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暗闇の中へ

(これが魔術…)


リシアが感嘆としつつ思案した。


(もう少し威力を上げてみよう…髪も乾せるし)


リシアはもう一度、深く息を吸いこんだ。

今度はーー瞼を閉じずに試してみるのだ。

視界ではなく、心を真っ暗にして。


視界に映る幻想的でとても美しい景色をそのままにしたまま、心の中だけをすっと暗くする。


(心を真っ暗に……もっと、もっと深く…)


ーー暗闇の中へ。


心を真っ暗にするのは慣れている。

なぜならリシアはいつだって心を沈めているのだから。


意識を落としていくと、暗闇の奥に先程と同じ月の光のイメージがぼんやりと浮かぶ。

それを掌へ導くように想像しながら、リシアは風の性質を決めていこうとする。


(時間10秒。威力6。速度4。温度40。湿度10%……。動きは…直線)


ーーだが、視界があるせいか、心が少しだけ揺らぐ。

ほんのわずかな雑念が、次の性質を考えるタイミングを乱した。


(あれ…えと、他に性質は…)


その小さなつまずきだけで、掌の上の空気が不安定に震える。

次の瞬間、ふっと形が崩れ、風はほどけるように散ってしまった。


「あ……」


どうやら視界があるせいでイメージが繋がらなかったようだ。


(目を開いたまま性質を考えるとすると、だいぶ難しい……それならーー)


リシアは再度思案し、もう一度挑戦しようと再び心を暗くする。


月の光を掌に落とすイメージを静かに重ねる。


(時間10秒。威力6。速度4.温度40。湿度10%。…直線。その他指定なし)


すると、拳にまた風が生まれた。


(……これなら)


先程とは少しやり方を変えた。

リシアは全ての性質を短時間で言えないため、指定をしないことによって性質を考える時間を短縮した。


リシアは少しだけ眉を上げた。

失敗を経た分、成功の感触がはっきり伝わってくる。

しかし、まだ理想とは程遠い。

今回は性質を考えるのにものすごく時間がかかってしまった。


(次は、性質を考える時間を短縮できるように練習しよう…)


リシアは改善点を洗い出し、家の扉を開け本を大切に抱きかかえて家の中へ戻っていったー。

普通魔術は行使できるようになるまで一週間弱はかかるのにリシア魔術をドライヤー代わりにするためにわずか半日で取得したそうです。それも初、魔術実践なのに。


さて、今回は初の魔術実践です。以外と簡単そうに見えますがものすごく高度な魔術です。

リシアは元から感覚が異様に鋭いので、この魔術はリシアにはぴったりだと思います。


また、今日から予約投稿を活用し、投稿頻度を上げていこうと思っています。

基本今日から1月末まで毎日連載予定です。

0時00分にちょうど投稿されます。


主は誤字が多いので、もし誤字があった際は容赦なく指摘してくださると幸いです。

今後とも夜巡りの星継者を宜しくお願い致します。

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