父の祈りを 93年
2020年11/13〜11/15タブレット端末にて執筆し脱稿 即日投稿
誤字脱字多いかも 少しずつ直してゆきます
【 1974年11/21午後8時 イギリス第二の大都市バーミンガム 2軒のパブと銀行を狙った無差別殺傷目的の爆弾テロ 犠牲者21名 重軽傷者182名を出した事件の犯人とされたのは 外国人扱いでまともな仕事見付けられずその日暮らしをしていたテロリストとは全く無関係な老若男女達。 IRA暫定派とアイルランド人=犯罪者な世論やマスコミに煽り立てられた捜査当局により拷問と脅迫で仕立て上げられたイギリス史上最悪の冤罪事件の顛末を 再現ドラマで彩るどぎついブラックユーモア 人生を滅茶苦茶にされた当事者達が笑えないからこそ英国ジョークだそうな。 】
★バーミンガム·パブ爆破事件と呼ばれたテロ事件は未だ真犯人が捕まっておらず 冤罪成立に加担した自称1般市民にマスコミや捜査当局の責任追及も成されていません 2016年に漸く事件の全容の1部が明らかになりますが当事者の大半が墓の下 ジェリー=ジェラード・パトリック・コンロンは2014年に癌で亡くなりました 享年60歳。
原題:IN THE NAME OF THE FATHER
本来はカトリックの祈りの言葉
父と子と精霊の名に置いて……の出だし部分
イギリス・アイルランド合作 劇場公開作品
1994年 日本劇場公開
原作:ジェリー・コンロン PROVED INNOCENT=無罪証明
1994年 出版
日本では映画公開に伴い集英社からゲリー・コンロン名義
で映画と同タイトルで翻訳文庫版を同時出版
❖廃版扱いで入手困難
2020年11月もそろそろ半ば、去年の今頃と違い新しいトンネルや切り通しが開通したためか 夜明け前からクラクション&制限速度ブッチして走り抜ける阿呆は随分減りました 実は最近楽しみにしてる英国仕様な連載小説に出て来る サラセン装甲車 に興味抱いたタイミングで動画サイトに送られて来たお勧めがこの映画の暴動シーン……で偶々レンタル落ち寸前な商品並ぶコーナーで此れ見付けたので借りて来ました。
ノンフィクションをベースにした物語を盛り上げるのは アイルランド人なら誰でも知ってる国民的バンドU2のボノが映画の為に書き下ろした主題歌 "In the Name of the Father" 冤罪事件の詳細歌っているのはボノとヴァージン・プリューンズのギャビン・フライデー 他にも様々なアイルランド出身のミュージシャン達が参加しているそうですが 90年代のアイリッシュロックあんまり詳しく無いので御免なさい あの時代IRAへ多額のカンパ行ってた合衆国在住アイルランド系住民には歌も映画もかなり不都合な内容だったから アカデミー賞はノミネートのみとなりましたし日本でも宣伝控え目です。
折角だから公開&DVDリリース当時は不明だった事件の背景から 1974年当時、北アイルランド·ベルファストではイギリス派遣軍やオレンジ結社に所属する民兵 北アイルランド警察等々による誤認逮捕や暴力行為 誤射によるアイルランド系民間人の犠牲者が多発 その結果IRAによる報復爆破事件が各地で発生していました。 2軒のパブと銀行を狙った時限爆弾の其れはIRA上層部から急かされる形で行われたものの 事前に電話で警察に伝え犠牲者ゼロで終わる手筈だったのに 何らかのミスが発生した事による不可抗力により多くの犠牲者が (電話受けた警官が悪戯と判断? 或いは爆破時間間違えた? 真相は不明)
其処で捜査担当者とIRA側の担当者が折衝し独立運動に参加しないハミ出し者達を生贄の羊に仕立て上げる事で IRA側は新たな復讐者を製造し、警察側はテロ特措法の推進や何も知らない知らされてない世論を味方にしようとした可能性が極めて高いそうで 殺し合いが続けは増税で警察の予算も増え IRAに送金される海外同胞からのカンパも増える……此処まで来ると心底腐ってると思いませんか?
