悩みのタネ
さて、問題です。
アルバート王子から借りたマント、どうすればいいでしょう。
「そのまま返す? 洗濯してから返す? うーん」
私は私室のベッドの上で悶ていた。
寮とはいえ、公爵令嬢ともなると当然個室。
風呂トイレ完備はもちろん、趣味の良い派手すぎない調度品、3人は余裕で寝られそうな広いベッド。ふかふかの絨毯の上に、大理石の机。
大理石の上で宿題する日が来るのでしょうか。前世では考えられませんね。
そんなことより目下の課題は「マント返却」です。
降り始めでほとんど濡れていないとはいえ、そのまま返すのは失礼ですよね。
ならば洗濯室に持って行き、洗濯を頼まねばならないのですが。
1、マントは一旦私の部屋に返却してもらい、アルバート王子には自分で返す
2、洗濯係から、直接アルバート王子の部屋に返却してもらう
あぁ、借りたくて借りたわけじゃないのに。
むしろこれを押し付けられたせいで級友には誤解されるし、迷惑しか被ってないのに。
なぜここまで気を揉まねばならぬのですか!
私は答えが決まらないまま、とりあえずマントを抱えて地下のランドリーに向かう。
ドン。
「ひゃっ」
「あぁ、失礼しました。お怪我は?」
「いえ、こちらこそ考え事をしていてーー」
あれ?
この眼鏡、見覚えが。
「リシリア? リシリアじゃないか?」
「もしかしてノア?」
「あぁ! 久しぶりだね!」
おぉ!
リシリア(悪役令嬢)の幼馴染設定の真面目眼鏡君ではないですか!
初回プレイ時、アルバート王子狙いにも関わらず、パラメータが足りなかったのか告白されず、代わりに告白してきたノアではないですか!
エモい。すっごいエモい。
「リシリア。少し話さない?」
「えぇ、是非」
うーん、感慨深い。
前世の私にとっては初彼のようなものですからね。
「ん? 何?」
小型犬みたいな顔が少し傾げられてとっても可愛らしい。
それにしてもこんなに背が高かったのか。可愛い系の顔だから小柄なのかと思ってたけど、実はかなりの長身。ゲーム画面ではよくわからないものですね。
「背が高いなぁと思って」
「ははは、子どもの頃は僕の方が小さかったもんね」
はにかむ姿は天使のようです。
「リシリア、サロンも近いしそこで座らない?」
「そうですね」
うん、悩みのタネのマントには一旦目をつむって、エモい初彼とのトークでも楽しみましょう!
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