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第二冊:企みの中に

「私をお呼びか、ミシュカ」

まず言を紡いだのは、碧音だった。

いつもとは違う物言いに、綜司だけは目をすがめ兵たちの間に不服が漏れる。

「王の御前であるぞ、口を慎め!」

同じ出で立ちをした兵人達の、中でも最も肩に飾りをぶら下げた男が高圧的に話す。

「私にはその権利がある、違うか?」

権利、と強調するかのごとくもう一度繰り返して碧音は悠然と笑んだ。

その言葉にミシュカと呼ばれた国王は蒼褪め、綜司がしたり顔で頷く。

事情を飲み込めていない護衛兵士達だけが顔を見合わせ、そして傾ける。

「お前より、私の方が偉いはずだ!」

焦りに震えた声でミシュカは精一杯の強がりを見せたが、それすらも楽しそうな顔で悪辣に微笑んだ碧音によって砕かれてしまう。

「お前が、どれほど権力を得たとて、真の主となれるわけではない。いくら足掻いたとて、私に追いつくなど無理なことなのだ」

「くっ…」

ミシュカ、いや王の口から苦しそうな声が漏れ、額からはツゥと大粒の汗が伝った。

楽しむように歪んだ笑顔を浮かべて碧音は、追い討ちをかけるために更に口を開く。

「ユグドラシルが認めたのは、私なのだから」

途端、玉座に収まっていたミシュカの顔からは表情が消え、替りに場にはざわめきが拡大した。

所々から“身に世界樹が宿らぬ王とは…?!”と囁かれる声が届く。

石を投げ入れられた水面の様に勢いを持って拡がるざわめきを止める手立てを持つ者が存在しない中、薄く綜司が笑んだ。

それは、冷たく凍った者の笑み。

気付かれることなく、綜司は笑みを広げる。

「愚かですね、国王陛下」

小さな声で呟いたそれは、音ではなく響きとして室内の全てに行き渡った。

本来ならば国王を愚弄するとして罰するべきだ、と職業意識豊かな人々が口にするのだが驚きの余り自らの義務と権利すらも放棄してしまったらしい彼らは、呆然とした面持ちと焦点の合わない瞳を抱いたまま視線で空を切った。

「国王陛下。して、ご用は?」

自失したミシュカに向かい、純粋な子供の様な笑みを浮かべた碧音が問うた。

「……もう、良い。さがってくれ……」

魂が抜け憔悴しきった顔でミシュカがのたまい、地に膝をつけて恭しく礼をした二人が背中を見せて去る。


次かその次には多分あと一人のキャラが出て来ます。

私は彼がお気に入りvv飄々としたキャラは良いですね…動かし易くて。

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