綺麗
扉を開けると直後、そよ風が吹いたような気がした。それほど衝撃的だった。
そう、目の前にあった光景は絶景と言えるほどだった。
ここは少し高い高原でその先には森がその更に奥には山が聳え立っていた。
「きれい……」
声が無意識に出ていることにリシアは気がついていなかった。
これは誰もが見入ってしまうだろう。それほど美しかった。綺麗だった。
(すごい…)
美しい光景をじっと見つめて数秒、はっとしたようにリシアは本を開いた。
(今はこんなことしてる場合じゃない。お昼までには覚えないと…)
これは時間との闘いだ。お昼までには魔術を覚え、その後食料を確保しないといけないのだ。
そう焦りながらリシアは本の巻頭を読んだ。
本の巻頭にはまず魔術の基礎について書いてあった。
1.この世界は魔力の器、魔力の量によって魔術を使える量が決まる
2.魔術の種類は基本攻撃魔術、一般星継魔術、稀有星継魔術の3つに分けられる
3.人間には魔力持ちでも魔力なしでも必ず属性が一つあって一人に一つの魔術しか使うことは出来ない
リシアは一通り目を通して次のページに進んだ。
次のページは先ほどの続きが書かれていた。それも太く大きな字で。
4.しかし貴方にはたくさんの種類の魔術と魔法というものを覚えてもらう。
そして私は魔術、剣術、体術、武術、技術、医術、幻術…ありとあらゆる分野において長けている人間であってほしい
(なんだろう…これ)
それはまるで誰かの願望になっているかのような文章だった。
リシアは少し気味が悪くなったため、次のページをめくった。
次のページはいよいよ魔術の行使について書いてあった。
まぁ、今から学ぶものは魔術ではなく魔法だが。
(基本的には自分の属性にあっている魔術じゃないと行使できないって本に書いてあったけれど……。これは魔法だから属性は関係ないんだ…。だから全ての魔術を使うことができる……)
リシアは昨日一番必要になった風魔術について学ぶことにした。
本に書いてある通りリシアは腕を伸ばした。
そして目を閉じ意識を集中させる。
本にはこう書いてあった。
今から貴方が学ぶ月光魔法という魔術は属性は関係ない。だから、月光魔法は貴方の創造力次第で様々な魔術を行使することが出来る。また、月の光を使って魔術を行使するため魔力量も関係ない。
ーー魔法を使うにはまず手を伸ばして目を閉じ、真っ暗な頭の中で小さく輝いている月の光を想像する。
その月の光を発動させたいものに変形させる感覚を掌の上でする。
基本的な動作はこれだけだ。術式や詠唱などはいらない。
貴方の創造力と感覚次第で魔術の威力もスピードも形も全てが決まる、と。
感覚といってもどうやって魔術を掌の上で出せばいいのか。
発動させたいものを変形させる感覚とは何なのか。
誰もが首をかしげるであろう内容だ。
ーーしかし、リシアには分かる。
なぜなら「神経開花」という神経が以上に上昇する加護があるのだから。
リシアハ深く息を吸い込み、本に書いてあるとおり瞼を閉じ意識を沈めていく。
暗闇の中、ぽつりと浮かぶ小さな光ーー月の雫のように淡く揺れるその光を、そっと手のひらへと導くように想像した。
(風に…変える……)
リシアは時間・威力・速度・温度・湿度・動・方向・質感・効果・音…全ての風の性質を感覚でひとつひとつを確かめるように、頭の中で形にしていった。
時間10秒
威力、速度3
温度15度
湿度50%
動き渦巻風
方向、質感、効果、音、方向指定なし。
全てをひとつの風へと収束させるように意識を重ねた瞬間、リシアの掌にそよぐ空気が、わずかに形を持ち始めた。
渦を描くように巻き上がる微かな流れ。ーーそれはあまりに小さく、けれど静かに’’風’’としてそこに存在していた。
速度の3の静かな勢い。
15度に保たれた優しい温度。
湿度は50%、乾きすぎず冷たすぎない絶妙な感触。
質感は柔らかく、しかし渦巻く動きによって芝に細い力を宿し、音はほとんど立たず、布擦れよりも静かに空気を震わせている。
(……できてる)
渦は掌の上で銀色に光り、その中心に月光の粒がふわりと漂っていた。
本に書かれていたとおりーー威力も、速度も、湿度も、動きも、全てが想像だけで形を持ち始めている。
リシアはそっと息を吐いた。
その吐息が触れた瞬間、掌の上の小さな風はふわりと揺れ、光の粉を雫すように周囲へ広がっていった。
正確には月の光ではなく月に似た何かの光を使うような感じですね。
誤字などがあった場合はお知らせください。
また、主のタイピング速度が大幅に上昇(嘘)したため、1エピソードの文字数がこれから多くなると思います。
今後とも夜巡りの星継者をよろしくお願い致します。




