誓いのキス
「リシリアが王妃教育を受けるとなると、公に知られることになるがよいか?」
「覚悟は出来ております」
「そうか。それは結構」
アルバートは満足そうに笑った。
私とアルバートの関係が公になる。
それは追放フラグを立てることになるかもしれない。
本来のゲームのストーリー。
アルバートの婚約者リシリアが、弾劾され国外追放される。
この条件である「婚約者」をこれまで回避していたものの、この先は関係が公になる。
「アルバート。婚約は『保留』だと父に聞いておりますが、どうなりますか」
「そうだな。それなのだが、今少し面倒事があってな」
アルバートは歯切れ悪そうに言った。
「面倒事、ですか」
何だろう。
聞かない方がいいのだろうか。
「あぁ。直にわかることだが、すぐに婚約出来る状況ではなくなった」
「そう、ですか」
「すまない」
「いいえ。先にお断りしたのはこちらです。やっぱり婚約しますなどと調子の良いことは言えません」
自分で蒔いた種だ。仕方ない。
「リシリア。私からも話がある」
「はい」
「この先、どんなことがあってもお前を愛すると誓う。私にはリシリアだけだ」
瞳の奥の強い光が私を刺す。
「約束してくれ。何があっても私の愛と、今日の誓いを信じると」
「信じます」
「必ずリシリアを迎える」
「はい」
「必ずだ」
アルバートは私の頬に触れると愛おしそうな目をした。
「リシリア、誓いの口付けを」
私はそっと目を閉じる。
温室の、滾々と注ぐ水音だけが聞こえる。
ゆっくりとアルバートの気配が近づいたかと思うと、柔らかな感触が唇に触れた。
アルバートの想いがこぼれそうなくらいたくさん伝わってくる。
愛おしい。
私はこの人が好きだ。
いつも大きな愛で包んでくれる。
私の知らぬところで気遣ってくれる。
何でも出来るのに努力家で、それを見せないし偉そうにしない。
王子であるアルバートが自分の立場なんて関係なしに、ただ愛を注いでくれる。
私も返したい。
キスしたまま、アルバートの首に腕を回す。
いつも素直になれないけれど、私の気持ちが伝わりますように。
どのくらいそうしていたのかわからないが、私たちはゆっくり顔を離した。
「リシリア、手を」
アルバートに言われ、私は手を差し出す。
「何ですか?」
「動くなよ?」
アルバートはにやりと笑った。
胸ポケットから細長い紙を取り出すと、私の左手の薬指に巻いてきゅっと結ぶ。
そしてするすると引き抜くと、輪になった紙を再び胸ポケットに戻した。
「あ、あのっ」
アルバートのしたことの意味が何となくわかり、途端に恥ずかしくなる。
「きれいな手だな」
「あ、ありがとうございます」
「この指にどんな宝石を飾ろうか、悩み甲斐がある」
ええっと。
何と言えばよいのでしょう。
「あの、アルバートは何か欲しいものはありますか?」
「私の欲しいもの?」
「はい。いつもしてもらってばかりなので」
「そんなもの、ひとつしかないだろう」
アルバートはベンチのひじ掛けに頬杖をついて私を見つめた。
「っ! もので! 物でお願いします!」
「いや、やめておこう。今日は今までで一番嬉しい言葉を聞かせてもらった。それで十分だ」
「よ、欲がありませんね」
「欲? 欲ならあるが」
アルバートが私の髪に手を伸ばす。
「っ!」
「可愛いな」
そう言ってアルバートは身を乗り出すと、またキスをした。
活動報告にて好きなキャラのお伺いをしております!
お読みいただけますと幸いです。
いつもありがとうございます★




