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召喚された幼女な勇者様と、巻き込まれJKの私  作者: こう


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46 おかえりなさい

本日二話+α投稿となります! お気を付けください!

二話目。


 何が起こったのかなんていつもわからない。いつだってこっちは置いてけぼりだ。

 だけどこのみーちゃんが召喚(誘拐)されたみーちゃんで、最後の最後に魔王に帰還を邪魔されたみーちゃんなのはなんとなくわかった。


 ということはやっぱりみーちゃん帰れてないのか。

 あのクソガキまた自分の中にみーちゃん吸収しやがったのか? この真っ暗な空間ってラスボスの言っていた、魔王が空間に一体化した姿じゃね?

 その魔王だって、淀みから得ていた力もだいぶ弱まっていたはずで。


 放っとけば世界に消えていなくなる。そんな存在の内側にみーちゃんが取り込まれれば、一緒に溶けて消えるんじゃないか。

 最後の最後に無理心中しようとしやがって。ガキだから意味わかってないかもしれないが、させるかこの野郎。


 私はみーちゃんを抱っこして走り出した。あの日、星で出来た道を駆けたのと同じように、みーちゃんをしっかり抱きしめて走る。

 日々みーちゃんを抱っこし続けてあの頃より腕力が付いて体力もある。若い頃のほうが貧弱だった。みーちゃんは重いけれど、毎日抱っこしていたら慣れる。妊婦で腹がでかくてもおんぶしていたので、腕力は落ちていない。


 みーちゃんを確保した今、お腹の子が気になってくる。これが精神世界ならお腹ぺたんこでも納得だが、そうじゃないならこれはこれで発狂する。不安だらけで純粋に慈しめていなかったけれど、我が子の存在は命がけで守りたい。みーちゃんは勿論、生まれてくるこの子だって健康に生きて欲しい。


「お母さん、つむちゃんいないの。迷子なの」


 抱っこされたみーちゃんが訴える。その内容に擽ったくなった。


「つむちゃんはね、ちゃんとお家に帰れたよ」

「ほんと?」


 暗闇の中でみーちゃんが首を傾げた気配を感じる。

 抱き上げてもみーちゃんは見えない。

 だけどみーちゃんはここにいる。

 私はしっかり頷いた。


「うん。だからお母さんがみーちゃんを迎えに来れたの。つむちゃんが、みーちゃんこっちにいるよって教えてくれたよ」

「そうなの?」

「そうなの」


 過去の経験があるから、みーちゃんがどこにいるのかわかっていた。だから間違いではない。


 どうしてここにいるのかとか、ここからどうしたらいいのかとか、その点に関しては残念ながら何の知識もない私には正解がわからない。進むべき道もない。

 それでも私は抱えて走る。

 何もできない私にできるのは、我が子を抱えて進むことだけだ。


 闇の中で、より色濃い闇が渦巻いた。


 ――ダメダメ連れていかないでいかないで。みーちゃんみーちゃんみーちゃん!


 久しぶりに聞いた魔王の声が響く。

 相変わらず駄々をこねる子供のように訴えてくる渋い声。その内容は変わらない。

 みーちゃんを求めて、みーちゃんだけを求めて泣いている。

 渋さはともかく子供の泣き喚く声に、母親になった私は…。


「ウルセェ――――ッ! 甘えんな!!!!」


 歯を剥き出しにして怒鳴り返した。

 闇が怯えるように縮こまる。


「たとえガキだろうがな! うちの子に危害を加えるガキに優しくできるほど人間できてねぇぞ!! 人の親は慈悲深いと思ってんのかなわけねーだろ! うちの子で手一杯だわ他所の子に構ってる暇なんかないわ!!」


 なんならこれから一人じゃなくて二人になる。

 召喚(誘拐)が不安すぎてこちとらまともに子育てできてなかったんだぞ。そんな状態で他所の子に手を差し伸べられるわけがねーだろ。


 魔王の存在は不幸だと思う。人間の行動が勇者を呼んで更に負の連鎖。目的があって生み出されたのに雑音ばかり増えて可哀想だと思う。思うがそんな魔王を救うのは勇者じゃない。この世界を生きる人間達だ。

 そもそも。


「魔王を生んだのは世界だろ! ちゃんと責任持って育てろ世界ィッ!」


 役目があって作るなら、幼児に設定してんじゃねーよ! 外見が育たなかったにしても、中身も幼児な状態で仕事をさせるんじゃない! 危うく世界が滅びかけたのは世界の判断ミスだろしっかりしろ!

