謎のおみくじ屋と天上の妃6
「紫紺や青藍は怖がっていないでしょうか」
紫紺と青藍が気になります。
紫紺はともかく青藍はとても泣き虫で怖がりなのです。今頃大きな声で泣いているかもしれません。
気になって二人が眠っている部屋の方角になんとなく目を向けてしまう。
そんな私に黒緋が苦笑します。
「……俺がこんなことで妬けるとは」
「黒緋様?」
見あげると黒緋は複雑な表情で私を見下ろしていました。
でも目が合うと押し倒されている状態だったと思いだして慌ててしまう。
「す、すみませんっ。嵐にびっくりして……っ」
「いや、お前が紫紺や青藍を気にするのは当然のことだ。俺も気にならないわけではない」
黒緋はそう言うと苦笑しました。
ふと御簾の隙間からひらひらと蝶が飛んできます。黒緋の式神です。
蝶はなにやら黒緋に伝えるとふっと消えてしまいました。
黒緋が蝶の報告を伝えてくれます。
「紫紺と青藍の様子を見させてきた。二人は嵐に気づかずよく眠っているようだ。紫紺は堂々とした大の字で、青藍はぷーぷー言いながら眠っている。今も式神の女官が見守っているが二人が嵐で起きる様子はないようだ」
「図太いですね……」
紫紺は三歳ながらいつも堂々とした子どもです。寝姿まで堂々としているなんて紫紺らしいです。
青藍の寝言はぷー。いつも指吸いしながらぷーぷー眠っています。青藍もいつも通りなのですね。
二人の様子を思い描くとおかしくて笑ってしまう。
「ふふふ、ありがとうございます。安心しました」
「それはなによりだ」
黒緋も目を細めて笑いました。
こうして子どもたちの様子を知って安心すると、また黒緋と二人きりだということを意識します。
どちらからともなく唇が重なって、口付けの合間に吐息が漏れました。
自分の吐息に熱が帯びていて、なんだか恥ずかしい……。
でも黒緋の口付けは体の強張りをほどいていくかのような甘やかなものなのです。
しゅるりと帯がほどかれて、黒緋の手が素肌を這いました。へその周囲を指で撫でられ、腰の曲線を這い、胸のふくらみへと辿ります。
「あ……。ん……」
敏感な部分に触れられて体が熱くなる。
同時に首筋の柔らかな皮膚を吸われて、背中に甘い痺れが走りました。
くすぐったいのに体が熱くなっていく。
たまらなくなって黒緋の両腕のなかでみじろぎました。
そんな私に黒緋は目を細めて唇を深く重ねます。
夜の嵐に蔀戸は音をたてているのに、まるで遠い世界のよう。
ガタガタガタッ! ガタガタガタッ!
暴風雨が蔀戸を激しく揺らします。
大粒の雨がバチバチと蔀戸に打ち付けました。
でも今の私と黒緋にとっては遠い世界です。
ガタガタガタッ! ドンドンドンッ! ドンドンドンッ! バチバチバチッ!
バチバチドンドンと蔀戸に大粒の雨。
とても激しい豪雨のようですね。
ほんとうに戸が叩かれているような音です。
ドンドンドンッ! ドンドンドンッ! ドンドンドンッ!
…………。
…………これ、雨粒が戸を叩いているんですよね? ほんとうに雨粒ですよね?
「…………」
「…………」
私と黒緋は真顔で顔を見合わせました。
嵐の物音にしてはあまりにも……。
「あの、黒緋様、この音は……」
「ああ」
嵐がゴーゴーと呻る中、ドンドンと蔀戸を叩く音。
大粒の雨だと思いたいけれど。
「――――おーい! 開けてくれー!! うわっ、なんて嵐だっ……!」」
声です! 声が聞こえました!
ゴーゴーとした嵐の中、ドンドンと蔀戸が叩かれていたのです!




