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悪役令嬢はパラ萌えされる  作者: ハルノ_haruno
1年生
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モテる女はつらいよ

「ランカ先輩、お疲れさまです」

「リシリアか、どうしたこんなところまで」


 雪上訓練を終えたランカ先輩に声を掛ける。

 雪の積もった屋外訓練場は、泥まじりの足跡だらけだった。


「お返事をしにまいりました」

「聞こう」


 ランカ先輩は白い歯を見せて笑うと、脱いだ甲冑を雪の上に置いた。


「ここで良いですか?」

「改まった場は苦手だ。そもそも求婚も勢いだったからな」

「ではここで。私、『王妃教育』を受けることに決めました」

「そうか」

「なのでランカ先輩とは結婚出来ません」

「わかった」


 ランカ先輩は肘で汗を拭いながら言った。


「驚かないのですね」

「いくら浮いた話のない俺でも、リシリアに気がないことくらいわかる」

「ではなぜ求婚を?」

「好きだからだ。言わずに諦めてどうする」


 ストレートですね。


「ありがとうございました」

「厳しい道だ、頑張れよ」

「望むところです」

「さすがは俺の惚れた女だ」


 何でしょう、この爽やかさは。

 気まずいはずなのに、つられて笑ってしまうではないですか。


「ランカ先輩も、立派な士官になってくださいね」

「あぁ、いずれリシリアの身を守れる男になろう。臣下としてな」

「嬉しいです」

「王妃になって身体がなまるようならトレーニングをつけてやる」

「ふふっ、それは厳しそうですね」

「筋肉増強の目的なら高負荷一択。キツイぞ」


 何の話をしているのですか、この脳筋は。


「鈍らないように気を付けておきます」

「そうだな。先に殿下を鍛えるべきか」

「それはそちらで相談なさってください」


 ごつごつした手で私の頭を撫でるランカ先輩。

 兄がいたらこんな感じだったんだろうか。


 頼もしくて、面白くて、冗談も言える仲。

 筋トレ云々は冗談じゃないかもしれませんが。


「では失礼します」

「あぁ、また王城で会おう」

「気が早いです」

「なに、あっという間だ」


 冬を温めようとする太陽のように、優しくおおらかに笑うランカ先輩。

 礼をするのも何だか他人行儀な気がして、私は小さく手を振った。








「ギュリオ! 少しいいですか?」

「? どうしたの?」


 春休み直前、私は廊下を歩くギュリオを呼び止めた。


「話すのも久しぶりですね」

「うん。学園祭以来だね」

「えぇ、あの夜会以来です」

「!?」


 ギュリオはあからさまに動揺した。


「私『王妃教育』を受けることになりました」

「あのっ。ご、ごめん。あの時は酔ってて。あんなこと言うつもり――」

「私、頑張りますね」


 ギュリオははっと顔を上げた。


「リシリアさん……」

「頑張れと、言ってくれますか?」


 ギュリオは少し考えたあと、真っ直ぐ私を見て言った。


「言葉で表現するのは苦手なんだ。曲を書くよ。リシリアさんを勇気付けられるような」

「はい」

「それが俺の、宮廷音楽家の仕事だから」

「楽しみにしています」

「リシリア妃に満足してもらえるよう、頑張る」

「もう、気が早いですね」


 思わず噴き出してしまう。


 ほんとにみんな、気が早い。

 私も認めてもらえるように頑張らないと。


「それは私にも聞かせてもらえるのか?」

「で、殿下!」

「アルバート。いらしたのですか」

「たまたま通りがかった」


 まぁここ、廊下ですからね。


「殿下、結婚式にはお二人を祝福する傑作をお聞かせしましょう」

「作る前から『傑作』とは、さすがはうちの大先生だな」

「おめでとうございます。殿下、リシリア様」


 だから気が早いですって。


「あぁ、ありがとう」


 アルバートも何返事してるんですか。


「では俺はこれで」


 ギュリオはヴァイオリンを手に、廊下の角に消えた。







「人望が厚いのは何よりだが、モテすぎるのも困りものだな」

「私はアルバートだけです。好きですよ」

「何だこんなところで。廊下では抱きしめることも出来ん」


 アルバートは困った顔で言った。


「あぁー! なにいちゃついてるんですかー! 私も混ぜてくださいよー!」

「アンジュ!」


 アンジュはテテテと駆けてくると、私の腕にぎゅっと抱きついた。

 そして上目遣いでアルバートを見て言った。


「殿下、羨ましいでしょう」

「全くだ」

「アンジュ、わきまえなさい」


「ねぇリシリア様。今度は私の部屋でお泊り会しませんか?」

「お泊り会だと?」


 アルバートの口元がひくつく。

 アンジュはにぃっと笑って続ける。


「また一緒にお風呂に入りましょうね! ベッドで一緒に寝ましょうねっ」

「風呂!? ベッド!?」


 アンジュ。

 アルバートをあまり煽らないでください。

 反動を被るのは私なのですよ。


「リシリア様のお肌って、絹みたいにすべすべで、赤ちゃんみたいに柔らかいんですよねぇ」

「ほぅ?」


 あぁ、悪い顔になっていますよ。二人とも。


「じゃあ私、部活があるので失礼します!」


 アンジュはぱっと離れると、にっこり笑って行ってしまった。


「私も! し、失礼します!」

「待て、リシリア」

「は、はい」

「私が知らないのはどうも癪だな?」

「な、と言われましても」

「どうしてくれようか」


 そのダークサイドに落ちたみたいな顔、やめてもらえますかね。



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