だから北アイルランドは未だイギリス領のままのですよ。
【 注意:悪趣味要素満載なブラックコメディ化と物語分かり易くするため 映画では色々ご都合主義な演出が入ってます。 父と息子が同じ監房で暮らす演出したのは病死した父を看取る事が出来なかった原作者の要望……せめてフィクションの世界だけでも果たせなかった無念を晴らしたかったそうで 真犯人の自供や容疑者纏めて裁く人民裁判の其れや弁護士の大活躍は製作サイドの都合から 実際は再審含めて全て個別に行われたそうですし弁護士は数十人が参加 ついでに真犯人は未だに捕まってません。 】
★出来りゃ原作翻訳した文庫版読んで比較したいけど手元には有りませんので勘弁を 映画 ジョーカー を見た人なら色々ニヤリとなる演出入ってますし ホアキン・フェニックスが誰をモデルにしたか一目瞭然です。
☆暴動慣れして息ぴったりなベルファストの老若男女とか売春婦の部屋のベットにダイブしてエロな妄想爆発してる主人公等、不意討ち気味な英国ギャグで陰鬱な物語を退屈させないシステムです だからこそ冤罪に対する怒りとラストの爽快感が輝きますが 此処では文字数削らないと読んで貰えないから自重します 詳しくは本編見てね。
冒頭場面は再審請求が棄却されても手掛かりを求め戦う あからさまに不審者な女性弁護士ギャレス・ピアーズの姿と 学校通えず自分の名前しか英文書けないからカセットテープで口頭陳述する主人公ジェラード・パトリック・コンロン (以降ジェリー或るいは主人公) のモノローグから イギリス全土で義務教育がまともに始まったのは1979年より 徒弟制度の邪魔になると反対する勢力が沢山居たからある程度普及したのは恐ろしい事に90年代辺り コミニュティで私塾やってたユダヤ系にプロテスタント或いは英国教会の洗礼受けてない子供は教会や私塾で文字すら学べませんし計算も教えて貰えません。
増してや信心深い父に反発し、カトリック教会からも距離置いてた主人公が文字学ぶ機会得たのは皮肉にも重犯罪者用の刑務所から解放されてから 告発兼ねた自伝出版するために小学校通って英文法勉強してます。 そもそも家族間の日常会話はゲール語かアルスター訛りのスコットランド語 他所者相手する必要有るから英語は喋れてもイングランド人に比べると色々混ざる 標準語に対する鹿児島弁?か沖縄口みたいなものかね 映画では割と流暢に喋ってますが実際はかなり訛ってるそうです。
1974年の春 北アイルランド首都 ベルファスト 20歳を迎えたばかりのジェリー・コンロンが生まれ育ったのは平和の壁と名付けられたコンクリートの隔壁に隔離されたカトリック系アイルランド人居留地。 其れはプロテスタントに帰依したアイルランド系住民や軍や警察と共に此処の支配階級になっているイングランド系住民をテロリストや暴徒から守るため作られた異教徒専用の動物園 出入りする際は屈辱的な身体検査と所持品チェックが待っている 父=ジュゼッペ・コンロンはかつてペンキ工場で働いていたが脳血栓を切っ掛けに解雇され今はIRAが経営する非合法な賭け屋の事務員 彼1人では到底5人の家族を支えられ無い 主人公は3人の幼馴染みと共にプロテスタントが暮らすアパートから金属泥棒やって小遣い稼ぎ
盗んだ鉄パイプでギタリストごっこやってた主人公は 度々IRAの狙撃兵と勘違いされて撃たれたり 何度も司直に追われるトラブル引き起こしていたが今回の其れは5台の装甲車や特殊部隊が介入するレベルの暴動に発展 危うく隠匿していた武器弾薬が摘発されそうになり 怒り心頭なIRA幹部達に仲間共々膝下撃ち抜かれそうになったジェリーは 慌てて駆け付けた父親の取りなしで此処から出て行く事を条件に不具者となる運命を免れる 暫くベルファストには戻れない 祖母や母、2人の妹に此れまで稼いだ有り金渡し父親と共に港へ向かう 自暴自棄を起こし無一文でロンドンへ向かう馬鹿息子に有り金と叔母マーサが暮らすアパートの住所を書いたメモを渡す父 史実にて父親とまともな会話を交わしたのは其れが最後だった。
