉を掻き毟り苦悶の表情を浮かべ動かなくなっている多数の老若男女達の無残な姿だった。 】
★まんま地下鉄サリン事件彷彿させるオープニングだけど日本で此れ出版されたの1986年 勿論即死よりえげつない後遺症までは描いてないのはこんなモノをテロで使うなんて想像すらしてなかったから でもイラクはクルド人相手にやったんだよ
犠牲者は177名 列車内に救助活動目的で駆け込んだ駅員や消防隊員達も次々と昏倒し亡くなった事で構内はパニック状態となり 通報受け防護服を着用した軍が駆けつけ犠牲者や重軽傷者の搬送が始まった。 未曽有の無差別殺傷テロで使用されたのは神経ガス=サリン 時限装置で噴霧を開始するガスボンベはアメリカ陸軍が保有する物で有ったが、数日前に市長へ届いた金銭的政治的要求すら記されていない犯行予告の内容と事件の詳細は伏せられたまま 軍情報部とFBI ニューヨーク市警察による合同捜査はそれぞれが対立感情を剥き出しにした為難航 そもそも犯人の目的や人物像が判明しない上に容疑者が絞り込めないでいた。
市警側の捜査を担当する主人公=ブルーム警部補は、当時未だ日陰者あるいはイロモノ扱いだったプロファイリング=犯罪真理学による捜査を考え美貌の精神分析医ケリー(仮)医師に捜査協力を依頼 (名前思い出せないから仮称で書いときます) 合同チームとは別に独自の捜査を開始 犯行声明や僅かな物的証拠&状況証拠から判明したのは 犯人が現役或いは退役した化学兵器に精通した軍関係者で有り30代前後のドイツ系白人男性 人種差別的な志向が有りかなりの潔癖症&神経症を患っている可能性が高く 人格形成に深く肉親……恐らくは母親が関わっている様だとまでは判明したものの 指紋どころか抜け落ちる筈の体毛まで執拗に回収している事から個人の特定迄は至らなかった。
尤もプロファイリングに対する基礎知識の無い昔気質の軍情報局や 当時FBIが大々的に行っていた超能力者を使った犯罪捜査と同じぐらい胡散臭い其れを信用したのは 単独行で始末書を積み重ねるニューヨーク市警の変わり者と評された主人公だけだったという間抜けな事情も有るのだが其れはさておき 二度目の標的となったのはハーレムで深夜営業を続ける映画館 週末大勢の観客が集まる狭い空間に散布されたガスにより245人もの人々が亡くなり周辺の歓楽街は逃げ惑う観光客や市民 駆け付ける緊急車両と消防&警察官により大混乱となり犯人にまんまと逃げられてしまう。
押収された噴霧器の登録ナンバーからテロに使用されたのは廃棄処分
使用されたボンベは数ヶ月前の痛ましい事故で炎の中に消えた筈の物でした。冷戦の最中作られ廃棄処理の為移送中だった“軍の化学兵器”が移送中にガス流出事故を起こし警護についていた部隊は壊滅。その際ある兵士が英雄的な行動で自らを犠牲に自爆装置…テルミット爆弾を作動。市街地に流出する可能性があった神経ガスの脅威は超高熱の炎で無効化された…痛ましい事故ですが悲劇は終わった筈なのです。
…ならここに有る神経ガス発生装置は何処から?
捜査本部はガス流出事故→実はテロリストによる偽装工作による神経ガス強奪事件と結論、国内外の過激派組織に対する捜査を始めていました。
そんな最中再び“O・Bの犯行予告”が送られて来ます。
※ここら辺りも記憶微妙です。
2度に渡る惨劇。追い込まれる捜査陣に精神分析医ケリー医師のプロファイリング結果が届きます。様々な癖、手紙の中の言い回し、更には目撃者からの情報や監視カメラの映像から浮かび上がった容疑者は“英雄として殉職した筈のあるアメリカ人兵士”でした。
物語の視点はここで一旦入れ替わり。様々な捜査情報&プロファイリング結果による犯人視点によるテロリスト誕生物語となります。
全ては第2次世界大戦終結後の西ドイツ。とある孤児院からスタートします。戦後の混乱期、戦災孤児となった幼い子供達を救う為ドイツでは養子縁組みが盛んにおこなわれていました。“オットーの息子”を名乗る彼の母親もそんな人物の1人。
優しい養父母に預けられた彼女はすくすくとアメリカ人として成長します。
…総統命令の通りに。
【人狼部隊の話ご存知ですか?今回の物語のテロリスト育成&誕生は彼等が関わっています】
“人狼部隊”ナチスドイツが関わった犯罪行為の中でおそらく2番目に悪質な戦争犯罪と言えるでしょう。特定の子供達を親から物理的に引き剥がし洗脳教育。情報工作員あるいはゲリラ戦要員として調教された彼等は様々なトラブルを起こしています。
幸いにも育成が始まったのは大戦末期から大半の場合、本来の家族に再会する事で呆気なくマインドコントロールは溶けましたが…もしも“遊びの時間が終わっていない”子供がいたら?
という裏テーマがあるのがこの小説でした。
※もうひとつの裏事情として敵の種類が変わってしまった事も有りますが物語とは無関係ですからここではあげません。
洗脳が溶けないまま表向きは素直で優しい娘を演じていた“それ”の本質は同級生の子供達には見抜かれていました。
有色人種やユダヤ人への陰湿な差別行動から徐々に社会的に孤立していった“それ”は養父母と死別。孤独な人生を送り行きずりの男性との間に“私生児”を産みだします。
“祖国の為にアメリカ人に報復を”
我が子を復讐の道具に仕立て上げる“0歳からのテロリスト養成”が始まりました。
表向きの性格は養父母の教育を参考に正義感の強い紳士として。裏側は熱狂的なナチス党員しかも“人狼”として育てられ、しかも母親の“性のはけ口”として育った歪んだ化物“オットーの息子”は軍隊に入ります。
学生時代も優秀な成績。入隊後は穏和で協調性があった彼は念願の化学戦特殊部隊に所属。それは母親を名乗る“それ”の夢でもありました。自我を破壊された“オットーの息子”は母親の死を契機に命令を遂行します。10数年に渡り忠実な兵士として共に任務にあたった同僚を惨殺。
彼に与えられた命令は己が技術を駆使し1人でも多くのアメリカ人を殺す事。準備は全て完了していました。“スーパーボウル”の巨大なドーム会場に仕掛けられた多数の“神経ガス発生装置”は刻々とタイマーをカウントしています。
…物語のクライマックスは満員のスーパーボウル会場。集まった数万人の観客に気付かれパニックになる事なく“神経ガス”の無効化。犯人逮捕あるいは射殺は成功するのか?
まあ意外極まりない方法で事態は解決。
そして洗脳教育で自我が無い筈の“オットーの息子”の意外な犯行動機については再版決定したら自分の目で確認下さい。
※ここ迄書いて漸くうっすらと思い出したんですが…犯人の動機が気持ち悪過ぎてエロ描写書くより危ないという事で“覚えて無い”という事にしといて下さいな。
ガス発生装置の停止方法は時限爆弾の処理にも使われる冷却方式…で合ってる?なやり方です。絵的には地味ですがリアル感が凄かった。
ではまた次回。




