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05

 孤児院の建物は古い木造の建物だった。一階の下部分は柱と柱の間に煉瓦が積まれているが、そこから上は板で壁が作られている。所々補修の跡が見えるが、何処かに隙間があるのだろう、少し肌寒いとシアナには感じられた。

(秋でこれだから、冬はもっと寒くなるよね……)

 前世でも煉瓦造りの家は温かいと聞いたことがあるが、煉瓦で覆われている部分は全体の三分の一程度だし、隙間風があれば保温性はそこまで期待できない。

「お嬢様は孤児院というものをご存じでしたか?」

「ええ。親のいない子供が暮らす場所でしょう……?」

「はい、その通りでございます。親を病気などで亡くした子供もおりますし、捨てられた子供もおります。この孤児院には今十二人の子供がおります」

 それが多いのか、それとも少ない方なのか、シアナには分からなかった。

「皆、領都で生まれたの……?」

「孤児院の前に捨てられていた子供もおりますから、正確には分かりませんが、領都の外で生まれた子供も恐らくいるでしょう……この孤児院は、クローデル家にご支援頂いておりますから、小領地の孤児院よりも暮らしが楽ですので……」

 それを知ってわざわざここに捨てにくる者もいるのだろう。

「これは、失礼致しました。お嬢様には少し難しいお話だったかもしれません」

「大丈夫よ。ちゃんと分かったから」

「お嬢様は賢くていらっしゃるのですね」

 先程と同じような微笑ましそうな視線を向けられて、シアナはそれから隠れるようにノーラの後に回る。

 前世の記憶があるから半分ズルをしているようなものだ。そんな風に見られると居た堪れなくなってしまう。

 シアナはの態度をどう受け取ったのかは分からないが、マッテオはにこりと微笑ってから案内を続けた。

「こちらが食堂です。今の時間は大半の子供達がここで作業をしています」

 何の作業だろうか。食堂でやっているのであれば、食事の準備だろうか。夕食の準備をするには少し早い気もするが、と疑問を抱きながらシアナは食堂に入る。

 部屋の中はツンとした爽やかな香りが漂っていた。

 七、八人の子供達がテーブルいっぱいに広げられた草花を囲んで何かをしている。十歳を超えていそうな子供もいれば、シアナよりも小さな子供もいた。

「皆、少し手を止めなさい。クローデル家のお嬢様がいらっしゃった。ご挨拶を」

 マッテオがそう言うと、子供達は作業をやめて口々に「こんにちは」と挨拶をしてくる。それを微笑ましく思いながら挨拶を返していると、マッテオが「セスト、こちらへ」と一人の少年を呼んだ。

「お嬢様、この者はセストと言いまして、この孤児院で一番年長の者です」

「そうなのね。初めまして、私はクローデル家のシアナよ」

「は、初めまして、セストと申します!」

 セストは緊張した面持ちでぴんと背筋を伸ばしながら言う。

「ここでの暮らしなど、子供達に直接聞きたいことがあればセストに聞くと良いでしょう」

「分かったわ。しばらく、作業の様子を見てもいいかしら?」

「はい、もちろんです」

(あれよね、何か上手くいかなくなって逃亡することになったりしたら、私もこういう所に身を寄せるかもしれないし……)

 実際にどんなことをしながら暮らしているのか、知っておいて損はない。

「セスト、お嬢様のお相手をよろしく頼むよ」

「は、はい!」

「お嬢様、私は別の部屋にいる子供達の様子を見ておりますので、何かありましたらお呼び下さい」

「分かったわ」

 院長が部屋を出ていき、シアナはセストに尋ねる。

「ここにいない子達は別の部屋で違う作業をしてるの?」

「は、はい。ダリラ――ええと、食事を作ってくれる女の人と夕食の買い出しに行ってる子もいます。あとは、風邪を引いた子が二人いて、風邪がうつらないように違う部屋で寝てます」