 神様とか、世界の意思とかそんなの知らないが、魔王を生み出したのは世界の救済処置だとか言うし。そんな判断ができるなら内面を幼児ではなく成熟した大人にしろ。

 てことは魔王がマナに溶けて世界に還るなら親元に帰るのと一緒だろ多分。私の中で微かに残っていた罪悪感が溶けて消えた。もう何も怖くない。


「子供はさっさと親御さんのところに帰れ!!」


 魔王に親の概念があるのか知らないが、今私がそう判断した。母親に怒られてべそかいて父親に泣きついたたっくんのように、泣き帰るがいい!

 ついでに世界に恨み言を吐き出しておく。


「これ以上勝手にみーちゃん連れていくんじゃねぇ! 母親から子供を奪おうとすんな呪われてえのか!! 呪うからなぁ!!」


 世界が滅びようが母親は子供のために世界を滅ぼすぞ。愚かだとか言われようが関係ねぇ。命をかけて呪ってやるからな!


 母親すべてがそうじゃないのはわかっている。だけど私は、産まれてくる前からみーちゃんを知っていた私は、異世界で理不尽に食い潰される寸前だったと知っている私は、躊躇なくお前らを捨てるからな。

 なんの力もない、か弱い無力な人間だけど。


(仔猫を守る母猫のように。我が子を守ることだけを選んだ母親の情念を甘く見るんじゃねぇ!)


 ぺたんこのお腹が熱い。

 厚みがなくなったのに、自分以外の鼓動を感じる。抱きしめたみーちゃんと、お腹にいるもう一人。

 ああ、残していけない。

 絶対連れて帰る。


 魔王と無理心中なんかさせてたまるか!


 わっと、泣き声が聞こえた。

 それはみーちゃんではなく、低くて渋い子供らしくない声。だけど子供に許された、全力で訴える高い声。


 ――おかあさーんっ!


 そんな泣き声が聞こえて。

 私は暗闇の中を落っこちた。


「――さん! しっかり!」


 はっと目が覚める。一瞬の気絶。呼吸をしろと怒鳴る声。気を抜かないでと焦った声音。全身に走る痛み。何が起こったのか把握する暇もなく、私は言われるがままに力んだ。

 そして、産声。


「おめでとうございます!! 元気な男の子ですよ!」


 一瞬これが魔王だったらどうしようと本気で悩んだ。


 悩んだが、抱っこした我が子にそんな既視感は全く無かった。

 安堵で全身から力が抜ける。マジでよかった。本当によかった。ちゃんと生まれてきた。


 早産だが、腹の中で充分育っていた我が子は元気だった。それでもどこかしらの機能が未熟である可能性が高いので、慎重に接しなければならない。今のところこれという部分は見付かっていないので、健康に育ちますようにと祈るしかない。


 第二子にも夫は泣いた。早産で不安になっていたらしい義弟も泣いた。男達が泣いている中、みーちゃんは一目散に私の胸に飛び込んできた。ニコニコ笑顔で、全力で抱きついてくる。


「ただいまぁ~」


 思わずきょとんとしてしまった。

 泣いている男達は気付いていないみーちゃんの言葉。数ある挨拶の中でただいまを選んだみーちゃん。


「みーちゃんはお姉ちゃんだから、がんばったの」


 ふんすと鼻息荒く主張して、褒めろと胸に頭を擦り付けてくるみーちゃん。

 つまり、つまり…。


(あの真っ暗闇での出来事は夢じゃない)


 異世界におまけで召喚されて、一人帰されて、みーちゃんを探し続けた私も幻を見ていたわけじゃない。

 きっと私と同じように一瞬だったのだろう。私が破水して、周囲が慌てている中で召喚(誘拐)されたのかもしれない。あのときは流石に、誰もが私に注目していた。私もみーちゃんをしっかり見ていられなかった。


 つまり今のみーちゃんは、つむちゃんと異世界で奮闘したみーちゃん。

 とってもがんばって、私を守ってくれたみーちゃんだ。


「…みーちゃん、とっても、がんばったねぇ」


 結局召喚(誘拐)されてしまった。辛い思いをさせてしまった。

 だけどみーちゃんはがんばったと主張して、褒めろと頭を擦り付けてくる。

 私は震える手でみーちゃんの小さい身体を抱き寄せて、柔らかな髪を強めに撫でた。撫でながら、小さい身体を抱きしめる。


「がんばったねみーちゃん。偉いぞぉ…おかえりぃい…っ」

「…うわーん!」


 ひしっと抱き合って号泣するみーちゃんに、私も歯を食いしばって泣いた。

 お帰り。お帰り。

 帰ってきてくれてありがとう…!


