さらばロンメル 88年
前回の話で色々やらかしましたが
事実と虚構を混ぜ合わせた作品。
実は大好物です(笑)
という訳でアメリカ観光する砂漠の狐を描いた物語。
2016年7月9日
第2次大戦アフリカ戦線において事実関係と人物に間違いありましたので訂正致します申し訳ありませんでした。
2016年7月11日
まさか“ミリ姫大戦”なんてあるとは
しかも美少女化してる(^_^;)
【エルヴィン・ヨハネス・オイゲン・ロンメル45歳初めてのアメリカ旅行ドタバタ記】
原題:RommelandtheRebel.ローレンスウェルズ著.扶桑社ミステリー文庫上下巻で出版されました。
出版当時映画化が決まっていたんですが、上巻の大事なシーンで色々揉めましておそらくアメリカ合衆国の検閲基準が変わるか国そのものが崩壊しないと映像化が難しい小説です。
あれから早数十年、アメリカ国内に検閲が大好きな異物がどんどん混入してますから、小説もテレビも最近では昔の名作映画すら検閲しようとするシロアリ共……………
そろそろ駆除が必要だと思います。
日本ならまったく何も問題にならないんですがターゲットが限定されるからせいぜいコミック化ぐらいですかね。
言論の自由と民主主義…悲しい事にアメリカ合衆国から既に消え失せました。
現在進行でドンドン様々な言葉が使えなくなりました。
東洋を表すオリエンタルもインディアンもビーンズ(ヒスパニックの揶揄)もニグロも人種差別だから公用禁止。
飲食物や嗜好品も酒/タバコ/コーヒー/炭酸飲料/ハンバーガー/ホットドッグ/ステーキも規制。そこに有るだけで食べて肥るから。
でも大麻はOKという辺り本当に病んでます。いっそのこと阿片やヘロインも解禁したらどうですか?
中国も北朝鮮もお隣りのメキシコマフィアも喜んで売ってくれますよ。
………前回の毒が未だ抜けてませんね本筋戻します。
物語の舞台は1937年ニューヨーク、マンハッタン島の名物自由の女神を船から見上げる5人の外国人旅行者の姿を描写するシーンから始まります。
グデリーアンの意見具申、総統自身が人選した5人の正体はドイツ第3帝国の将来を担う有望なエリート軍人達。
仮想敵国となる可能性もあるアメリカ合衆国を訪問する彼等の目的は、技術力&工業力の調査でした。
1行のリーダー、モーデルやマンシュタイン等錚々たるメンバーは偽名で潜入する重大任務に身を震わせる程緊張していましたが、まるで子供の様にはしゃぎまくる45歳児が……………オイ。
第1次大戦で圧倒的戦力のイタリア軍大隊を口先ひとつで降伏させ武装解除。
山岳部隊の英雄で著書“歩兵の突撃”が世界的ベストセラーとなったロンメルの姿がそこに有りました。
本を読み熱心なファンとなった総統の直属護衛隊長となった彼は急遽追加されたメンバーです。
アメリカを訪れたロンメルの目的は自身の戦い方のルールとなった南北戦争における南軍の英雄“ネイサン・ベッドフォード・フォレスト将軍”の足跡を訪ねる事でした。フォレスト将軍って誰?と皆さんお思いでしょうが後からロンメル将軍の足跡含めて説明します。
モーデルは川へ洗濯に
マンシュタインが山へ芝刈りに……じゃなくスミソニアン博物館や見学御願いしていた航空機工場、自動車工場へ向かう中
※自動車のフォード
飛行機のカーチスライト電算機のIBMに科学薬品のデュポン等々
親ナチスで反ユダヤ人、反共産主義な経営者、沢山居たんです。
アメリカナチス党も結成され定期的に集会が行われていました。
ある理由で最下級士官だけど自由に動けるロンメルだけが向かったのはニューヨーク市内でした。
タクシーを降りて金門橋を歩いて渡り。
初体験の野球場でホットドッグを頬張りながらゲームを楽しみ。
選手がクチャクチャやってる噛み煙草やルールについてたどたどしい英語で隣りで盛り上がるオッサンに質問し会話を楽しんだり
……更には列車に飛び乗り尾行者を引き連れてゲティスバークの戦いを再現したお祭りに飛び入り参加。
