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夜は千の目を持つ 45年

2014年3/8ガラケー投稿 2019年1/20タブレット端末にて全面改稿開始〜6/14午後脱稿

【 未来視……いや自覚無き未来測定&固定の能力を持つ神様紛いの異端者が告げた死の予測は防ぐ事が出来たのか? 今から70年以上昔、ミステリー小説の探偵か刑事になったつもりでお気軽にページ捲った読者を恐怖のドン底に叩き込んだ物語。映画版はヒロインに昔自らの失策で命を失った恋人の面影を感じた未来測定者が運命を捻じ曲げる為に命を投げ出すストーリーでしたがオリジナルは定められた破滅の未来?或いは何者かが介在する陰謀を明らかにする為にニューヨーク市警の刑事達が命懸けでそれに立ち向かう物語となりました。 】


★ジャズの名曲で同題名の主題曲が演奏された映画版についてはいずれ視聴してから……学生時代の思い出の小説を○年振りに入手出来たんで(もち新訳版)支離滅裂だった全文書き直させて頂きます(^^)


原題:NIGHT HAS A THOUSAND EYES

夜は千の目を持つ

アメリカ ミステリー小説.

1945年ウィリアム・アイリッシュ著.

☆実はコーネル・ウールリッチ

1959年創元社推理小説全集で日本版翻訳.

1962年文庫化〜1979年再翻訳版文庫化

〜2005年の17版で一旦廃版.

2018年新訳版で販売再開.

何れも創元社推理文庫から.



 5年前この物語を取り上げようと思い立ったのは“空の境界・未来福音”で未来視のエピソードが出てきた事から連想的に思い浮かんだ訳ですが細かい描写なんざ覚えている筈も無く登場人物の紹介を書き綴る事になりました。学生時代の私にとって自宅と共に手元から失われたお気に入りの小説だったんですけどね…ストーリーも好きだけどあの独特な表紙イラストもね。月に照らされ赤紫のグラデーションに輝く闇夜の中そびえ立つ菩提樹(エルム)と鍵に砕かれた卵の表紙が特徴的だったその文庫本は白蟻に食われて読み返す事が不可能となり泣く泣く廃棄。何故かアマゾンで出回る中古本に手を出す気にはならず今に至ります。


タブレット購入してから初期の稚拙な原稿を合間合間に書き直しながら何気なく映画版のDVD検索してたら新約版で販売されてるらしいとの情報が……つー訳で久し振りにジュンク堂書店に駆け込み前々から読みたかった笹本祐一の“放課後地球防衛軍”と一緒に購入。手に入ったのは嬉しいけど“旧版の倍以上に跳ね上がった販売価格”に軽く引きました。例のディズニーブランド保護の為ダメリカが改訂した著作権法が原因らしいのですがこんな阿呆な事繰り返すといずれアメリカのペーパーバック文化衰退するぞとそう思うねあたしゃ。


旧版との最大の違いは表紙写真と謎多き小説家ウィリアム・アイリッシュの悲しき生涯(笑)母親の介護の為にホテルから1歩たりと外に出た事が無く彼女の死から程なくして命を絶った……という出鱈目な経歴。勿論ウールリッチの挨拶兼ねた悪ふざけ交じりの書き下ろし短編だったのですが途中までしっかり騙された私が居ます。流石に悪趣味と判断されたのか今回後書きはマトモです。


それにしても久し振りに読み返すとヒロイン“ジーン”とその父親“ハーラン・リード”問答無用の被害者であり散々な目に合わされた挙げ句、最後には破滅する訳ですが…どう考えても自業自得です。 寧ろこんな上から目線で傲慢極まる馬鹿な親子についうっかり親切にしたばかりに変な人間やニューヨーク市警につき纏われ、最終的に碌でもない終わりを迎える未来視で有り過去視でも有る“ジェレマイア・トムキンズ”に同情します。  とは言え当時は別段不快感を抱けなかったのだけれど改めて文章にして整理するとこの人物も大概酷い奴ではあるのですよね。


ではなるべくまだるっこしい展開や時代錯誤にも程が有る差別描写を避けつつもだいたいどんな物語なのか私なりに書き綴って見ようかと思います。あくまでも○年振りに新訳版という形で読み直した独自解釈でしか有りませんので本当はどんな物語なのかは書店かダウンロードする形で電子書籍でも入手しご確認下さいませ……アニメ化するなら半分ぐらい削るな…私ならね。




