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デザート・ライオン 95年

2016年7/15投稿 2018年12/27改訂開始〜

【イラン・イラク戦争における激戦地の1つバスラ攻防戦…RPGと無反動砲しか所持していないイラン軍革命防衛隊15万名vsイラク軍機甲師団20万名が真っ向勝負でぶつかった“カルバラ5号作戦”を初映像化。現地の映画館では大ヒットしたそうですがそもそも日本じゃバスラもイラン・イラク戦争も知らない人ばかり……という事で“T55大戦車軍団vs人間バズーカ砲”でアルバトロスが宣伝しまくった戦争映画。勿論登場人物全員男しか出てきません。】


✳一応ノンフィクションとなってますが国防軍全面協力作品ですので実情についてはお察し下さい。大都市防衛だけど民間人皆無な辺り(苦笑)


原題:PRAYER-CARPET OF FIRE

祈り/砲火の絨毯.

イラン劇場公開作品.

日本未公開.

1998年ビデオ発売.


 当時レンタルビデオで1度見たきり…正直埃塗れな上にどいつもこいつも口髭と顎髭で誰が誰だか分からないドワーフよりも区別不可能なキャラクターばかりの為、もう二度と目にする可能性は無いだろな…とそう思ってましたがイロモノ系のマイナーな動画サイトに予告編見付けて軽く狂気乱舞致しました。まあ諦めなければ何れDVD化も夢じゃ無くなるのかも知れません。但しタイトルは変わるんだろうなぁ流石に…という訳で前回に引き続き当たり外れが滅茶苦茶デカい映画配給会社アルバトロスのイラン産戦争映画の話でございます。興味あるお客様のみしばしお付き合い下さい。


まずはこの映画撮られた裏事情から…戦争中に大量の石油目当てに売り込まれた自称高品質を誇る中華人民共和国新型戦車。旧ソビエト連邦現ロシアのT54/62型戦車をコピーした59/69式戦車は(中国側は改良って事になってます)“石油バーター取引”でイランに大量に送られて来ましたが致命的な欠点が有りました。とにかく簡単に壊れるんですよ…同じ頃にイラク共和国も中国側と戦車の大量購入交渉。こないだ迄戦争やってた両方の国からの大量注文に舞い上がった中国政府は“品質後回しノルマ最優先”で大量生産を進めました。値段は欧米諸国が販売拒否し東欧諸国が政治的混乱期で余裕が無いから阿呆みたいな強気価格。

品質は勿論密造拳銃レベルです。多分走る。


この文章書くにあたって色々調べたんですがイランイスラム共和国が輸入した中国製戦車の正確な数は不明なままです。初回納品数は200両…あれから四半世紀が経った現在も200両残ってるという事はかなりの数購入した筈です。納品された戦車の品質にショックを受けたイラン陸軍は追加購入に大反対クレームに逆ギレする幼児とは縁を切り丁度政治的混乱期が収まって外貨や石油が必要となった東欧諸国から中古・新造戦車を改めて仕入れ直してます。例えばポーランドだけでも工場直送でT72戦車200両〜合計おそらく1000両程度は手に入れました。


イラク共和国は同じ期間で最低で2200両全て中国から購入してます。そういう理由で走るどころかいつ“チャイナボカン”してもおかしくない戦車は豪快に廃棄処分する事になりました。置いといても粗大ゴミだし……


※この時代台湾や日本もかなりの迷惑被ってます。暴力団に連番で納品されるトカレフ。RPGや迫撃砲等…。


実際イラン・イラク戦争で活躍したのはパフラヴィー王朝時代に購入した欧米諸国の戦車です。イラン陸軍は1925年の創立時より戦車隊を持った軍隊です。主力は“核戦争の最中でも紅茶が楽しめる”英国の化物戦車チーフテン780両(実は英国よりも所有台数多かった。)後はアメリカ製M47/M48/M60の通称パットン戦車が1300両以上の大所帯でした。後、M113装甲兵員輸送車も1000台以上運用してます。部品弾薬は飛行機同様イスラエル経由で世界中から入手。欧米は表向き禁輸政策やってる事になってますが儲け話に乗らない武器商人はこの世に居ません。リアルマッコイ爺さんは世界中で暗躍しました…最もこれだけの戦車の大半が開戦後僅か2年で250両に激減しています。消耗戦っておっかねえです。


