アメの包み紙
とある中学校の体育館。急遽集められた生徒たちは、どこかだらけた雰囲気。
「はぁーあ、たくっ、何の集まりだよ。だるっ」
「飴の包み紙が見つかったとか噂されてるな」
「ん、飴ぇ? ああ、小学校の時もあったなぁ。帰りの会で犯人探し。たくっ、飴の包み紙くらいで緊急全校集会とか暇かよ」
「はははっ、まあ隠語って説もあるらしいぞ」
「え、隠語?」
「そ、本人にだけ伝わるようにさ。実際は飴の包み紙じゃなくコンドームとか」
「ええ!? 中学生でも、もう!? じゃ、そ、そいつは、いやそいつらは、と、トイレで」
「ははは、興奮すんなよ。ほら、校長だ。話が始まるみたいだぞ」
『えー、皆さん、おはようございます』
「もうすぐ昼だけどな。腹減ったよ。休み時間まで削らないで欲しいな」
『えー、学校のルールを守るというのは社会のルールを守る練習になるのです』
「はいはい」
『時に厳しく、つらく思えるかもしれません。反発したい気持ちもあるでしょう。学校を嫌いに思うこともあるでしょう』
「校長、たまにしか話さないけど、いつも話が長いんだよな」
『えー、タバコは、未成年の君たちは特に身体に悪いです』
「へー、タバコ。トイレで見つかったのかな」
『お酒も同様です』
「え、酒まで? あいつらかな。あのヤンキーども」
『違法薬物は身体に悪い上に成人であっても違法です』
「いほ、え!? 違法薬物!? この学校のやつで!?」
『これもトイレに落ちていました』
「なんだあれ? ちっちゃいな……」
『銃弾です。拳銃の所持も違法です』
「拳銃!?」
『それからこれが見えますか? これは遺書です』
「遺書!?」
『教師に、同級生に、この社会に不満があることはわかります。しかし、どうか考え直してほしい。……これもトイレに落ちていました』
「ま、まだあるのかよ……あれはなんだ? ゴミか?」
『ば、爆弾の部品。こ、コードの切れ端です!』
「爆弾!?」
『わ、わ、私はぁ! い、い、遺書の指示通り、せ、生徒たちをこの体育館に集めましたぁ! だ、だから私の命だけは助けてくださぁぁぁい!』
「おい、こ、校長どっかおかしいんじゃないのか? ははは、爆弾なんて……な? そ、そう思うよな? ははは、よ、余裕だな。なに食ってんだよ」
「ん? 食う? 飴」
「飴ぇ? こんな時に、あれ? いや、そもそもお前、確か不登校じゃ……」
「そ、べっこう飴。理科室でな、ついでに作ったんだ。お前にもやるよ。最後に食えよ。美味いぞ。はは、ははははははははははははははっ!」