両軍の戦端を1望出来る頂上を目指し断崖絶壁を命綱やハーネス無しで登りきってはしゃぐロンメルは祭りの参加者達から大絶賛。
締めの宴会に参加します。
宴会で意気投合した相手はノーベル賞作家のウィリアム・カスハート・フォークナーと上官の命令でこっそり尾行していた筈の合衆国情報部に所属しロンメルの著書“歩兵の突撃”を研究していた
新米情報将校マークス・スパイグナーでした。
妙ちきりんな2人を気に入ったフォークナーは休暇中と言い張る彼等を自宅“ローワンオーク邸”に招待。
昼間は大型バイクでフォレストも走り回った農道を疾走し
夜は暖炉を囲みウイスキーを飲み交わしながら
フォークナーが纏めていたフォレスト将軍の記録を2人に語り聞かせます。
【南北戦争の原因とサドルの魔術師ウィリアム・ベッドフォード・フォレスト将軍】
日本の教科書ではせいぜいゲティスバークの戦いにリンカーン大統領による奴隷解放宣言程度の説明で省略されますが南北戦争は現代に至るまで禍根を残した陰惨な内戦でした。
2016年現在も南軍所属だったかつての軍人達は逆族の犯罪者。
銅像を破壊し南軍旗や軍歌の禁止要請、最近では存在すら無かった事にし歴史から抹殺しようとする陰険な嫌がらせが続いています。
昔は問題無かった南軍旗も州や町によっては飾ったら逮捕に法律をねじ曲げました。
当事者でも無い国に不細工な売春婦の銅像建てたり
中国共産党が支配する町はOKなのに変な話です。
南北戦争のそもそもの原因は労働環境の違いからでした。
北軍に所属した州は工業地帯が多く景気によって従業員の安易な首切りを行いたいと労働法変更を希望していましたが
※んな銀行屋しか儲からない自分勝手な考えは当然恨まれ北部は移民によるマフィアが生まれます
南軍に所属する州は多くは農業地帯。綿花栽培は特に海外からの需要も多く、年間を通し奴隷も含めた多数の安定した雇用人員が必要で労働法変更に反対していました。
そもそも南部に富が集中する事自体が気に入らない北米はリンカーン大統領を擁立
奴隷解放を法律化し経済の弱体化を図った北部勢力に反発した南部11州は“アメリカ連合国”として独立。
独立を認めない北軍は工業力をバックに圧倒的な軍事力で南部に攻め込みます。
徴兵した素人兵士に抵抗する女子供老人まで容赦なく殺害させる為、
大量の銃や大砲を導入すると共にアルコールやコカインや阿片モルヒネ等を兵士に投入しました。
理性を奪われ半ば狂刃と化した兵士により捕虜や民間人の虐殺が横行。おまけに戦後大量の薬物中毒患者を生み出します。
志願兵を中心とする南軍も報復として捕虜の虐殺を行い戦後も長らくゲリラ戦を展開しました。
1861年~1865年まで南部中心に繰り広げた戦いの人的被害は最悪で国内の治安は大統領が暗殺される程大混乱。北部から乗り込んだ銀行家や崩壊したインフラ整備にやって来た鉄道屋による南部民間人の資産略奪&虐殺行為は続き
かつてのアメリカ連合国は“マカロニウェスタン”の様な無法地帯になります。
海外遠征する余裕も人員も無いからペリー来航以降、長らく日本は放ったらかしになり明治維新に介入出来ませんでした。
よし、何とか纏まったでは“フォレスト将軍”の話です。
忠誠を誓う幹部候補の黒人奴隷44名と共に南軍編成に志願した大地主ネイサン・ベッドフォード・フォレストは装備の貧相ぶりに我慢出来ず、自らの資産で部下となった志願兵士達の馬に制服~弾薬や銃、結局給料迄負担しました。
大隊~最終的に連隊規模に膨れ上がった彼等は南軍最強の騎兵戦力となります。
ちなみに奴隷商人でもあるフォレスト直々に一般教養から騎兵技術迄学んだ、下手なボンクラ白人より頭の良い黒人奴隷→親衛隊は戦争終結時65人に増えてます。
内黒人でありながら士官になった奴隷は8人も居ましたが色々都合が悪かった合衆国歴史家によって黒歴史となりました。
後に機甲師団で再現されるフォレスト騎兵隊の戦術理念は
“大胆に!より大胆に!!”