【 その物語の始まりは6月11日の深夜1時 大半の店舗が閉まり灯りも消えるハドソン川沿いのダウンタウン 眠らない大都会ニューヨークで唯一無粋な灯りが邪魔をせず闇に覆われる其処は空に輝く無数の星々が穏やかに流れる川の水面に映り込む 同僚達と違い送迎バスを利用せず独身寮から遠回りとなるそんな道を好んで歩き家路を目指す時間を大切にしている変わり者な主人公=トム・ショーン刑事 彼のもう一つの趣味は誰の迷惑にもならないこの場所で無数の星の瞬きに見守られながら吹き鳴らす下手くそな口笛だった 】


 暗闇の中で橋の欄干から財産を始め何もかも投げ捨て身を投げようとした女性 職業柄てっきり貧困生活に追い詰められた老女か心も躰も壊れ果てた風俗街の人間だと思っていた彼女“ジーン・リード”は20歳を迎えたばかりの未来も夢も有る筈の美しい令嬢……何故彼女は闇に瞬く星を異様に恐れ時計やカレンダーの存在を忌み嫌うのか……元々他人の話を聞き出し相手が担いだ重荷を軽くする事に天賦の才があるこの物語の主人公“トム・ショーン”が24時間営業の古びたレストラン…窓ガラスを遮るカーテンに囲まれた人気の無い小さなスペースで心底怯えきった彼女から聞き出したそれは俄には信じ難い物語だった。


2歳で母を亡くし広大な屋敷で暮らす父と娘そして大勢の使用人と執事達。自分の暮らしそのものが他の大勢の子供達とかけ離れたモノだと気が付いたのは小学校に通い出してからの事だったらしい。


「お金持ちって、どんなこと?」


多くの人々を傅かせ投資信託や株の売買で莫大な資産を築き上げた父=ハーラン・リードはそんな無邪気な質問を投げ掛ける彼女に悲しげにこう答えたのだと言う


「お金持ちというのは、いつも辛い思いをするという事であり孤独で有るという事だ。」


例え倒れても手を差し伸べる存在は居ないし、誰も君を愛さないのかも知れない居たとしてもその人が本当にお前の事を思ってくれて親切にしてくれるのか分からない…だから気をつけなさい知らない顔をして金持ちではないと振る舞う事を覚えなさい、そうすればきっとお前は幸せに生きてゆける。この理不尽な世界がリード親子の破滅を望んでいるのだと気付かされたのは僅か1年前のことだった。事件の始まりは普段あまりに完璧だった使用人の1人…今では顔や声も思い出せない程印象が薄いアイリーン・マッガイアから知らされたとある人物からのささやかな警告。


父を乗せ墜落する飛行機からの奇跡の生還…搭乗直前の父を思い留まらさせたのは届かなかった筈の娘からの緊急電報。怯えきった(ジーン)使用人(アイリーン)から全てを聞き出した父は彼女(アイリーン)を結局解雇し(口止め料兼ねて退職金は弾んでますが)悩み苦しんだ挙げ句1度は距離を置いた彼女(アイリーン)に懇願し周囲の人々に恐れらた結果故郷を追い出されこの街に人目を避ける様に隠遁する謎多き預言者“ジェレマイア・トムキンズ”に接触。追い詰められると目の前の人物の過去を見て同時に未来を無意識に確定してしまうが為に人嫌いとなり精神錯乱気味な言動を喚き立てるトムキンズの予測通り巻き起こる事件や事故に恐怖感を抱く事になる……だが此処数年投資信託の失敗で心労を重ねていた(ハーラン)は次第に彼が口走る未来予測の虜となっていったのだと言う。世界に関わることを常に恐れる預言者とその事で莫大な利益を生み出す投資家…元々水と油の様に相容れない関係が破綻をきたすのは時間の問題だった。


「これ以上貴方が利益を手に入れる可能性は無い。」そう言い切り沈黙を続ける預言者から父が聞き出してしまったのは自らの人生の終焉。ハーラン・リードに残された時間は僅か3週間。


“6月14日〜6月15日を跨ぐ約束の時 彼はライオンの口で死を迎えるのだと言う”



 主人公(ショーン)とジーンから事情を聞かされたマクナマス警部と前代未聞の犯罪予告とも言える捜査に志願した7人の刑事達。タイムリミットは精々3日間、預言から無辜の市民を守る為の戦いは手探り状態で始まった。お調子者のアーチャーが取組む事になったのは“(ジーン)の名前を騙る何者かからの電報” 慎重で無口なドミンゲスが担当するのは“盗まれた靴が何故古道具屋に店主も知らぬ間に展示されていたのかという謎 ”貧乏くじのブラッドリーに託されたのは“何故か預言者(トムキンズ)だけが知っていた(ハーラン)の貸金庫の番号と中身を何処から知り得たのかという追求。”女性の扱いに慣れたシェーファーに任されたのは“全ての始まりで有るアイリーン・マッガイア”の監視。社交的なモロイにあてがわれた仕事は“ライオンに関するモノ全て”荒事専門のソコルスキーと射撃の名手ドブスが担当するのは“預言者(トムキンズ)の監視” そして事件を持ち込んだ当事者でも有りジーンの信頼も得ている主人公(ショーン)の任務は屋敷に滞在し打ち拉がれ追い詰められた親子を守る最後の砦。