 院長が様子を見に行ったのはその子達だろう。

「皆、よく風邪を引くのかしら?」

「小さい子はよく引きますが、おれ――じゃない、わたしは、あまり引きません」

「そうなのね」

 皆がよく風邪を引くというなら問題だろうが、小さな子供がよく風邪を引くのは仕方がないかもしれない。

 それでも、秋冬はちゃんと温かく過ごせているかは気になるところだ。

「冬の夜に寒くて眠れないとかって、あったりする?」

「とても寒いことは偶にありますが、そういう時は皆で同じベッドに入って寝ます。だから、眠れないことはないです」

「そう……」

「おれ――じゃない、わたしは、ここの孤児院はいいほうだと聞きました。他の貧しい孤児院は、冬の朝起きると子供が死んでいることもあるそうです……」

「え……」

「寒すぎて、死ぬらしいです。ここはちゃんと暖炉も使えますし、毛布も一人一枚あります」

「でも、隙間風とかあるでしょう? 私、ここに入った時少し寒いって思ったもの」

「隙間風は仕方ないと聞きました。建物が古すぎて、修理しても完全には無くならないと言われました。それに、冬は暖炉を使うから、隙間はあった方がいいそうです」

 ああ、なるほど、とシアナは納得する。

 そもそも建物が歪んでいるのだろう。柱とかが歪んでいるのであれば、補修では限界があるだろうし、隙間を完全になくそうと思えば建て替えなければならないのかもしれない。

 それに暖炉を使うならば、確かに密閉状態というのは危険だ。定期的に換気をすればいいのだが、子供達だけで火を使う時にそういうことができるとは思えない。

(小さい子だけで火を使うなんて、前世じゃ危ないって言われてさせてもらえないだろうけど、大人が少ない環境だとそんなことも言ってられないよね……)

 建物の隙間は敢えて残しておいた方がいいのかもしれない。

「セスト、ありがとう。作業していたのに、手を止めさせてごめんなさい」

「い、いいえ! そんな!」

「作業してるところ、見せてもらってもいい?」

「は、はい!」

 セストは勢いよく頷いて、座っていた椅子に戻る。シアナが近くまで行くと、シアナが座れるようにと慌てて椅子まで出してくれた。

「これは、何をしているところなの? あ、作業しながらでいいわ」

「は、はい。これは、アロスナの葉と他の葉を分けているところです」

「アロスナ?」

「薬草になる葉っぱです」

「ふぅん、薬草なんだ……」

 シアナはまじまじとテーブルに広げられている葉を見る。前世でも植物にそれほど詳しいというわけではなかったが、何となくヨモギに似ているような気がした。

「毒草とかも交ざっていたりするの?」

「毒草もたまに間違えて取ってきます。でも、毒草は毒草で、薬屋で買い取ってもらえます。何も効果がない葉っぱが交ざっているのが一番だめです」

 なるほど、薬と毒は紙一重と言うが、毒草は毒草で使い道があるらしい。

「セスト、私もやってみたいのだけれど、何かできることはある?」

「えっ!?」

 セストはがたがたと椅子を揺らしながら驚く。どう答えたものか悩んでいるのだろう。忙しなく辺りを見回して、最終的にシアナの後に控えていたノーラに助けを求めるように視線を向けた。

「お嬢様、手が汚れてしまうかと」

「気にしないわ。終わってから洗えばいいだけだもの」

「かしこまりました。セスト、お嬢様でもできそうな、簡単な作業はありますか?」

「あ、えっと……サルヴァの花と茎を分けるのが、簡単です……」

「じゃあ、それを手伝うわね。どうするのかやり方だけ教えてちょうだい?」

 セストはテーブルの一角に広げてあった赤い花の付いた野草を少しだけシアナの方へと寄せた。

「これが、サルヴァです。この赤い花の根元からちぎって、花は籠の中に、茎と葉はそのまままとめて置いておいて下さい」

 本当に簡単な作業のようだ。テーブルを見れば、その作業をしているのはシアナと同じくらいからそれよりも小さい子だけで、十歳前後の子供達はアロスナの葉の分別をしている。

