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放課後遊撃隊  作者: 夜狐
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冬の入り口

 あの日襲撃から2週間が経った。街中に逃げたHLも無事に掃討され、破壊された拠点も奪取、復旧が進められている。しかし、それでも大規模奪還作戦は先送りとなってしまった。部隊の再編成や、消費した弾薬の補充、その他に士気や怪我の回復にも関わっている。現在危険区域でのHLの目撃数は少ないが、宮堀も企業も前回の襲撃のことを考え慎重になっているのだった。

 また、あの襲撃を受けたのは宮堀だけでなかった。星道も大規模な攻撃を受けていたことが分かった。星道は戦車の高い火力を持っており、さらに襲撃の規模は宮堀と比べると小さかったそうだ。そのため宮堀の方へ支援部隊を送れたのだ。星道が襲撃されたことから今回の襲撃は組織的な物であるという説が出回り、作戦そのものの見直しも検討されているという。


 襲撃の後始末が終わると秋が過ぎ、季節は冬の入り口となった。冷たい風が吹く中、直斗は観察用のスポッティングスコープを構えた。普段の双眼鏡よりも高倍率の物だ。拡大された視界には廃墟となったショッピングモール、「ドリームモール」が写る。かつては賑わっていたのだろうが、その外観は物寂しげに朽ち始めている。その隣で、明里がバレットM82対物ライフルを構えている。M2重機関銃と同じ12.7㎜弾を使用する大型の銃だ。2脚を装備し、伏せ撃ちの体勢を取っている。柑奈と雪の2人は背後の警戒に当たる。直斗達はドリームモールと大通りを挟んで向かい合う、元は農地だったと思われる場所に潜んでいた。少し高台になった場所で、狙撃には良い位置取りだ。ドリームモールの駐車場がよく見える。

「明里、アイツじゃないか?」

「ようやく見つけたわ……」

直斗は駐車場の隅に標的を見つけた。身長3メートル程の2本の角を持つ人型HL。腕がかなり長いことが分かる。星道との合同作戦、そして前回の襲撃で遭遇するも、交戦を避けたHLだ。今も大型HL数匹に囲まれている。

「あの時は見逃したけど、今度こそ仕留めてやる……」

明里はM82の安全装置を外した。これは彼女の銃ではなく、この狙撃のために学校から借りた物だった。

「いつでもいいぞ」

直斗はそのHLを見たまま言った。彼らはここ最近、そのHLを探していた。大型を護衛のように引き連れるそれを群れのボスだと断定し、居そうな場所を時間の限り回った。そして以前からHLの巣窟とされ、近づかないようにしていたこのドリームモールへと辿り着いたのだ。

 明里はスコープの十字線を合わせる。調整済みで、この距離なら狙えば概ねその位置に当たる。彼女は息を止めると、引き金を絞った。

 轟音と共に放たれた弾頭はHLの顔を吹き飛ばした。明里は銃を構え直すと次弾を撃ち込む。3発を胴体に撃ち込み、様子を見る。HLは身体に大穴を開けて倒れている。周りにいた大型のHLが顔を上げて音から射撃位置を割り出そうとしていた。

「流石に、これなら死んだでしょ……」

明里は深く息を吐いた。この日に備えて、捜索だけでなくM82の射撃練習にも励んでいたのだ。100m程度ならそこそこの命中率だ。

「おい、あいつまだ生きてるぞ!!」

スポッティングスコープを覗く直斗が叫ぶ。明里も慌てて目をライフルスコープに戻した。

 撃たれたHLは起き上がった。そして、半壊した頭部に変化が起こる。しばらくは何も分からなかったが、ライフルで砕かれた頭部が元の形に戻ったのはしっかりと確認出来た。胴体の穴も、徐々に塞がっていく。

「再生してるのか……」

「だったらまた撃ち込むだけよ!」

明里は残弾を全て撃ち込んだ。慌てて連射したため、2発しか当たらなかった。そして、その傷も少しすると癒え始めた。

「どうなってるの……」

明里はマガジンを交換しようとした。しかし、直斗が遮る。

「建物から大勢来る。撤退だ」

スコープで拡大された視界には、廃墟から多数のHLが押し寄せる光景が見えた。

「今度こそ仕留めるわ!」

「これ以上は危険だ。すぐに撤退するって作戦だったよな。それに、アレだけ食らって生きてる奴には別の方法が必要だ」

直斗は明里を説得した。あのHLを今の装備で仕留めるのは無理だと感じた。そうしている間にもHLの大群が迫っている。

「……そうね。これを運ぶの手伝って」

彼に強く言われ、明里は息を吐き、首を縦に振った。直斗はスポッティングスコープを腰のポーチにしまうと、M82の銃床を持った。明里がキャリングハンドルを持つ。1人でも運べる重さだが、2人の方が効率的だった。

「どう?倒せた?」

「ダメだ。尋常じゃない回復力を持ってる」

「バレットでもダメなの!?」

ジープを見張っていた柑奈にそう言うと、直斗と明里はM82を車に乗せた。近くにいた雪が戻り、全員が車に乗ったのを確認すると直斗はエンジンをかけて発進した。群れに追い付かれる前に、学校まで撤退した。


 学校に戻るとM82を返却し、図書室で作戦を練り直すことにした。HLに関する本を何冊か集める。

「ダメね。それらしいことは見つからないわ」

明里は本を閉じた。様々なHLへの対処が記された本だが、あれ程の回復力を持つHLへの対処法は書いてなかった。

「対物ライフルがダメなら、M2で蜂の巣にしちゃえば?」

柑奈が提案した。

「それでもいいんだが、上手くいくかどうか……無力化出来ても、他のHLが大群で迫って来るからな……」

「アイツだけなら、まだやりようはあるけど群れも一緒となると厳しいわね……」

その後も何冊か本を読み会議を続けたが、結局は蘇生が間に合わない程のダメージを与える、そして周りにいるHLを殲滅する、この2つの難点を超える必要があった。あのHLが同じ場所にいるのかは分からないが、もしそうなら、4人だけではとても倒せそうにはなかった。そのため、その日は早い段階で解散となった。

 その帰り道、直斗は明里と途中まで一緒に歩いた。既に日は落ち、夜の闇が迫っている。

「あのHLに前会ったって言ってたけどその時のこと、話してくれるか?何か手がかりがあるかも知れない」

「……吹雪作戦の時のことね」

それを聞いてから直斗は少し後悔し、そして躊躇った。前にも少し聞いたが、吹雪作戦は彼女にとっていい記憶ではないはずだ。彼は失言したことを謝ろうとした。

「気にしないでいいわよ」

明里はそれを見抜いてか、そう言った。

「せっかくだから、最初から話すわね。別に隠すことでもないから。ただ、少し長くなるかも」

彼女は前置きをすると、約1年前の冬のことを話し始めた。

「あの朝は、そんなに寒くなかったのを覚えてる」

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