船の中で幼馴染みのロン毛男ポール・ヒルと再会 なけなしの金出し合い食事代わりに黒ビールを痛飲 ジュークボックスから流れる流行歌で踊り憂さ晴らし 叔母夫婦と子供達が暮らす小さなアパートに野郎2人が押し掛けるのはみっともない 俺達ミュージシャンになるから演奏出来る広い部屋借りたと出任せ言って昔馴染みでヒッピーコミュニティに転がり込んだパディ・アームストロングが暮らすスラム街へ 2人のもう1つのお目当てはアメリカから此処へ逃げて来たヤれるお嬢様達とベルファストでは手に入らない大麻 ラブ&ピースなヒッピー生活を満喫する主人公達だったが 此処ロンドンにも爆弾テロが暗い影を投げ掛ける アイルランド人を犯罪者呼ばわりする地元民のジ厶と口論になった事を切っ掛けにコミュニティから離脱 泊まる金も無いから公園でホームレス
其処で知り合ったのは数十年前にジェリー達と同じ理由で故郷を追い出され 色々有って浮浪者と成り果てた老人チャーリー・バーク 学も無ければ人望も人脈も無い俺達はただ此処で老いて野垂れ死ぬんだ 小銭恵んでくれないかと泣く老人に明日は我が身と僅かな有り金を全て渡してしまった主人公達は夜の繁華街を彷徨い歩く 偶々すれ違った高級売春婦のアパートの鍵拾い なんかムカついたから空き巣敢行 思わぬ臨時収入手に入れた2人だったが 息子殴れない程弱っちいのに真面目に生きろと訓示垂れる父の顔が思い浮かび あぶく銭に物凄い罪悪感を抱いた主人公はコミュニティに戻るポールと別れ独りベルファストに舞い戻る
派手な格好で凱旋果たしたけど警察にバレたらどうしよう 出迎えた家族に有り金全て渡したものの父に顔向け出来ないから部屋へ引き籠もる その頃無差別爆弾テロの犯人を探していた捜査当局はヒッピー・コミュニティに大金持ち込んだアイルランド野郎が居るとの密告受けてポールとパディを逮捕 次いでロンドンで容疑者と行動共にしていた主人公や彼等2人をベルファストから迎え入れたマーサ叔母とその家族の逮捕に踏み切った 思い込み捜査の末にテロ実行犯と言う事にされたジェリーの家に押し入ったのはロンドンから派遣された特殊部隊 目隠しされて飛行機に取り調べ室に連行された主人公を自供させるため繰り返される執拗な拷問 署内歩き回る記者や弁護士から容疑者の悲鳴誤魔化すため 拷問室の周りでケーキ片手にハッピーバースデー歌う警官と婦警達(笑)
此れだけ苦労して捕まえたからコイツ等が犯人で無くては困る 担当検事や捜査指揮するロバート・ディクソン警部の指示で息子の無罪訴えに現れた父ジュゼッペもテロリストの1味として逮捕された アイルランド出身の捜査官はゲール語でもし自供しなかったらお前の妹達や父も殺すぞと脅迫 マスコミに容疑者逮捕の情報流れ犯人を処刑しろと群集が押し掛ける 自暴自棄になった主人公は遂に供述調書にサイン 同じ様に犯人に仕立て上げられたアイルランド人老若男女は11人 最高刑を言い渡さないと暴動が起きかねない状況下で始まった裁判はまるでモンティ・パイソンがTVで演ってた "まさかの時のスペイン宗教裁判" 何をどう言っても結果は変わらないとブチギレモードの主人公は悪ふざけをやらかし 奴等を殺せと押し掛けた被害者遺族の神経を逆撫で寸前に追い込んだ
せめて未成年者の情状酌量を訴える国選弁護人の訴えすら 誰にも相手にされず捏造した証拠並べ建てられ短くとも12年〜14年の禁錮刑 主人公と父を含む5人の男女には無期懲役=少なくとも30年の禁錮が言い渡される 理不尽な判決に錯乱する当時14歳だった少女キャロル・リチャードソンを大人しくさせるために警察は鎮静剤を無理矢理投与 群集とマスコミには自殺未遂をやらかしたと説明し担架に括り付けられた 囚人にシャワーなんて贅沢は許されない 服を剥かれホースで家畜の様に冷水ぶっかけられシラミ避けの薬剤を噴霧される 与えられた服は冬は寒く夏は暑苦しい青と黄色のストライプが入ったデニムの上下
アイルランド人に対する牢名主のリンチを恐れた刑務所所長の計らいで 体調崩した父と同居 些細な行き違いから延々と繰り返される言い争いと周囲の冷たい視線 親子にとって唯一の楽しみは度々面会に来てくれる母が話す家族の近況 社交的な父親と正反対に孤立を深める主人公にもアフリカ系の友人が出来た 差し入れ品のジグソーパズルにこっそり練り込まれたLSDでラリった息子を叱りつけるジュゼッペ 数年後、囚人として現れたIRAの交渉役は刑務所内の環境改善 (具体的には牢名主への脅迫) を行い主人公達に接近 何とか刑期を短くする代わりに組織に加われと甘い言葉を投げ掛ける 父は病状が悪化して既に階段の登り降りも困難になっている その提案に乗ろうとした主人公を窘め怪し気な女弁護士と二人三脚で再審請求を続けるジュゼッペ 意外な形でイジメの原因だった自身の名前の由来を知るコメディ場面や看守や刑務所の囚人達と親交を深める父の姿