「分かったわ。ありがとう」

「い、いえ……」

 じゃあ早速、とシアナは作業に入った。

 赤い花を茎から切り離すと、茎からツンとした香りと花の甘い香りが漂う。

(ちょっとハッカぽい……? こういうハーブ、前世にもあった気がする……)

 料理などで使われていたような気がする、と思ったが具体的な名前は思い出せなかった。

 ぷちぷちと花を切り離す作業を続けていると、何となく見られている感じがして、シアナは隣を窺う。

 簡単な作業なので何の心配も要らないのだが、シアナに手伝わせているのが気になるのか、セストは作業をしながらもちらちらとこちらを見ていた。

 却って作業に集中できなくさせてしまったかもしれない。

(次に来た時は、手伝いはしない方がいいかも……)

 シアナとしては説明で時間を取らせてしまった詫びと、いつか自分もやるかもしれないので試しにやってみたいという考えがあったのだが、相手の迷惑になるならやめた方がいいだろう。

「サルヴァも薬草なの?」

 どうせ集中できないのなら、とシアナはセストに尋ねる。

「は、はい。サルヴァも薬草です」

「花を分けるのはどうして?」

「花は薬にはならないので……あ、でも、食べれます」

「じゃあ、これは自分達で食べる分になるのね」

「はい。あとは乾燥させてサシェに入れて売ったりもします」

 花は果物みたいな甘い香りがするので、女性が喜びそうだ。

 花の方も収入源になっているんだな、と納得していると、反対側から呆れたような溜め息が聞こえてきた。

「おまえ、なんでそんなことも知らないんだ?」

「トビアっ!!」

 反射的にセストが叫んで、シアナはびくりと身体を震わせる。怒鳴られたトビアという少年も驚いた顔で固まっていた。

「も、もうしわけありません、お嬢様!」

 恐らくトビアの発言と大声を上げたことに対する謝罪だろう。

「大丈夫よ、セスト。ちょっとびっくりしたけど、気にしてないわ」

「い、いえ、すみません、本当に……トビアは、まだ言葉遣いの勉強をしてなくて……!」

「なら、なおさら仕方がないわ。私も学んでいないことはできないもの」

 必死に頭を下げるセストの方が逆に哀れになってきて、シアナは、気にしていない、と繰り返す。

「な、なんで、おれが怒鳴られないといけないんだよ……」

 我に返ったトビアの発言に、「当たり前だ!」とセストが再び怒鳴る。

「クローデル家のお嬢様に無礼なこと言ったんだぞ!?」

「き、貴族のお嬢様なのに、当たり前のこと知らないほうが変じゃんか……勉強してないってことだろ……」

「トビアっ!」

 トビアの言い分も分からないではない、とシアナは思う。

 毎日こういう作業をして過ごしている彼らにとってはこれが当たり前で常識だ。シアナ達貴族の日常と常識とはかけ離れていても、ここの暮らししか知らないだろうトビアにはそんなこと知る由もないのだ。

「勉強はしているわ。計算と読み書きの勉強は終わって、今は魔法の勉強をしているところよ」

「え……」

「他にも礼儀作法の勉強があって、それは三歳くらいから少しずつしているの。貴方は今何の勉強をしているの?」

「えっと、計算……足したり、引いたり……」

「そう。貴方もそうでしょうけど、私も自分の生活に必要なことから勉強しているの。まだ勉強していないことはもちろん知らないわ。アロスナもサルヴァも、私が直接手に取ることがなかったら、知らなかったの。その代わり、王様や貴族へのご挨拶の仕方や言葉遣いは知っているわ。これって変かしら?」

「え、えっと……」

 トビアは口籠もる。

 とりあえず、生活環境が全く違うということは少し分かってもらえたのかもしれない。

「セスト、作業を続けましょう?」

「は、はい……」

 静まり返った部屋の中、黙々と作業をしていれば、サルヴァの花と茎を分ける作業は終わっていた。セスト達の方もあと少しのようで、シアナは他の子供と一緒に片付けを始めた。