 第二子の誕生と、長女の帰還に、私は三年ぶりに心から安堵して、暫く涙が止まらなかった。


 あれから異世界がどうなったのかは知らない。魔王がどうなったのかも、結局若い私が未来の我が子と召喚された理由もさっぱりわからない。だけど解明する気もないし、みーちゃんには異世界の出来事はすべて夢だったのだと思ってもらいたい。そう、物騒なアリスワンダーランド体験だったと思って欲しい。

 異世界の存在は、こちらからだと全然関与できないのだから、気にするだけ無駄だ。

 私はようやく憂いなくみーちゃんを抱きしめられた。



 それから十二年。

 長男の慎治(しんじ)(命名夫)は嬉しいことに健康に育ち、サッカーに夢中になっている。

 世界を救うよりむずかしい思春期や反抗期の相手をしながら迎えたみーちゃん十五歳の高校入学式で、私は盛大に顔を引きつらせていた。


(…やけにキラキラした顔の在学生と私好みのイケメン生徒会長と裏がありそうな眼鏡の教師にひょろ長い背丈の教頭先生。新入生挨拶を読み上げる、どっかで見たことあるクソガキ顔…!?)


 見たことがある顔そろい踏みで、どうした世界と怒鳴り散らしたくなった。

 色彩は日本人。だけど顔つきが日本人じゃねぇ。あと年齢も違う。多分名前も違う。だけど顔がマジで似ている。

 みーちゃんもあれぇと首を傾げているので、忘れている幼い日の記憶が刺激されている。


(おいやめろよ!? 『三歳の頃に勇者として召喚された女子高生が、召喚先のイケメン達そっくりな学生と繰り広げる恋愛ゲーム』とかやめろよ!?)


 召喚阻止のためそれ系の作品に触れていたらサブカルチャーに馴染んでしまった私は、最近流行りの展開じゃねぇだろうなと一気に警戒心をあげた。

 母親の私が、学生達のやりとりを根掘り葉掘り調べられるわけがない。すべてこれから学校生活を送るみーちゃん次第だ。

 みーちゃん次第だけど。


(そいつらを彼氏に連れてきたら恨まれようとも邪魔するからな!)


 ちなみにその後。

 展開としては『昔いじわるだったけど小学校で和解した幼馴染み(中学離れた)と高校で再会し、イケメンに絡まれながら恋するラブコメ』だった。


 貴様かたっくん!



異世界召喚された幼い勇者とおまけでくっついて来ちゃったJKのお話、完結となります。ここまでお付き合いありがとうございました。

早い段階でまさか…? と思っていた方も多いようでしたが親子です。時間系列がおかしいのでとりあえずまさかねーで済ませていた方も多かったことでしょう。まさかねー。まさかでした。

ちなみにサイコパス魔法使い似の教師はその後、危険薬物所持で捕まりました。(アカン薬品持っていた)

最後に。

貴様かたっくん!!


面白いと思ったら評価かいいねをぽちっとなよろしくお願い致します!


→次回登場人物紹介です。

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― 新着の感想 ―
乙です 面白かったです まさかみーちゃん氏がつむちゃんさんの子供とは にしても追いかけてくるとは魔王もしつこいな とりあえず犯罪魔術師はこっちでも倫理観ゼロなの草なんだ たっくんきちんと謝って反省…
完結お疲れ様でした! 読んでいる途中でまさかみーちゃんは隕石(ミーティア)?!とか思いこんでいたとか恥ずかしくて言えませんね
貴様かたっくん!! いじわるしてたのに許されてラブコメできるなんて奇跡やぞ笑 やっとみーちゃんを見つけられたつむちゃん。本当によかった。
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