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謎のおみくじ屋と天上の妃3


 その夜。

 御所ごしょから黒緋が帰ってくると夕餉の時間が始まりました。


「そうか、紫紺が留守番していてくれたのか」

「うん。ほんとはオレもいきたかったけど、せいらんがおひるねしてたからがまんした」

「よく我慢したな」

「うん。オレはあにうえだし、せいらんあかちゃんだし、おひるねおこしたらかわいそうだとおもって」

「なるほど。それで今夜は紫紺の好きな料理がたくさんあるのか」

「オレががんばったから、ははうえがどうぞってつくってくれたんだ」


 紫紺がご飯を食べながら黒緋にお話ししています。

 私が買い物に行っている間、紫紺はしっかりお留守番をしてくれていたのです。


「あいあ~、ばぶぶっ。……もぐもぐ」


 抱っこしている青藍もなにやらおしゃべりに参加です。

 でも小さなお口にご飯が入っているのでうまくしゃべれていませんね。

 青藍のご飯は粥にしていますが、ちゃんともぐもぐしなくてはいけません。


「青藍、お口の中に入っています。おしゃべりはごっくんしてからですよ」

「あう〜、もぐもぐ。……ちゅちゅちゅっ」

「ああいけません。お口にご飯が入っているのに指は吸えないでしょう。ご飯粒だらけになってるじゃないですか」


 私は青藍の口や指についている米粒をとってあげました。目が離せませんね。

 こうして青藍に夕餉を食べさせながら私も食事を進めていると黒緋が声をかけてくれます。


「青藍を寄越せ。お前がゆっくり食べられないだろう」

「いいえ、黒緋様の御食事の邪魔になってしまいます。ゆっくり召し上がってください」


 私は慌てて断りました。

 黒緋の食事の邪魔になるなどいくら実子の青藍でも許されません。

 でも黒緋は納得のいかない顔をします。


「しかしな……。では女官を呼べ。預ければいい」

「お心遣いありがとうございます。でも青藍の食事もあと少しで終わりますから」


 それも断りました。

 紫紺と青藍はなるべく私がお世話したいのです。

 天妃である私が子どもを育てたいなど我儘でしかないのは分かっていますが、それでも紫紺や青藍とは離れていたくありません。日々成長する姿を一番近くで見ていたいのです。


「分かった、お前がそう言うなら。ならば青藍が落ち着いたらお前の話しも聞かせてくれ。今日はなにをして過ごしていた?」

「私は以前地上にいた時のように炊事をしたり掃除をしたり、あとは買い物をしたり……あっ」


 今日の出来事をひとつふたつと思い浮かべて、……嫌なことを思いだしてしまいました。


「どうした。何かあったのか?」

「はい、じつは買い物の帰りにちょっと……。おみくじ屋があって、そこの店主に勝手におみくじを引かれたのです。あまりに失礼でびっくりしたんです」

「ハハハッ、そんなことがあったのか。天妃のお前を占うなんて、そのみくじ屋もたいしたものだ」

「笑いごとではありませんよ。まったく……」


 私は少しねた気分になりました。

 そんな私を黒緋が「悪かった。怒るなよ」と慰めてくれます。たったそれだけのことなのにあっという間に拗ねた気分が消えてしまって、自分の単純さが可笑おかしいですね。

 おみくじの結果は最悪だったので言いたくありませんが、もう気にするのはやめておきましょう。そもそも天妃の私を人間のおみくじ屋が占うなど到底無理なことなのです。


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