 そうしている間にセスト達も仕分け作業が終わったようだった。

「お嬢様、手伝って下さってありがとうございました」

「いいえ、私の方こそ、色々と手間を取らせてごめんなさい。この薬草はこれから売りに行くのかしら?」

「はい、一度ギルドに寄って鑑定をしてもらってから売りに行きます」

 どうせならどんな風に売りに行っているのか見てみたいと思ったのだが、鑑定という言葉にシアナは少し考える。

「そうなのね……これだけ量があると結構かかりそうね……」

 セストについて行ったら、母達が戻ってくるまでに戻ってこれないかもしれない。

「いえ、魔道具を使って鑑定してもらうので、そんなに時間はかからないです」

「え、魔道具? 鑑定用の魔道具があるの?」

「はい」

 それならついて行っても問題ない――否、それよりも、鑑定に使う魔道具があるのなら、そちらの方が重要だ。

(鑑定魔法があるってこと……? でも、どの属性でもなさそうだし、どうやって鑑定するんだろう……)

 もし、ゲームのようにステータス画面のようなものがあって、鑑定魔法でそれを見ることができるなら――。

(仕組みはともかく、それが使えるようになれば、ゲームの内容を思い出せなくても名前なんてすぐ分かるだろうし、もしかしたらゲームに関連する情報も……!)

 シアナの中で期待が大きく膨らんだ。

「それ、私もついて行っていいかしら!?」

 食い気味にセストに尋ねれば、セストはおろおろと辺りを見回す。

「えっ、おれ――わたしは、大丈夫ですが……あの……」

 その視線が行き着いた先はやはりノーラで、シアナはノーラに「お願い!」と両手を組んで頼み込んだ。

 ノーラは小さく溜め息を吐くと、「かしこまりました」と頷く。

「ただし、行くのはギルドだけです。それ以外の場所には立ち寄らないと約束して下さい」

 本音としては薬屋で薬草を売るところも見てみたかったのだが、魔道具を見ることができればそれで十分だろう。

「約束するわ。ギルドだけね。じゃあ、セスト、早速行きましょう!」

 シアナがサルヴァの茎を入れた袋を抱えると、セストが慌てて止めに入る。

「お嬢様、おれ――わたしが、持ちますので……!」

「セストはアロスナの方を持つんでしょう? だったら私がこっちを持つわ」

「いえ、でも……」

「お嬢様、私がお持ち致します。使用人ではなく主人が荷物を持っていては、周りに要らぬ誤解を与えます」

 ノーラの言葉に、シアナは、そうか、と思い直す。シアナとしては荷物を持つことに忌避感はないのだが、シアナの格好はどう見ても貴族令嬢だ。街中を歩くのに、貴族令嬢が荷物を持っていて使用人が手ぶらというのは確かに外聞が悪い。

「そうね、その方がいいわね。じゃあ、ノーラにお願いするわ」

 セストもこれならまだ気が楽だろう。

 シアナはノーラに荷袋を渡し、セストと共に食堂を出た。

 そのまま外へと向かって廊下を歩いていると、「お嬢様」とノーラが引き留める。

「どうしたの?」

「先程のことですが、トビアの無礼な態度をあのように許してはいけません」

 え、とシアナは、一瞬言葉に詰まる。

「で、でも、トビアが貴族のことを知らないのは当然だし、まだ言葉遣いも練習していないなら、仕方のないことだし……」

 そっと近くにいるセストを窺うと、顔が少し蒼褪めていた。

「セストがいち早く叱りましたが、本来ならトビアとそれを指導する立場にいるセストも罰を受けるところです」

「ば、罰って……! それに、何でセストまで……!」

「孤児院では、年少者の面倒を見るのは年長者です。マッテオがあの場に不在だった以上、一番年長者であるセストにその役目が行きます。あの場で貴族に対する言葉遣いができるのはセストだけだったのでしょう。ですから、マッテオはセストを名指ししてお嬢様の相手をさせたのです。セスト、ここでは、貴族が来た時には基本的に自分から話しかけてはならないと言われているのではありませんか?」