植民地(プランテーション)風の屋敷を護るかの様に並べられているのは“ライオンの意匠が施された大理石の彫像とステンドグラス” 既に噂は使用人にも広まっているらしくまるで沈む船から逃げ出す様に雇い主で有る親子を見捨て、退職金の小切手すら放り出し姿を消す人々の群れ……警官隊と共に唯一残ってくれたのはジーンの育ての親みたいな関係だったメイド頭グレイス・ハッチンスのみ。全てが超常現象の筈は無い…誰かこの状況を物理的にコントロールしている第三者が居る筈だ。マクナマス警部と捜査員達の第六感とも言えるソレは有る意味的中しまたある意味予想外の展開を見せはじめた。 アイリーン・マッガイアはシェーファー刑事の正体に最初から気付いており突如隠し持っていた拳銃で自分の頭を撃ち抜いた。 ソコルスキーとドブスはちょっとした汚いやり口で預言者が暮らすアパートの隣室を借用〜被疑者の部屋に盗聴器を設置することに成功する。 モロイは偶々明後日ハーラン亭の近所で行われる予定の移動遊園地&動物園の情報を聞き付け現場へと急行するが、事態は謀略じみた様相を見せ始めた……展示される筈だったライオンを閉じ込める檻は何者かの手で時間を掛けて壊れるように加工されており運悪く此処に通い詰めていた中年男性を喰い殺し屋敷の有る場所を目指して逃走していたのだ。


だが捜査の結果、ライオンの檻を時間を掛けて破壊し逆上させ人にけしかけ様としていたのは喰い殺された被害者=ロブ・ヒューズだと判明する。男は妻に高額の保険を掛けて彼女をライオンに殺させようとして返り討ちに会ったらしい……同じ頃預言者トムキンズの元を訪れ親子を自殺に追い込む為の手助けをしろと脅迫する男が現れた。実は盗聴器の存在に最初から気付いていた預言者の警告に慄き逃走を図った末に銃口を向けた“ハーラン家の投資信託を一手に引き受けていた男=事件を利用しようと企んだウォルト・マイヤーズ”は敢え無く射殺されるがトムキンズに向けられた弾丸は何故か尽く外れ挙げ句の果てに二人の拳銃は故障し撃てなくなる……結果預言者は街中へと姿を眩ませた。動物園から逃げ出した飢えたライオンの1頭は警官隊により射殺に成功したものの残る1頭の行方は未だ判明しない……追い込まれた末に精神錯乱症状を起こすハーランを止める為主人公とヒロインは屋敷の中を駆け回るが彼はステンドグラスに描かれたライオンに頭を打ち付け命を落とす。


「全ては私が無意識の内に確定してしまった未来が原因なんです。」


捜査員達の追撃を全て振り切ってニューヨーク市警に乗り込みマクナマス警部の元に直接自首して来た預言者=ジェレマイア・トムキンズは黒幕に成り代わろうと企んだウォルト・マイヤーズが何故ハーラン親子を自殺に追い込もうとしたか聴取を残し自らの責任を取りたいと留置場で自殺。ハーラン邸に向かっていた最後のライオンは警官隊により射殺される。捜査員達の調査の結果全ての超常現象は論理的に説明が可能で有り事件そのものはハーラン家が破綻する程に資産を焦げ付かせたマイヤーズと預言者トムキンズによる不可解な共犯関係だったと説明する事が可能なのだろう…………だが何故発動しない筈だった未来予測は成立してしまったのか?そもそもコレは一体何だったのか?


「嫌な気分だ……」夜明け前のハーラン邸でマクナマス警部は不機嫌に呟く。「何かが有ったのは確かなんだ…だが報告書に纏め確定させたいのだけれどソレはするっと逃げて行ってしまう。」自殺した預言者は“今回の捜査に関わった全ての人間の名前を上げて私に謝罪した”だが一介の自称超能力者が今回の捜査に関わった人間の全ての個人情報を知り得る方法が思い付かない。天涯孤独となった娘ジーンの心を守る為メイド頭と共に暫くの間此処に滞在すると決めた主人公。未だ暗闇に……いいや無数の星々が冷たく見下ろす中庭で待つ主人公に駆け寄るヒロインは“果たしてどちらの彼女なのか”物語は真相を明かさないまま幕を閉じる。






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