※ガールズ&パンツァーのサンダース女学院戦車道部長おケイさんの
「OK!OK!!ガンガンゆくよ!!」と同じです
独立部隊として相手の背後更には後方支援部隊に襲い掛かり
ある時は北軍の襲撃を知らせに来た少女を抱えて銃弾の雨を騎兵で突破
ある時は居もしない増援部隊の存在をちらつかせ敵を翻弄
弾薬も食料も敵の物資を根こそぎ奪い取る。
戦場から戦場へ部下を引き連れ財産はスッカラカンになったとはいえ、しっかり生き残った彼は
戦後元奴隷達と共にがむしゃらに働き多くの部下に見守られながら自宅の荘園で堂々と生涯を終えました。
※また日本の文月学園創設に関わり異端審問部の初代部長……………違う文章が混ざりましたね失敬正確には南部における抵抗組織KKKの創設者ですが組織が黒人排除にねじ曲がってからは離反。
組織の弾圧&メンバー摘発に協力してます。
ちなみに意外に思われるでしょうが現在の彼等、影でコソコソ人種差別やってる連中より紳士的です。
まあ爺さん婆ちゃんばかりだしねえ。
小説のこのシーン。
フォークナー先生がまるで見て来たかの様に生き生きと話すから
ロンメルとスパイグナーがまるでおとぎ話の英雄伝聞いてる子供みたいになってます………オイこら45歳児
※フォレスト将軍を歴史から抹殺したい人権擁護団体の圧力は未だに酷く証拠不十分とは言え黒人捕虜200人の虐殺疑惑もあります。
一応未だに名誉会長だし。
後に様々な小説が産まれる場所となる“ローワンオークス邸”での休暇は終わり謎のドイツ将校は仲間と合流、再びニューヨークへ
祖国に戻る彼等を見送るスパイグナーは彼にある本へのサインを御願いします。その本のタイトル“歩兵の突撃”に本名エルヴィン・ヨハネス・オイゲン・ロンメルとサインした彼は客船のタラップを軽快に駆け上がってゆきました。
…ここまでが上巻
では閑話挟んでで下巻突入します。
【下巻に再登場までロンメルが何してたかと言いますと…幽霊師団~砂漠の狐誕生編】
帰国したロンメルはヒトラー総統に直談判。総統直属護衛隊長からグデリーアンが準備を進めていた新しい組織、機甲師団への転属を願い出ます。
少将に昇級し希望通り晴れて新設の第7機甲師団指令官として前線勤務。
装備は貴族出身の先輩方と親衛隊優先となった為、機甲師団とは名ばかりの自動車化部隊でした。
ところがロンメルはフランス戦で予想外の大活躍をします。装備が足りないなら敵から、あるいは威張りくさる親衛隊の備品を奪い取り、誰よりも大胆に!暴れ回ったせいで“幽霊師団”の異名を轟かせ。
ついでに親衛隊と上層部、特に参謀本部全員に滅茶苦茶嫌われました……Uボート乗りじゃあるまいし作戦行動中は通信を勝手に途絶。状況説明を要求する他の部隊にも何やってんだか説明出来ない。……上司から見ると最悪です(笑)そりゃ左遷だわな
結局ヨーロッパ戦線や東部戦線からも候補から外され
イタリア軍が大苦戦しているアフリカ戦線に飛ばされます。
ちなみにエジプト占領を目指し20万もの大部隊を投入した彼等、英国中東派遣軍司令“隻眼の貴族”アーチボルト・パーシヴァル・ヴェーベル大将と第8軍指揮官“戦車で紅茶の”リチャード・オコーナー少将に敗北。
ギリシャ支援で中抜きされ、わずか5000人に激減したイギリス軍にリビア沿岸部都市キレナイカに包囲され壊滅寸前でした
イタリア軍救援部隊として編成された
“アフリカ軍団”例によって軍団とは名ばかりの戦力。
歩兵半個師団…しかも1部除いて戦力は元フランス外人部隊に囚人部隊、壊滅した元空挺部隊の残骸
機甲2個師団…1個は後から追加、戦車は旧式&練習用の機関銃のみ搭載、後から中戦車追加予定。空軍はまあそれなりの戦力と有名な88ミリ対空砲部隊投入。
……なんつーか犬猿雉の戦力で鬼ケ島全面制圧して来いと無理難題突き付けられたロンメルは考えました。
まず自動車やトラックを隠せるサイズのベニヤ板を購入。
工兵達と一緒に戦車の形に加工。
リビア首都トリポリでは同じ戦車を番号貼り替えて次々行進
砂漠では戦車に化けた自動車部隊が砂煙………。アホかとお思いでしょうが恐ろしい事に写真&記録映像付で残ってる事実です。
ところが戦力中抜きで余裕が無かった第8軍は見事に騙され
イタリア軍は包囲網からの脱出に成功しました。