※地上戦で活躍したもう一つの存在が多数のアメリカ製ヘリコプターと対戦車ヘリ・ヒュイコブラ部隊。更にはC130輸送機等も活躍しています。



【戦車で紅茶?馬鹿なとお思いでしょうが事実です。イギリス人紳士淑女の常識を舐めんな】


 “戦闘中も安全にティータイムを楽しみたい”


英国第8軍指揮官オコーナー少将を筆頭に多数のイギリス人のリクエストで開発された装備品。


第2次大戦中に開発

大戦末期遂に実用化に成功した余熱利用の湯沸かし器は初代センチュリオン巡航戦車から最新鋭のチャレンジャー重戦車迄全車完備されています。


※チャレンジャー重戦車はチーフテン戦車の後継戦車として開発費全額イラン王国持ちで製作されました。パウラフィー王朝政権崩壊を理由に費用返還要求踏み倒してます。意外とセコいなあいつらは。


※合同訓練でこの事実を知ったアメリカ軍、フランス軍、イタリア軍がまるで馬鹿を見るような目になったのは言うまでも有りません。


お茶だけで無くレトルト食品の温めにも活用されてます。

…普通に水筒持ち込んだり飲食ぐらい戦争中は妥協しろ!!

と言いたい所ですが

英国紳士淑女は日常の食生活が見事にガマン大会の為、

ティータイムは絶対自重しません。なんせ1950年代迄一般主婦層の食生活で重要な栄養補給はティータイムの軽食と紅茶に入れる砂糖やジャムでした。


…なんかイギリス人がスズムシかホタルに見えてきた。


伝説のスターゲイザーパイといい缶詰め食品を焼いただけのイングリッシュブレックファーストといい日本のバラエティー番組で芸人が罰ゲームで挑戦しそうな料理が多数存在します。

まさか全員重度のマゾって事はないですよね流石に。


第2次世界大戦の莫大な戦費負担返済と戦後の植民地独立運動による動員や増税の貧乏神無限ループに入った大英帝国は前回書いたイラン王国の石油マネーでボロ儲けしているにも関わらず国内の生活はカツカツでした

1960年代後半に漸く一般市民が週末にローストビーフを楽しむ生活になります。多分。


まあそれ以降もEUの前身NATO=北大西洋条約機構や、アメリカ合衆国が数年毎にやらかす無駄な戦争に付き合わされて中東戦争~対自称イスラム国戦争、おまけに世界中からやってくる自称難民の面倒押し付けられたりと

日本政府よりヒドい目にあってるんですが面倒臭い話ですからスルーします。


はっきり言って積年の報いあるいは自業自得です内情見てるとEUから逃げたくもなる気持ちは良く解りますけどね。



イギリスに紅茶が伝来したのは1657年。

オランダより中国の秘伝薬品としてでした。

その後1662年にポルトガル王室よりチャールズⅡ世に嫁いだフリル・オブ・ザ・ドリルなお姫様。“キャサリン・オブ・ブラガイザー”により中国白磁の茶器とティータイム文化が王室に持ち込まれます。


…洗練された祖国からいきなり“ど田舎の飯マズ文化の国”に嫁入りさせられ不満たらたら(怒)

側近達はせいぜいフランス語が話せる程度の芋侍な蛮族ばかり(怒怒)

トドメに旦那は妻を怖がりあちこちで浮気(怒怒怒)そもそも後宮に寄り付かねぇ(怒怒怒怒)


怒怒怒ドッドッドッドッDoDoDoDoDo………………ドリルの破壊音が後宮に響きわたりフリル・オブ・ザ・ドリル改め“茶会夫人”と化した彼女は後宮とイギリス全土の文化改革に着手します。


