2010年7月11日について
第二話です。
それではどうぞ。
何処から話そうか。
そうだ。二年前、僕がまだ普通に歩けたころの話。
そこから記すことにしよう。
唐突だが。
努力は実を結ぶ、とか。
努力は裏切らない、とか。
全くその通りだと思う。
死に瀕する前の僕は、努力を惜しまない、青春真っ只中の中学二年生だった。
全力と言ってもいい。
全力で勉学に勤しみ。
全力で遊楽に親しみ。
全力で部活に励んでいた。
問題を解くのも。
友達と話すのも。
管楽器を演奏するのも。
そのどれもが、当時の僕にとっては欠かせないもので、全力を尽くすに値するものだった。
だったのに。
尽くした結果。
僕は全てを失うことになってしまった。
ある日、正確には2010年7月11日の午後6時36分。
僕は、部室で倒れた。
気を失う直前に聞こえたのは、手から滑り落ちたトランペットが床に落ちる音。
目覚めた時、部室は病室に、咥えていたトランペットは人工呼吸器にすり替わっていたんだ。
「佐伯幸一さん」
無機質で無感情な医者の声は今でも耳に残っている。
「あなたの命は、もって二年でしょう」
こうして。
僕は直面することになる。
遅かれ早かれ、生きている以上は逃れられない運命。
死。
…今日はここまで。
後14日くらい。
2012年8月21日
佐伯幸一
如何だったでしょうか。
ご意見ご感想、お待ちしております。