所長の計らいで行われた映画 "ゴッドファーザー" の特別上映 死にぞこないによる囚人と看守の関係改善が気に入らないIRAの交渉役はワザと騒ぎを起こし簡易火炎放射器で所長を火達磨に 主人公が飛び込み必死に消火した事で辛うじて命を拾った所長はその後どうなったかは分からない IRAの交渉役も実行犯として連行され2度と会う事は無かった
『再審嘆願を手伝うよ。』
病状が悪化した父の代わりにギャレス弁護士と打ち合わせ 文章が書けない息子の悩みを見兼ねた父は仲良くなった看守からテープレコーダーを手に入れて来た だがやがてタイムリミットが訪れる 刑務所に雪が降り積もり新任の所長や看守、囚人達を交えた雪合戦が行われた数日後 父は昏睡状態に陥った 駆け付けた看守達と一緒に慌てて医務室へ病院に搬送される父に囚人で有る自分は付き添う事が出来ない 数刻後面会に現れた神父から告げられた父の死 打ちひしがれる主人公を慰め良い人だったジュゼッペの魂の冥福を祈るかの様に中庭に降り積もる雪と手紙を燃やして行われた弔いの灯火 再審の嘆願活動は父と交流のあった看守や所長 囚人達の手紙や面会を通してイギリス全土へと徐々に広まってゆく
だが1988年、新たな証拠が見付からない事を理由にバーミンガム・パブ連続爆破事件の再審請求は最高裁判所で棄却された 絶望のあまり独房で錯乱し全身にカセットテープを巻き付け泣く主人公 だがギャレス弁護士を始めとする彼等の支援者達は諦めてなどいなかった 政権が変わり始まった情報公開により次々と発覚する冤罪事件 そんな浮浪者は居なかった事にされたチャーリー・バークのベンチを発見 (主人公達の証言通り背もたれ裏に彫り込まれた彼のサイン) 連日の様に保管所を訪れ当時の捜査資料を調べ続ける弁護士達 捏造に加担した検事達による閲覧妨害は その日偶々風邪を引いて休んだ協力者の代わりになった担当者により台無しに 検事により閲覧不可とされていた捜査資料に乗せられたチャーリー・バークの写真と証言を切っ掛けに次々と浮かび上がる偽証の証拠
1991年、マスコミに公表された様々な資料を見せられ漸く動いた世論に押し流される形で始まった裁判には 12年〜14年もの間を刑務所で過ごしその後の人生すらも台無しにされたマーサ叔母とその家族 彼等の支援者達や警察に踊らされた被害者達の遺族も訪れる 尚もしらを切る検事達を慌てさせる新しい証拠により主人公ジェラード・パトリック・コンロン ポール・ヒル パトリック・アームストロング そして30歳となってしまったキャロル・リチャードソン 亡くなったジュゼッペ・コンロンに言い渡される無罪判決 騒ぎを何とか誤魔化したい刑務官達は彼等を裏口に誘導しようとするが 仲間や支援者達と共に正面玄関から出てゆく主人公達 俺達は警察が真犯人を見つけ出し報いを与えるまで戦い続ける 父と子と精霊の名において………………。
エンドクレジットで語られる4人の男女のそれぞれの後日談 証拠隠滅や冤罪捏造に協力した3人の担当刑事は司法取引により無罪となっている 21名を殺し182名に重軽傷を負わせ遺族とその関係者 冤罪で捉えられた11人とその家族の人生を台無しにした真犯人は未だ明らかになっていない。
★主人公を演じたダニエル・デイ=ルイスはロンドン生まれのユダヤ系 この作品に出演した事を切っ掛けに色々思う所が有ったらしく アイルランド国籍を取得しイギリス人からユダヤ系アイルランド人になりました。 最後の裁判シーンでオールバック 役作りのために15kg減量し刑務所生活も体験したそうです。
余談ですが緊急入院⇒退院以降、体重のみならず全身の筋肉がスカスカになって階段の登り降りすら手摺り必要でした……が数日前普通に降りる事が出来る程度に回復しました ここ迄筋肉取り戻すのに数年掛かり 次は駆け下りに挑戦だ。




