繊細、純潔、謙遜
とある少女は慌てていた。
(なんで、どうして…)
レンガ造りの家の中をずっとうろちょろしていた。
(私は馬鹿だ)
(忘れたはずだったのに…自分から忘れようとしたのに…)
頭がだんだんと痛くなってきて、視界がくらくらとしている。
日頃から夜遅くまで仕事をしていたせいだろうか。
それともこの状況になったからだろうか。
どちらにせよこのままでは倒れると思った少女は木製のベッドに横になった。
(駄目だ…今はとにかく休もう)
そしてゆっくりと目を瞑った。
* * *
「え、なんですかこの状況」
メルクスの機嫌取りに甘いものを取りに行ったフィロンは首を傾げた。
重い空気感の中、みんなして同じ顔をしている…しかも1人いない。シリウスは少しだけ目を見開いて固まっている。
何もかもが先程と違う様子にフィロンは慌てた。それに気づいたのかイグニスが状況を説明した。
「リシアが称号について珍しく提案。それに焦ったのか急に帰宅した…。たったの数秒でいつのまにかいなくなってたな。それで皆んなが固まっている時にタイミングよくフィロンが登場」
皮肉っぽく言うイグニスにフィロンは内心反省した。なぜ自分が反省しているのかは分からない。
そこで国王が1つ咳払いをした。
話を戻すという合図だ。
「…それで話を戻すのだが、称号はどうする?」
シリウスは即答した。
「決めました。私の称号は―」
* * *
とある少女はまったくもって知らない場所にいた。
四角くて色々な色をした大きな建物。
珍しいガラスがたくさん張っている縦に長い家。
黒いズボンと長袖を着た者達。
何もかもが自分がいた世界、いや自分の星と違う場所だ。
(あぁ、ここは―。)
――元いた星。
戻ってきてしまったのだろうか。
さては夢なのだろうか。
少女はボーッとしながら行き先もなくただ真っ直ぐと歩いて行った。
しばらくすると、少女はとある建物の前で立ち止まった。
見覚えのあるようなないような……ただ、そこに何回も行っていた感じがして立ち止まったのだ。
その建物は平べったくてそこら中にある四角い建物よりも小さかった。
家、なのだろうか…?
家にしては大きいと疑問に思ったが、すぐにその疑問は解けた。
「あら、どちらさま?」
建物の扉が開いた。
そこには少女より少し背が高い女性が立っていた。
(あ、……え………?)
自分の鼓動が急に速くなったと同時に女性の口が開いた。
「……あなた、どこかでお会いしませんでしたか?」
女性が首を傾げた。
(あ……あぁ……ぁ、あぁあ…)
急に足元がふらついた。
少女は完全に全てを思い出した。
ここはどういう星だったのか。
この建物は何なのか。
―そして、目の前にいるこの女性は誰なのか。
「その制服…その顔……あんたまさか……!」
この女性は―姉だ。
その途端急に視界が真っ暗になった。
目を覚ますと見知らぬ天井にいた。
そして起き上がると同時に辺りを見渡した。
「現実でも夢でも、あの人には会いたくなかった……」
(まだ鈴蘭だけでもよかったと思うべきか…)
そう思いながら少女は整った顔を崩しながら安堵したような溜め息を1つ出した。
夜巡りの星継者を読んでいただき、誠に有難うございます。
今回はリシア逃亡後のエピソードです。
第1章は主人公の50年後のお話を1部紹介した形になりますので、アストラノヴァ・スクールが題材の物語は結構後になります。
どうぞこれからも夜巡りの星継者をよろしくお願いいたします。




