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さらば尾張よ
ワシらは長いこと話し合った。
東日本統一を宣言した以上、桶狭間の合戦がなくなることは確定である。
すると信長はあの名声を得ることができなくなる。
結果、のちの信長の覇道に待ったがかかるやもしれぬ。
その補填として、ワシは未来知識を含むいくつかの情報をさり気なく会話の中に混ぜて伝えた。
月日は流れ、ワシが尾張を去る日がやってきた。
「四郎、達者で暮らせよ」
「三郎兄ぃもお達者で」
信長は元服して通称が三郎になった。
ワシは「ならば弟のワシは四郎じゃ」と言って、勝手にそう名乗るようにした。
次郎三郎って通称、ちょっとダサくね? という真の理由があるのは内緒じゃ。
本当は士郎か志郎あたりが格好良くて好きなのだが、まぁぼちぼちだな。
信長喜んでるし。
戦場での再会を誓って、ワシらは袂を分かつこととなった。