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遠江の街道にて
さて、尾張に行くまでオートモードで過ごしたと以前どこかで言ったが、それまでなにもしなかったとは言っていない。
岡崎では内密にいくつかの仕掛けをほどこしていた。
その一つがこれから起こる。
「なに者だ!?」
今川方の侍が怒鳴った。
その目線の先には黒ずくめの集団が武器を構えて立っていた。
「我々が今川の兵と知っての狼藉か!」
「押し通れ!!」
黒ずくめの集団は一言も発することなく襲いかかってきた。
「お待ちいたしておりました、若様」
「うむ、待たせた。……相変わらず大した腕前だな半蔵」
「もったいなきお言葉」
目の前に跪く男の名は服部半蔵。
みんな大好き忍者の頭領である。
岡崎時代にワシはこの男と密かに接触し、配下にしておったのだ。
「あちらに馬を用意しております。さあ」
「うむ、これからしばし世話になる。頼むぞ半蔵!」
「ははぁっ!」
戦闘の証拠を隠滅して、黒ずくめの集団は風のように去って行った。
もちろんワシを連れて。