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ただいま修行中
夜明け、襖の向こうから声がかかる。
「若、お目覚めでしょうか?」
もちろん目覚めている。
暗闇の中で行っていた小顔マッサージをやめ、ワシは廊下に出る。
控えていた忍者たちを引き連れて玄関を出ると、そこは奥三河の山に囲まれた小さな集落であった。
いわゆる忍者の里である。
駿府に向かう途中で服部半蔵に救出されたワシは、今この里で忍者の修行をしていた。
なぜか?
答えは格好良いからだ。
将軍が忍びの技を使うなんて、未来の物語のようではないか。
あとは健康と成長のためか。
忍者の修行は厳しい。
他の者の半分をこなすだけでも、身体は鍛えられ病魔も跳ね飛ばすだろう。
まぁワシは倍こなすが。
この里では医食同源を標榜し、獣肉や鶏卵、牛やヤギの乳も食うことにしているので、ワシの身体はスクスクと成長しておった。
最終目標は六尺近い身長の小顔でシュッとした美丈夫である。
もう小太りとか言わせない。