「それって旦那に相手にされない八つ当たりじゃな…」『コロスぞテメェ!!』


貴重な砂糖をふんだんに使い白磁の茶器で連日茶会を開いた彼女の努力で

ティータイム文化は貴族達にたちまち普及。


1800年代になるとロンドン市内には喫茶店がオープン。


それ以前の嗜好品

大麻・阿片・コカイン・酒・煙草の風習を追い詰めるように普及が進みます。


紅茶・緑茶・コーヒー・ココアの販売が始まり富裕層にもティータイム文化が定着します。コーヒーはイスラム文化=異教徒の飲み物として定着出来ず緑茶も同様。


チョコレートとしても人気になったココアと紅茶だけが生き残ります。


一般庶民がティータイムを楽しみ始めたのは産業革命に入ってからです。

紅茶がインドで大量生産。品質はそこそこ値段もそれなりに安い茶葉が出回る様になってからでした。


…とここ迄お馬鹿な話書いたのはかなり陰惨で血まみれ展開だからです。

そもそも活躍なんざ一切してない空軍は娯楽作品として遊べましたが地上戦はねえ…


まずは悪名高いイスラム共和国革命防衛隊誕生の物語。


次に娯楽優先の映画ストーリー


陰惨な史実と狂信者の末路にそれからどうなったかは最後に回します。



【時代はイランイラク戦争開戦3年目。主人公兄弟が所属するのは悪名轟く革命防衛隊です。】


 イランイスラム国革命防衛隊。それはイラン革命の際誕生した民兵組織が原形です。宗教指導者と危機感を持った官僚、一般庶民、大学生達が中心となり成功させた市民革命ですが、

1979年のイランイスラム共和国設立の影で既に派閥対立は始まっていました。

それはフランスに亡命していたシーア派宗教指導者アヤトラ・ホメイニのイラン帰還で顕著になります。


宗教指導者=国家の最高指導者として厳格にルールを守らせ

敵対する全ての宗教、表現の自由、寛容的な価値観を完成否定。

シーア派宗教指導者による世界革命を訴えかけた彼は


当然ですがイギリス政府、パフラヴィー王室、隣国でシーア派宗教問題を抱えるバース党サダム・フセイン、アラブ地域で共産党政権樹立を目指すソビエト連邦政府の全てを敵に回しました。


国外に追放され、パリ市内で何故かアメリカ政府に面倒見て貰ってたこの狂人。

逃亡先でも命を狙われ父親と息子が暗殺されたと言われてます。彼は復讐を誓い益々狂気に身を委ねます


イラン革命で拘束されたアメリカ大使館の人質解放の条件の一つがホメイニ氏の祖国帰還でした。

かくして80歳の狂刃は野に放たれます。


宗教指導者として忽ちの内に国内の宗教勢力を掌握、

上手く洗脳出来た学生を集め親衛隊として運用を始めた組織が“革命防衛隊”です。


平均年齢は16~17歳

中には10~12歳の少年兵も居ました。

軍事訓練はホメイニ氏派の宗教指導者が担当。頭がアレな連中に戦車や航空機の操縦指導が出来る筈も無く基本は銃の撃ち方とRPG対戦車ロケット砲の撃ち方だけ。

後は宗教だけです。

以降イランイラク戦争勃発の中穏健派の政治家や軍部と敵対。イラク軍快進撃による石油精製施設の防衛の為、政府敵対を一時休戦。


軍部とは別に防衛ラインを勝手に設定。

塹壕やタコ壺を掘り下げ敵の襲撃に備えた所が映画の冒頭シーンになります。



【あれから10年、当時の生き残り達が役者となって撮影参加してますので外見上全員オッサンとドワーフになりました】


 ストーリー自体はマカロニウェスタンで“エルアラメン”な戦争映画のアレを現代風にリメイクしてます。


先の裏事情は一旦蹴り飛ばして進めます防衛準備は終わり敵は何処から来るのか?髭兄(指揮官)髭弟(副官)が話し合う最中に丘の上から大量の戦車が……映画の冒頭から見渡す限りのイラク軍戦車が襲ってきます。


