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第一冊:諍いと真実

ひゅん、と風の揺れる音が広い空間に拡がった。

細身の剣が同じリズムで上下する。

金の髪をさらりと揺らして、青年が剣技を磨く様はこのところ、毎朝の恒例と化してさえいるので中庭を忙しなく行き交う洗濯女も目を留めることはなく、ソレを邪魔だと突き撥ねる者もいなかった。

何も映さないガラス玉の様な瞳を持った侭青年は、無心に剣を動かし続ける。

その剣の求める先は、泡沫なる夢か。それとも、護るべき人への贖罪か。

一言も漏らさぬまま、青年の中の時が過ぎた。

「綜司!ここにいたんだ」

閉じた空間だったソコに新鮮な空気を送り込んだのは、薄茶の髪をしたあどけなさの残る少年だった。

少し高めの声が、青年の名を呼ぶと、綜司と呼ばれた彼はふと、顔を上げる。

虚空を映すしかなかった澄んだ翠の瞳が、少年を捉える。

「良かった、探してたんだ。ミシュカが呼んでる、部屋に来いって」

返事が返らないことを気にも止めずに、少年は用件を告げた。

綜司が鍛練の後に口を開く事は極めて稀だということを知っているからだ。

「早く行かないと。声がかかってから、もう十分は経ってる」

ミシュカってば、怒りっぽいんだから…。

そう一人ゴチると少年は歩いて来た長い廊下をもう一度歩き出す。

その後ろを、少しだけ遅れて双緑の青年がついて行く。

二人の間に降りる沈黙は甘く優しく、そしてどこか痛い。

「なぁ、綜司。お前…なんで毎日剣の鍛練なんかしてるの?前はしてなかったのに」

朝日が眩しいほど入り込むガラス張りの廊下を歩きながら、後ろを行く青年へと声がかかった。

ソレは純粋な疑問、というよりはむしろ詰問に近い。

「碧音…」

そのときになってようやく形のいい唇から漏れた言葉が、少年の名を紡ぐ。

口にすることを躊躇ったように綜司の口唇が幾度か上下したが、結局その口から言葉が漏れることはなかった。

代わるように流れたしばしの沈黙の後、綜司の口が小さく動く。

「貴方は、何も気に止めなくて良いのです」

短く告げられた言葉は碧音にとって神の言葉にも等しかった。

満ち足りた思いを抱いて振り返ると碧音は大きな華が咲いた様に、笑った。

その中に、先ほどの様な悲痛な感は見られない。

いつもの通りの明るい彼につられて綜司も軽く微笑むと長い長い回廊へと再び歩を進ませた。

目指す扉は、後数メートルの位置にまで及んでいる。

一歩一歩を踏み締めるように歩いて、ようやく着いた扉からは重厚な雰囲気が漂っている。

その前で碧音は踵を揃えると大きく一つ息を吸った。

一度瞳を閉じ、ゆるやかにもう一度開くとその中に宿った決意という名の灯火が鋭く光を放った。

吐く勢いと共に過度の装飾を施してある眼前の扉に手を掛け、力を込めて、押す。

ギギィと外体に似合った音を立て開いた隔ての先には自己主張の激しい数々の宝石と、物騒な武器を所持した無表情の兵人。

それから、きらびやかな玉座に居座る居丈高な男。

ソレは、入って来た碧音と綜司を見て微かに笑った。


未熟なこの作品をご覧いただきありがとうございます。

まだまだ続きますので、よろしければ読んでくださいね。この後の展開は実は私も分かっていなかったりします…ですので少しでも良いものとなる様に頑張りたいです!

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