まあそこで止めとけば良かったんですが
そもそも攻めて来てるイギリス軍は僅か5000人。
装備も戦力も無い無い尽くしの筈なアフリカ軍団は突撃しました。
オコーナー少将が捕虜になる等被害続出しましたが
結局土壇場で踏みとどまったイギリス軍に手痛い反撃を受けたロンメルは兵力と物資補充の為、進撃停止。
下巻のファーストシーンとなります。
【1941年アフリカ。トブルク攻防戦のアメリカ軍の切り札は?】
最悪期の戦場を土壇場で生き残った英国中東派遣軍は司令官ヴェーべル大将と選抜部隊が日本と戦っているインド方面軍司令として移動。
※“砂漠の戦争”では栄転と書いてありますが…左遷です。その後インド総督となり彼の戦争は終わります。
本国より新たに派遣された“紳士的なオーク”クルード・ジョン・エアー・オーキンレック大将を後任に戦力の大増強。
更には枢軸国に宣戦布告したアメリカ軍の戦力+装備品の増援を受ける事になります。
戦車も従来のマチルダⅡやクルセイダーに加え、新型のバレンタイン戦車。アメリカ製のM3スチュワート(イギリス名ハニー)軽戦車&M3グラント中戦車を大量配備。400台の大部隊となりました。
対してアフリカ軍団を主力とする枢軸国は
(人数と装備はイタリア軍が遥かに上。戦車も機関銃のみのカルロベルーチェ主力からM13/18中戦車に)
追加で補充兵や長砲身の4号戦車をある程度受け取ったとは言え名ばかりの弱小軍団に変わりは無く。
偵察機等の情報で自らの圧倒的有利を知った連合軍は自由フランス軍やオーストラリア軍南アフリカ軍迄加わる形で“クルセイダー作戦”を開始。
アフリカから枢軸国の追い出しにかかります。
作戦自体は順調
ところが部隊はあちらこちらで大損害を被ります。
新型戦車は仕掛け爆弾と対戦車砲&戦車による釣り野伏せりで撃破。
……工兵隊が準備していた回収車で負傷兵ごと持ち帰り。
応急修理後はドイツ戦車としてあるいは戦車回収車として大暴れ。
※補給が空も海からも届かない(大半は海の底)から使える物は戦車からパンツ迄全て再利用。
結果的に連合軍同士の誤射や爆撃ミスも多発します。
捕虜になったイギリス軍将校ヤングさん
(スパイグナーの実在のモデル。後に砂漠の鬼将軍原作者)
の証言では
食事はアメリカ製のコンビーフにイタリア製のパスタ。
煙草はロンメル本人からラッキーストライクもらったそうです余ってるから箱ではなくボールで…
勿論ドイツのミリメシはヨーロッパに送られる迄見なかったとあります。
空は従来のイタリア複葉機空軍とは段違いのドイツ空軍戦闘機が大暴れ。
後方エジプトはカイロから作戦指揮する連合軍幹部の対応は遅れに遅れ、
逆に必要なら自らシュトルヒ(軽飛行機)を操縦し
あるいは敵からギッた機動牽引車
(愛称まんもす)
で最前線で兵士と一緒に暴れるロンメルは敵から“砂漠の狐”と呼ばれる事になりました。
……史実では補給線が伸びきった所でエジプト迄続く道の中間地点トブルク迄一気に奪われエルアラメインで防衛一息ついた所でオーキンレック大将は解任。
インド総督になったヴェーベルの代わりにインド方面軍司令で実質左遷となる訳ですが。
小説ではアフリカ軍団は想定外の被害を受けて一時撤退します。
ありとあらゆる所に的確な罠。予備兵力を的確に相手の弱点に送り込む。
大活躍する米軍の影にはロンメルの戦い方を知り尽くした情報参謀が居ました。
そう、かつて“ローワンオークス邸”で酒を酌み交わしながらフォークナー先生のフォレスト将軍物語に聞き入ったマークス・スパイグナーの姿が……。
“砂漠の狐”の裏をかき上官やイギリス軍から皮肉混じりに“ロンメル”と呼ばれる“スパイグナー”
偶然、特ダネ目当ての新聞記者の飛ばし記事からスパイグナーの存在を知り、同じく相手に罠を仕掛ける“砂漠の狐ロンメル”
下巻は虚実交えた彼等の戦術&頭脳戦が繰り広げられます。
物語のクライマックスは第2次トブルク攻防戦。
……但し作者の意向で主人公達の戦いに邪魔な連中、モントゴメリー/アイゼンハワー/パットンの出番は有りません。ついでにページ喰うだけのヘタリア軍の出番も無しです。
クライマックスは壮絶なトブルク攻防戦なんですが~そこで終わってれば名作となった物語でした。
敢えて続きは書きません……。
では。