「は、はい、その通りです……無礼を働くといけないので、お客様が来た時には許可なく話しかけてはいけないと……でも、トビアは……」

「その言い付けを守らなかったのですね」

「はい……」

「だからセストはあの時あんなに怒ったのね……」

「はい……」

 何も知らずに思わず口にしてしまったなら仕方ないが、そういう約束事があったのであればトビアに非があるだろう。

「でも、罰って……どんな罰を受けるの……?」

「お貴族様に無礼を働いた場合は、内容にもよりますが……酷い時は鞭で叩かれます……」

「鞭って、子供に暴力は良くないわ!」

「お嬢様、鞭打ちは一般的な刑罰の一つです。大人であろうと子供であろうと罪を犯した時は相応の刑罰が科されます」

 暴力的な内容には眉を顰めざるを得ないが、法治国家なのであればノーラの言っていることは正しい。

「でも……貴族に無礼を働くことは、そんなに罪なの……?」

「では、お嬢様は、王族に無礼を働いて処罰なしで済むと思いますか?」

 それを言われると痛い。シアナは、いいえ、と首を横に振る。

「何らかの罰はあると思う……」

 鞭打ちなどの実刑ではないだろうが、何もなしで済まされることはほとんどないだろう。

「それと同じだとお考え下さいませ。あのように無礼な態度を咎めもせず、許すような態度を取ってしまうと本人のためにもなりません。今後貴族とやり取りをする時に、あのような態度でも問題なかったと、同じように振る舞ってしまえばどうなると思いますか?」

「私でなければ、罰を受けるかもしれないわ」

「その通りです。奥様などはまだ寛容でいらっしゃいますが、領都を訪れた他の貴族に同じことをすれば、鞭打ちだけでは済まない場合もあります」

 最悪の事態を想定して、シアナは瞑目した。

「それは……良くないわね……」

「はい、ですので、今後はあのような態度は取られませんよう」

「何か罰を与えなければならないってこと……?」

「罰を与える貴族もおりますが、今回はセストが真っ先にトビアを叱って謝罪しておりますので、今後態度に気を付けるよう注意をする程度でも大丈夫かと。ただし、これが繰り返されるようであれば、トビアには何か罰を与えなければなりません」

「そう、分かったわ……」

 子供相手だからと寛容に対応したつもりだったが、自身の対応が間違っていたことはよく理解できた。同時にセストの心労も分かり、シアナはセストに向き直る。

「セスト、あの時はきっと貴方が一番怖い思いをしたのだと思うわ……気付いてあげれなくて、ごめんなさい……」

「い、いえ、そんな……!」

 きっとこうして謝ることすら、セストにとっては心の負担になるのだろう。

「トビアには、無礼な態度は改めてと伝えてちょうだい。ノーラは貴方も本来なら罰を受けているといったけど、私は、貴方はちゃんと自分の役目を果たしていたと思うわ。だから、今回は貴方への注意はしない。小さい子供達のお世話は大変だと思うけど、これからも頑張って」

「は、はい……お優しいお言葉、ありがとうございます……!」

 これでいい? とノーラに視線を向けると、ノーラは苦笑しながらも軽く頷く。恐らく、貴族としてはかなり甘い対応なのだろうが、一応許容範囲なのだろう。

(身分があるって難しい……)

 シアナは小さく溜め息を吐いてから、とりあえず今はセストのお遣いだ、と頭を切り替える。

「セスト、時間を取らせてごめんなさい。ギルドに行きましょう? 帰りが遅くなると他の皆も困るかもしれないし」

「は、はい、そうですね。ご案内します!」

 本当は、年齢の近い子供同士、身分は違っても多少は仲良くできたらと思っていたのだが、それは難しいのかもしれないとシアナは思った。


お読みいただき、ありがとうございます。

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