機関銃で蜂の巣にあるいは主砲で木っ端微塵。火炎放射で火達磨にされる防衛隊。

その一方で地雷を担ぎ戦車の下に潜り込み自爆する兵士。

手りゅう弾を持ち戦車によじ登る兵士。

主人公達は塹壕から身を乗り出し次々と撃たれながらもRPGの一斉射撃で敵戦車を撃退。

防衛隊は初日で戦力の半分を失います。


その翌朝敵戦車は再び大軍で襲ってきます。戦車の前に縛り付けられているのは別の戦線で捕虜になった味方の兵士達でした。


「頼む!殺してくれ!!」


主人公達は泣きながら戦友の頭を狙撃。

死んだ兵士が縛り付けられた戦車を集中攻撃。火炎瓶で火達磨にします。


翌日、生き残りの防衛隊は僅か11名。

再び大軍で襲い掛かる戦車隊にとうとう包囲され降伏勧告を受けますが捕虜の最後を知っている彼等は断固拒否。

戦車隊による処刑直前、ナパーム弾を満載したF4Eファントム戦闘機部隊が主人公達の目の前で戦車隊を木っ端微塵。


翌朝漸く味方の増援部隊が到着。

生き残った彼等はくわえ煙草で敬礼するのでした。


…ストーリー自体は生身で戦車に挑む悲惨な展開なんですが

登場人物全員が敵味方関係なしに楽しんでいるのを感じる映画です。


みんなポーズが香ばしいというか決まってます。


【とある狂信者の末路と悪魔の詩そして殺戮行為の結末について】


 今では“第1次湾岸戦争”と呼ばれるイランイラク戦争。

仕掛けを作り出し憎悪を煽り当事者達を地獄に追い立てた責任者の殆どが一切反省すらせずにあの世に逃げ込みました。


英国石油メジャーのBPは何食わぬ顔で平然と今も営業してます。まあドイツやフランスも科学兵器や核兵器供給やってますなあ。


とりあえず戦争がどんな風に終わったかと言いますと

イラク側40万人が戦死または行方不明。

イラン側100万人が戦死または行方不明。


結局ホメイニは穏健派を追放あるいは暗殺し権力を掌握。

子供や年寄り迄革命防衛隊に編入して戦線に送り込みましたが情勢は悪化の一途を辿ります。


なんせイラク側にはほぼ全ての勢力がつきました。

遂にはアメリカ海軍が原油タンカー保護の名目で介入しイラン海軍は壊滅的な被害を被ります。


それでも戦争を諦めないイランにある悲劇が…88年7月3日アメリカ海軍タイコンデロガ級イージス巡洋艦ヴィセンスによるイラン航空655便へのミサイル攻撃。

290名の無辜の乗客乗員をわざと殺害したこの事件。

世界中のマスコミが見てみぬふり…。

この事実が戦争継続派の心を折りました

イラン政府は停戦交渉仲介を国連に依頼

9年間も延々と続いた戦争は終わります。


翌年の1989年狂信者アヤトラ・ホメイニ死去…後任のハメネイ氏は現実路線に方針を切り替えます。大統領もラフサンジャニに代わり戦後復興を始めようとした矢先。


ホメイニの教え子達が新たなテロを起こしてしまいます。

“悪魔の詩”原作者と翻訳者を狙った暗殺事件です。


死にかけの狂信者が出した暗殺命令をイラン政府は止める事が出来ませんでした。日本でも翻訳に参加した筑波大学の教授を惨殺。

事件は未だに解決していません。

原作者は未だに命を狙われ翻訳に関わった人々の暗殺被害は40人を超えました。


イランイスラム共和国革命防衛隊はホメイニ死亡以降教育方針を徐々に転換します。

志願制はそのままですが基本的な軍事訓練は陸軍に準じ

国の治安を守るエリート集団に変わりつつ有ります。親衛隊はそのままですが。


宗教指導者と一般庶民の対立はまだまだ有りますが以前に比べると現実的になりました。

女性の社会進出も一部で抵抗があるものの中東では考えられない自由があるそうです。


但し戦争未だに終わってません。

現在の敵は“自称イスラム国”シリアやイラク各地に拠点がありアメリカ軍もロシア軍もアラブ連合も軍事介入中です。


宗教絡むと殺し合い終わりませんなあ。






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