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神美少女に肯定されすぎて人生ヤバイ  作者: 抑止旗ベル
第1章『踊るダメ人間』

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第22話


「ごめんごめん、ちょっと遅れちゃった!」


 そんな台詞とともに自転車を僕らの目の前にドリフトさせながら急停車させ登場したのは、乙名だった。


「なんで乙名が?」


 僕が尋ねると、


「審判がいるんじゃないかと思って。浮いたボールを手でゴールに押し込んだりすることってあるじゃない?」


 神の手ゴールだ……。


 こんなところでそんなプレーが生まれるとは思わなかったけれど、まあ、審判がいて不利になるってことはないだろう。


「公平なジャッジを頼むよ」

「任せといて」


 乙名の首にはホイッスルがぶら下がっていた。


「役者は揃ったみたいだな。落田、決着をつけようぜ」


 石崎がボールをセットしながら言う。


「分かったよ。先攻はどっち?」

「審判、コイントスの準備を」

「はいはい」


 石崎に言われ、乙名がコインを準備する。


「本格的なんだね」

「世紀の一戦だからな。俺は表を選ぼう」

「じゃあ、僕は裏だね」


 乙名はコインを投げた。


 宙を舞ったコインが、再び彼女の手の上に落ちる。


 表だ。


「俺が先攻らしいな。落田、悪いがまず一点、稼がせてもらうぜ」


 石崎がゴールの前にボールをセットする。


 僕は彼とゴールのちょうど中間あたりに立った。


「……いつでもいいよ」

「分かった。乙名、試合開始のホイッスルだ」


 乙名がホイッスルを吹いた。


 石崎がボールを蹴りだす。


 僕は守備側だから、石崎が保持しているボールをエリア外にクリアできなければ、永遠に石崎から攻撃を受け続けることになる。


 身体が動くままに、僕は石崎との距離を詰めた。


 そのときだった。


 石崎は軽く右足を振ってボールを蹴り上げ、そして蹴り上げられたボールはふわりと僕の頭上を越えていった。


 ループシュートだ。


 迂闊だった。


 急いで戻らなければと思っても、長い引きこもり生活で重たくなった身体は思い通りに動いてはくれない。


 結局僕は、ゴールに吸い込まれていくボールを見送るしかなかった。


「……こっちは怪我が完治して日が浅いんだから、手加減してくれよ」

「勝負だからな。そんな甘いもんじゃないぜ」


 一方的に『果たし状』なんかを送り付けておいて、なんて都合のいいやつなんだ。


 しかしそれにしても、自分の身体の鈍重さには驚いた。


 元々僕は自己評価が低い方だということには自信があったけれども、それでも多少驚いた。


 こんなに身体が動かなくなってるなんて……。リフティングがそれなりに出来たせいで、自分の衰え具合を甘くみていた。


 石崎からボールを受け取り、さっき石崎がセットしていたのと同じ場所に置く。


 本気だ、石崎は。


 本気で守原さんとデートするつもりだ。


 だけど僕も、守原さんに勝って欲しいと言われた以上は負けるわけにいかない。


 ゴールまでの距離は十数メートル。


 フリーキックだと思って、石崎を躱すようなカーブを掛けてシュートすれば……いや、今の僕にそれは無理だ。


 となれば……ひとまずは正攻法で行くしかないか。


「乙名、笛を吹いてくれる?」

「分かったわ」


 僕は乙名のホイッスルと同時にボールを蹴りだし、ゴールへ向かってドリブルした。


 石崎がその進路を塞ぎつつ、徐々に距離を詰めてくる。


 あとはタイミングだ。


 早すぎても遅すぎても、ドリブルで相手を抜き去ることはできない。


 石崎が一歩分、こちらに踏み込んできた。


 今だ。


 石崎の体重が彼の左足に乗った瞬間を見計らい、僕はそちら側にボールを蹴りだした。


「!」


 一瞬だけ石崎の反応が遅れた。人体構造上、左足に体重が乗った状態で、すぐさま左側に動くことはできない。


 それでも石崎は左足を伸ばしてきた。


 そのタイミングに合わせ、僕は逆方向にボールを切り返した。


 完全に姿勢を崩された石崎が地面に倒れる。


 そして僕はゴール前までドリブルし、そのネットをめがけてボールを蹴りこんだ。


 これで同点だ。


「……手加減してくれなんて言う割には、良い動きするんだな」

「ありがとう。誉め言葉として受け取っとくよ」


 ケガをした膝にも痛みはない。


 このくらいの動きなら、問題はないみたいだ。


「おっと、勝った気になるのはまだ早いぜ。次は俺がゴールを決める番だ」


 再び石崎がボールをセットした。


 僕はゴール前に立った。


 ループシュートもあるから迂闊に接近するわけにはいかない―――と、僕を警戒させるのが一戦目の狙いだろう。


 だからこそ、敢えて僕は石崎に思い切り近づいた。


 石崎が先ほどと同じようにボールを蹴ろうとする。


 でも、最初からループシュートだと分かっていれば対応できないわけじゃない。


 石崎の右足がボールに触れたのと同時に、僕はゴール前へ引き返した。


 ボールが宙を舞う。


 僕の頭上を越え、そのままゴールへ入ってしまいそうになる。


「……!」


 ループシュートが来ると予想していた分、一試合目よりはボールに近づけている。


 頑張れば間に合うはずだ。


 僕はゴールへ引き返した勢いのまま、ボールめがけて滑り込んだ。


 つま先がボールに触れ、ゴールの外へと軌道を変える。


「乙名! 今のは入ってたよな!?」


 石崎が乙名に尋ねるが、乙名は首を横に振った。


「今のは落田のクリアが先だったよ」

「チッ、マジかよ……。攻守交代だ落田。今度は俺が止める」

「お手柔らかに頼む」

「試合を始める前はお前のことをケガ人だからってナメてたところがあったけどよ、生憎、そんな余裕はなさそうだ。もう油断しねえ。ここからの俺は、これまで以上に全力だぜ」


 む……。


 参ったな。


 相手を追い詰めたのがマズかったか。


 僕は割と体力ギリギリのところでやってるんだけど、相手はパワーアップの余地を残していたってことか。



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